歩み寄る
建国祭最終日。
気持ちの良い天気で、ネリネは城の渡り廊下でまったりと日向ぼっこしている。
一方、王子は目の下にクマをこさえて苛立ちを前面にだしていた。
「ネリネ……お前がはやく来てくれなかったからミーシャはあいつにさらわれ、オレも酷い目にあったのだぞっ」
「それに関しては申し訳ありませんでした。いやぁ、あんなに魔力を出されるとワタシもすぐには身動きはとれなくて。あ、今日の夜は花火ですよ~楽しみだなぁ」
謝罪しているのにネリネの顔は笑っていて、その態度が理解不能で王子はネリネが苦手だと思った。
(まったく! このネリネとやらは真剣みが足らないし、ミーシャはいないし、オレとくっつけると言っていたセナは、あの目の奥が恐ろしいメイドをつけられて、根性を叩き直すと絞られているみたいだし……先ほど見かけた時は、げっそりしていたな、一日であれか……?)
イライラとしながらも自分にできることがなく、その場をうろうろとする。
すると、遠くにミーシャとアロクロがごく普通に歩いているのをネリネが見つけた。
「やっほーミーシャ君! アロクロ君とお出かけかーい? 記憶は戻ったー?」
「ネリネさーん、と殿下……まだです! ナロクロさんとタクトさんに会ってきます!」
「そうか、気を付けていってらっしゃーい」
ミーシャが大きく手を振って、ネリネも手を振り返して見送った。
あまりにも自然とやりとりをしていたのに、王子が地団駄を踏みながらネリネに文句をつける。
「おいっ、何をフツーに見送っているのだ!? あんな危険な奴を野放しにするのか!?」
「今は落ち着いているようですから、大丈夫でしょう」
「んな、呑気な……」
「さて、ワタシは仕事に戻りますね~♪」
ネリネは、日向ぼっこに区切りをつけて、下手くそ鼻歌を歌いながら警備に戻っていった。
置いてけぼりにされた王子はぶすっとしてネリネを睨むが、アロクロが怖すぎるので今はミーシャを追いかける気持ちにはなれなかった。
(くそう……目を離したすきにイイ感じになりおって! というか、ネリネは音痴だな! なんなのだあいつもっ!)
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「それで、ナロクロというのがオレの妹でタクトが義理の弟か」
「そう、もしかしたら関係ある人に会ったら記憶が戻るキッカケになるかもしれないでしょ。考えられること全部してみよう!」
ミーシャは、アロクロに抱きしめられながら散々泣いた後、あのまま泣き疲れて眠ってしまった。
起きた後は不思議と気持ちがすっきりとして、恋に落ちるとかキスとかは一旦置いておいて、できることを考えてみた。
アロクロが協力してくれるかと不安はあったが、ミーシャを泣かせたことに罪悪感があったのか、大人しくミーシャの話を聞いてくれた。
ミーシャは、アロクロ周辺の人間関係と今まで何があったのか、そして自分との関係も話してみた。
自分と恋人関係であると伝えた時、アロクロは驚くのと何故だが間の抜けた顔をしていたが、記憶は戻ることはなかった。
「あ……町に出る時は角としっぽを隠してね……魔族をまだみんな怖がってしまうから」
ミーシャは、申し訳なさそうに城を出る前に一言添えると、アロクロは何も言わずに魔族の特徴である角としっぽを隠した。
「……いつか、魔族も怖がられないようになったらいいな」
目を伏せてぽつんと呟いたが、息を大きく吸い込んで気持ちを立て直す。
そして、ポケットからリボンを取り出して、その一方の端をアロクロに差し出した。
「はい、これもって」
「なんだこれは?」
「今は建国祭で町もお祭りで人が多いの。はぐれちゃったら大変だからリボンの先っぽ持ってて」
「オレを犬か何かと思っているのか?」
「違うよ! だって、触らないって言った手前、これくらいしか方法が浮かばなくて」
アロクロが呆れたようにため息をついて、リボンを掴まずに手を差し出した。
「お前とオレが恋仲なのなら、別に手を繋げばいいだろう」
ミーシャは、アロクロに差し出された手と顔を交互に見る。
「い、いいよ……自分で言ったことだし。恋仲って言っても、アロクロからすれば知らない人だから……気を使わなくともいいよ」
「はぁ、変なところで意固地な奴だな」
いろいろと言い訳を並べてみたが、アロクロは手を引っ込めめない。
ミーシャは、悩みつつ手を繋ごうとしてやっぱり臆病になって引っ込めようとしたが、その前にアロクロに手を掴まれた。
指をしっかりと絡まされて、もう解くことは叶わない。
「オレの恋人と言ったのに、壁を作ろうとするな」
「…………うん」
ミーシャが小さく答えて頷くと、アロクロは満足げに笑った。
久々のアロクロの笑顔をまともにまっすぐと見てしまって、ミーシャはどきりと心臓が跳ねた。
顔が熱くなっているのに気づいて即座に顔を背ける。
「ほら、行くぞ」
「……うん」
まだ小さい返事しかできなくて、アロクロに引っ張られながら町へと向かった。




