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HERHALEN  作者: 鬼子
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4 『散策』

 扉の前にバリケードとして設置した椅子をずらし、扉を開ける。


「どこにいくの?」


「屋敷に行く」


 質問をしたエマが俺の言葉に眉を歪める。


「また戻るの?」


「嫌か? あそこがアイツらの巣だろうし、情報も何かあるかもしれない、なぜかあそこだけ電気が通ってたから戦ったり逃げたりするのもあそこがいい気がしたんだが」


 そう、あの屋敷だけ何故か明かりがついていた。

 まるで誘い込むように。


「あなたも案外考えてるのね、いいわ」


 エマが納得したように頷いて俺の提案に賛成した。


「じゃあ、決まりだな。屋敷に行くぞ」


 教会から遠くはないが、霧が濃いせいで迷いやすい。

 気をつけて進まなくては。


 屋敷の前に立ち。

 屋敷を見上げる。


「相変わらず広いな」


 独り言のように呟いた言葉に、エマが視線をこちらに向ける。


「じゃあ、行きましょう」


 エマが先に屋敷に入ろうとする。

 

「エマ」


 俺はエマを呼び止め、ハンドガンを差し出す。


「何これ」


「何かあった時にあると助かるかもしれない。 正直、奴らに銃火器が効くかはわからない。 でも、時間稼ぎくらいにはなるはずだ」


 そう言うとエマは数秒間ハンドガンを見つめ、渋々受け取る


「使い方はわかるか?」


「えぇ、大丈夫」


 エマはそういってハンドガンをズボンと腰の間に挿入する。


「じゃあ、入るか」


 玄関の床に開いた穴を飛び越えるように中に入る。


「で、どこから探すの?」


 屋敷は一階と二階、外見からだと三階、四階もあるらしいが、視界には二階に上がるための階段しか見えない。


「取り敢えず、一階から探そう」


 通路を歩く。

 屋敷は屋敷らしく、壁には装飾が豪華に飾られている。

 以前は脱出することにばかり気を取られていてそれどころではなかった。


 手当たり次第に扉を開け、何か手がかりになりそうなものを探していく。


「ヘンリック」


 片端から扉を開けていると後ろから呼ばれる。


「どうした?」


 エマに呼ばれ近づくと、エマが引き当てた部屋は資料室のような場所だった。


「なんか情報があるかも」


 エマが入る。

 それに続き俺も部屋に入る。


「何を探すの?」


「なんでもいい、この街についての情報と、まぁ他にも何かあればラッキーだな」


 そう言いながらガザガサと棚を漁る。


 本の中にファイルが挟まっている。

 数ある本の中にファイルがあるのはこれだけらしい。


「なんだこれ」


 ファイルを開くと人の写真が大量に挟まれていた。


「行方不明者リスト?」


 写真が大量に挟まれた紙の上部にはそう書いてあった。


「行方不明者が相次ぎ、街は呪われたと誰かが言った。犯人はカマキリのような化け物か?」


 エマが新聞を一部持ってこちらにくる。


 新聞にはあの化け物のイラストが描かれている。

 人間のような顔と腕に、カマキリのような身体をした化け物だ。


「行方不明者は全員死んでるのか?」


「いや、それがね・・・」


 エマが別の雑誌を乱暴に投げる。

 それを受け取り、開いてみると不思議な事が書かれていた。


「行方不明者リストに載ってる人間には共通点があるみたい」


 エマの言葉通り、行方不明者は共通点があった。


「家族を殺された遺族・・・行方不明者は遺族か?」


「そうらしいわね」


 家族を殺された遺族・・・


 俺たちと同じだ。

 行方不明者は復讐を決めて狩りに出たやつか?


「理由はわからないけど、帰ってこないみたい。 はやくこの街を出ましょ」


 エマがそういながら資料をペラペラとめくる。

 瞬間、廊下からバタバタと走る音がした。


 瞬間的に身を屈め、エマにも静かにするようにジェスチャーをする。


 扉に近づき、通路が見える程度まで少し扉を開ける。

 すると、奥の方に右上半身が血塗れの化け物が見えた


「何があったんだ?」


 それから数分。音は聞こえないので扉を開け、廊下に出る。


 廊下をみると特に変化はない。

 あれだけ血を浴びてれば一滴くらい垂れてそうなものだが。


「これからどうする?」


 目的が無くなってしまった。いや、無くなってはいないか、元々復讐が目的だ。


 次は何をするかを考えながら長い廊下を進み、突き当たりを曲がろうとした時、エマが反応した。


「ヘンリック・・・あれ・・・」


 化け物がいた。

 だがおかしい。さっきいたのと同じタイプだ。

 右半身が血で濡れていない。別の個体か?3体目がいるのか?


 その時、化け物の腕が変形し、ショットガンのように散弾を撃ち出した。


 俺はエマを抱きしめながら床に倒れ込む。


「武器を持っていたのか!」


 そういえば、ジェイクを殺したのはナイフだったろうか。


 エマが即座に立ち上がり、ハンドガンを数発撃ち込むと化け物が逃げるように走り出す。


「追いかけるわよ!」


「まて!」


 エマが化け物を追い、先に走り出した。

 長い通路、化け物の姿は見えない。


 前にエマがいるが、かなり遠い。出遅れたせいだろう。


 瞬間、角から化け物が姿を現し、エマに体当たりをする。

 エマの身体が少し飛び、壁に身体を打ち付けた瞬間、壁がパカっと開きエマが吸い込まれていく。


「エマ!」


 エマの姿が消え、化け物は逃げるように走り出す。


「クソっ!」


 エマは後で探せばいい。

 今は化け物だ!

 そう思い化け物を追いかけるが、角を曲がったところで、本棚のような家具を倒し道をふざかれる。


 もたもたしてるうちに化け物は遠ざかってしまう。


「はぁ、はぁ・・・」


 家具を持ち上げ、元の位置に戻す。

 どうやら家具を止めている留金が外れているようだ。


 家具の先にはさらに長い通路があり、その先は見えない。ここから先はエマと合流してからがいいな・・


 当分の目標はエマを探す事だな。


 ショットガンを構え、屋敷の中を歩く。

 どこも似たような形状で現在地がわからない。


 先程の本棚の所は覚えておこう。

 幸い、あの変な仕掛けの位置は覚えている。

 あそこからなら一直線で行ける。


 それから数分、屋敷の中を彷徨うが地下に続きそうな階段は見つからない。

 でも、一つだけ心当たりがあるとしたら、エマと会う前に落ちた地下への穴だ。


 玄関に戻り、次は慎重に穴に潜る。

 あの時は勢いがあったから落ちたが、案外楽に通れる物だ。


 中に入ると相変わらず暗い。


「エマ!」


 呼んでみるが返事がない。


 別の通路や地下があるのだろうか。

 まだ探さなきゃいけないらしい。


 取り敢えず、資料室に屋敷の見取り図があるかもしれない。一度もどって確認する事にしよう。

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