結託
(どっと疲れた……)
王子は案内された部屋で、ソファにぐったりと座った。
(まったくなんなのだ!? エリザベスも皇帝もなぜオレをあんな冷たい目で睨むのだっ)
「喉が渇いた……おい、そこのお前。茶を用意しろ」
「かしこまりました」
メイドにお茶の用意をするように命令して、しばらくすると、廊下からものが割れる大きな音がした。
驚いて廊下に出てみると、先ほどとは別のメイドが盛大にすっころんで、茶器をダメにしてしまっていた。
「ご、ごめんなさーいっ!」
「もうっ、セナってばまた!? ふぅ、あなたは一生懸命なのはわかるけれど、ミスが多いわよ!」
「ご、ごめんなさい……」
「あの者は?………おい、そこの」
王子がメイドたちに近寄ると、先輩メイドは申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ございません! すぐに、新しいものを準備いたします! ほら、あなたも謝るのっ」
「ごめんな……あれ? 王子!?」
セナは、謝るどころか王子を指して大声でびっくりしていたので、さすがに先輩メイドに頭をぽかりと殴られた。
「んもぅ、痛いです!」
「やはり、あの時の騒がしい娘か……たしか、ロギア教国に連れていかれたはずだが……」
「そうなんですっ、ロギア教国に連れていかれたけど聖女じゃないって、ぽいされてっ! いろいろあって、アロクロ様を追いかけてこのお城までたどり着いたんですぅ!」
「アロクロ……っ!」
王子の眉間に皺がよったが、あることに気付いてすぐに明るい表情になった。
「そこのメイド、お前が茶の準備をしてこい。オレはこの者と話がある……」
「か、かしこまりました」
先輩メイドは何の話をしているかわからず、セナの態度にハラハラとしていたが王子が怒っている様子ではないので、廊下の片づけは他の使用人に任せ、言われた通りお茶の準備をしに行った。
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王子とセナが向かい合って座る。
王子が優雅に紅茶を飲む姿をセナがぽーっと見惚れていた。
「うあわ……やっぱり王子もかっこいい……」
「ふん、当たり前だろう。オレはいつ何時もかっこいいのだ」
「うわぁ、めんどくさそうな性格もまんまだぁ」
セナがぽーっとしながら自然と言いのけて、王子の眉が苛立ちでぴくりとあがった。
しかし、そんなことよりも確認しなければいけない重要事項がある。
「して、アロクロとミーシャがこの城にいるというのは本当か?」
「は、はい! メイドとしてしばらく住み込みで働いたんですけど、ここにいるって聞いたんです! 部屋だってわかってますから! こことは離れた客たちが泊まるところにいます!」
「ふむ、実に有益な情報だ……それが聞ければよし。もう、仕事に戻っていいぞ」
「えっ!? 早くない!?」
「オレは忙しい、これから愛するミーシャに会いに行かねばならんのだからな」
「あいする?……まさか、王子までミーシャのことが好きなんですか?」
「そうだが?」
王子がすらりと言いのけると、セナはぎゅっと口を結んで、肩がぷるぷると震えだして今にも泣きそうになる。
セナが突然、泣きそうになっているのに王子はぎょっとした。
「ど、どうしたのだ? はっ! まさか、オレのことをそんなにも好いていたのか? しかし、お前の気持ちには応えられんぞ。はぁ、モテる男は辛いな……」
「あたしはっ! たしかに王子も好きだけどっ、アロクロ様推しなのっ!……でも、ミーシャってば王子のことも盗るなんてぇ……ズルい! やっぱりズルい!」
「は? おし?」
「王子!!」
セナがバンっ!と机を叩いて立ち上がると、王子は勢いに気圧されて肩がびくついた。
「あたしが王子とミーシャの仲を手伝うからっ、王子もあたしとアロクロ様の仲をとりもってください!」
「同盟を組みましょう!!」
「お、おぅぅ……」
訳のわからない申し出だったが、王子は、闘志を燃やしているセナに否定の言葉をいれる隙を見つけられなかった。
(あのイベントを利用して、必ずアロクロ様を振り向かせてみせるんだからっ! 見てなさいっ、ミーシャ!!)
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「……はぁ、暇だなぁ。部屋から出られないし、みんな忙しいし、鍛えるか、本読むことぐらいしかない……」
建国祭が今夜に迫り、エリザベスの情報から王子も到着したと聞き、ミーシャはお泊りしているエリザベスの部屋に缶詰状態になっていた。
今日は一日、本を読んで鍛えて、窓の外をぼーっと眺めてを繰り返して過ごしていた。
(待つことしかできないのかな………違うか、あたしにできることが少ないんだ)
寂しさに限界がきているのか、この頃ミーシャの考えは暗くなる一方だった。
(アロクロが帰ってきて、一緒にアロクロたちの故郷に行って……)
(………でもそこであたしって、アロクロのために何ができるんだろう?)
(アロクロは魔族の族長なんだよね……リズみたいに国務をしてルクスさんを支えるみたいなこと、あたしにはできないし……族長としてのアロクロを支えることできるのかな?)
「あたしにできること……あるのかな……」
しょんぼりとする心に焦りまで生まれて、心臓が不安の音をならす。
少しでも何かの役に立てばと、本棚にある勉強に役立ちそうなエリザベスの本を読み漁ることに決めた。




