夢見る家族の思い出
もう恋愛でもないんですが(´;ω;`)
この世界には、いつの日からか太陽が失われてしまった。
闇が支配し、月がその存在を主張する。
けれども、夜空に輝く月を照らし出しているのは何?
太陽が消えてしまったと言うのに、どうして月は輝き続けるの?
朧月夜の薄明りの下、私はランタンを手に帰り道を歩いて行く。
太陽が失われてしまったこの世界は、科学技術が発達し、疑似太陽が作られ、大きな都市にはそれがあるが、その都市から離れれば離れる程、その明りは頼りないものになっていくから、ランタンは必需品だ。
私は、太陽のある都市に行った事はないけれども、眩い光に包まれた、夢のような所だと聞く。
昼も夜も明りに包まれ、否、夜の無い場所なのだと言う。
夜ばかりの私の住む場所とは大違い。
いつか行ってみたいと思うけれど、少しだけ怖い。
それでも家に帰れば、妹が温かいパンとスープ、おかずを用意して待っていてくれるのだから、不満を感じるのはお門違いだろう。
父も母も、太陽のある都市に行って連絡が取れなくなってしまった。
残された私と妹は二人で身を寄せ合って生きていくしかなくなってしまった。
妹は足が悪く、外に働きに出ることが出来ない為、生きていくためには私が働かなくてはいけない。
そのことに不満はない。
妹の事は愛しているし、大切な存在だと思っている。
それでも、いつか太陽のある都市に、両親を探しに行きたいと夢見てしまうのは何故だろう。
妹を置いて行けるわけがないのに、また家族四人で暮らせたらいいのにと夢見てならない。
両親は、どうして私達に連絡をよこしてくれなくなってしまったのだろうか?
そんなに眩い都市での暮らしは楽しいのだろうか?
家族である私や妹を忘れてしまうほどに?
それなら、私もいつの日か妹を連れて、あの眩い疑似太陽のある都市に行ってみたいと思う。
けれど、妹の足は都市に行くことに耐えることはできないので、これは叶わない夢。
妹の事は私が守る。
あの子を守る人は他にはいないから。
「それでも、失われた日々の夢を見続けてしまう」