一方通行
少し短いけど
やっと空いた時間ができたので、エリザベス、ミーシャ、そして、ルーニャの三人で馬車に乗り町へとでかけた。
仕立て屋に到着し、かわいいドレスやアクセサリーを見て、みんなであれがいい、これがいいと言い合う時間は、楽しくてたまらない。
「ミィ、このドレスはどう?」
「えっ、リズのドレスを見に来たんでしょ?」
「たしかにわたしが建国祭で着るのもあるけれど、ミィのも選ぶの。せっかくの機会なのだから、数着は持たないと」
「着る機会あるかなぁ……」
「ドレスじゃなくとも、普段の服とか特別な……あっ!!」
「どっどうしたの!?」
エリザベスが滅多に出さない大きい声で叫び、表情がどんどん深刻になっていく。
いったい何があるのかと、ミーシャもルーニャも眉間に皺を寄せてエリザベスをじっと見る。
「大切なことを失念していたわ……大変よルーニャ……ミーシャとアロクロ様の結婚式をしなくては」
「!! それは、重大です!」
「えっ、ちょっと……?」
エリザベスとルーニャのやる気が炎のようにめらめらと燃えている。
ミーシャの結婚式というのが二人のスイッチを押してしまったようだ。
「お城に戻ったら、すぐにアロクロ様に確認しないと、きっと魔族式のものがあるはず」
「そうですねっ、だけれど、どんな結婚式でも花嫁さんはきれいに!は共通ですね!」
「そうよ! かわいいミィをさらにかわいくっ! さらにきれいにしないとよね!」
「ちょっ、ちょっと待って二人とも!」
ミーシャが二人の勘違いに気が付き、これは速く訂正しなければ、と大きい声がでてしまった。
きょとんとして、二人がミーシャを見る。
「あ、あのねリズ、ルーニャ。あたしとアロクロはあくまで恋人関係なの……プロポーズだってされてないし、してないし……結婚の話はまだしてないよ」
エリザベスとルーニャは瞳を大きく見開く。
驚くのも無理はない。
貴族社会であれば、大っぴらに恋人になると言えば結婚とほとんど直結で、すぐに婚姻することが多い。
てっきり、結婚の申し出はされている、と思っていたのだろう。
(そうだよ……アロクロから結婚とか、聞いたことないし……あたしも言ってないし)
(アロクロとあたしの将来………あたしはアロクロとずっと一緒にいたい……アロクロも、そうだよね?)
ミーシャが急に黙りこくって考え込み始めたので、どうしたものかとエリザベスとルーニャが顔を見合わせた。
空気が妙にしんとしてしまったのに気が付いて、ミーシャが顔をあげてぎこちない笑顔で笑った。
「あはは……だからさ、まだその話はいいよってだけ。あ、ちょっと暑いから外で風にあたってくるよ」
「え、えぇ、わかったわ」
ミーシャは、一人で外に出た。
エリザベスは、少し縮こまったミーシャの背中を心配そうに見送った。
少し気晴らしに店から遠くならない程度にぷらぷらと散歩する。
(はぁーあ……別に変なことじゃないのに、なんか変な空気になっちゃった……)
(あたし……不安なのかな? あっ、あれだ……あたしばっかりが好きで、むこうの気持ちはどうなのってやつだ!)
「いやなにそれ……考えたらはずかしぃ……」
ミーシャは、恥ずかしさで顔をしかめて、ため息をつく。
「帰ったらアロクロとちゃんと話そう……でも、最近忙しそうに出かけているから、つかまるかな?」
「あ……あろくろさまぁ」
「うあああ!?」
ミーシャは突然、後ろから肩を掴まれて、叫び声をあげた。
振り返って手を振り払うと、そこにはかつてロギア教国に連れていかれたはずの主人公がいた。
彼女は、聖女かどうかを判断するために連れていかれたのだが、聖女たちを助けた時には見当たらなかった。
彼女は、いい感じの太い枝を杖にして身体を支えなければいけないほどげっそりとして、可愛らしい顔が台無しだ。
「あ、あなたっ、どうしてここに」
「やっと知ってる人が……う」
「ちょっと! 大丈夫!?」
身体がぐらりと揺れ、主人公は気絶してしまい、せっかくのお出かけだったが急いでエリザベスとルーニャを呼んで、手当てのために城に連れて帰った。




