代償
しばらく説明回です( ;∀;)
「皇妃様は聖女様だというのは本当なのですか!?」
「あぁ、どうか我々にその神聖なお姿をお見せくださしませ!」
「聖女様、私は目が悪いのです。そんな哀れな私めにどうかお力をっ……」
城の門前には大勢のロギア教徒たちが押しかけていた。
それを兵士たちが宥め、返すというのを何度も繰り返している。
「皇妃様は聖女ではありません。お引き取りください」
「病気のある方は病院へ、馬車でお送りします」
ルクスは、エリザベスが聖女であるということを徹底的に否定することにし、押しかける怪我や病気をしている信者には病院を進める方針をとることにした。
城の門扉は騒がしいが、執務室で仕事をこなすルクスにはその騒がしさは聞こえない。
しかし、頭の中では考えなければならないことでいっぱいになっていた。
(あの状態をエリザベスが見てしまっては、なんとかしようと無理をするだろう……人々の要求はキリがない。彼女一人が背負うには重すぎる)
(ほとぼりが冷めれば、信者は何とかなる。それよりも他の問題だ。彼女の情報が流れた意図、魔族の襲撃、俺を亡き者にしようとした者がいること……)
(わずかな期間に起こったこの全てが無関係だと考えていいものなのか? 俺を狙って放たれた攻撃……ただ単純に俺の命を狙ったのか? ならなぜ確実な頭を狙うとか、二撃目をいれることしなかった?)
(それに、あの魔族。あの暴れ方は異常だ。突然、我に返ったように落ち着いて、エリザベスとなにか話をして立ち去った……俺の命が目的でも、彼女の命が目的でもない? 無差別な破壊で会場を混乱に陥れるの目的だったのか?)
「何かが……引っかかる」
ルクスが執務室で思考の渦にのまれていると、ジーニャが部屋に入ってきた。
「失礼します、陛下。ロギア教国の使者が謁見を求めていますが、どういたしましょう」
(ロギア教国……各地で現れた聖女を率先して保護してきた……話すことは一つか)
「……会おう」
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「して、ロギア教国の使者らが何ようか?」
ルクスは、玉座の間に使者たちを招き入れた。
白いローブを着た神官でもある使者たちは、にこやかに話し出す。
「恐れ入りますがその前に、皇妃様はどうなされたのでしょうか?」
「先の式で魔族に襲撃されたことに心を痛めていてな、まだ臥せっている。彼女は繊細なのだ。人前にでられる状態ではない」
「それはそれはお可哀そうに……てっきり、聖女様のお力を無理にお使いになって臥せっていらっしゃるのかと」
「なんだと……」
ルクスがぎらりと金色の瞳で使者たちを睨むと、少し彼らの身体が強張った。
しかし、彼らも引くつもりはないようだ。
「率直にお尋ねします。皇妃エリザベス様は聖女様であらせられるのではないでしょうか?」
「いいや。仮に彼女が聖女だとして、そなたたちにいったい何の関係がある?」
ルクスは、きっぱりと否定をし、お前たちには関係がないと言い放つ。
聖女を崇めているロギア教国の使者たちにとって、関係がないように言われるのは神経が逆なでされる。
「我々は各地に現れる聖女様がたを悪しきものに利用されぬよう、いち早く保護してまいりました。それはもう大切に、聖女様たちが安心してお過ごしできるように、努力してきたのです!」
「現在大勢の信者が押しかけているでしょう? 我々ならば彼らを説得できます。ですが、今後もこのようなことが起こるやもしれません」
「ですので、皇妃様をロギア教国で保護いたしましょう。確実な安全を保障いたしますよ」
とんでもない言い分をする使者たちに、常に冷静なジーニャが苛つきながら睨みつける。
しかし、ルクスは冷静に、静かに口を開いた。
「そなたたちの心配も今までの努力はわかった。だが、仮にそなたたちが守るというのならば、一体ここで何をしている? そなたたちがやるべきことは外の信者たちを説得することではないのか?」
使者たちが自分らの発言で首を絞める。
彼らがひるんでいるうちに、ルクスは言葉を続ける。
「彼女を守るのも大切にするのも俺の役目だ。そなたたちではない。それで、話はそれだけか? なら、失礼するが」
「おっ、お待ちをっ……な、なら、せめて聖女様ではないという証明をみせていただけないでしょうか? ロギア教国におられる高位の神官ならばその判断が……」
「それになんの意味がある? 先ほども言っただろう、彼女は聖女ではないし、仮に聖女でもロギア教国に守ってもらう必要はない」
「くっ……で、では、最後に皇妃様へのお手紙を預かっております。それだけでも受け取っていただけないでしょうか?」
「ジーニャ」
ジーニャが手紙を使者たちから受け取ろうと近寄ると、明らかに彼らは嫌な顔をしたが、それでもここで渡さなければ受け取ってもらえないからと、手紙をジーニャに手渡した。
手紙には便箋以外にも何か入れられているようで、封筒が揺れればこすれる音がした。
「それでは、我々はこれで……」
もっと食い下がるかと思っていた使者たちは、思いのほかあっさりと引き下がって立ち去った。
ルクスがジーニャから封筒を受け取る。
「危険なものの臭いはしない……手紙以外に何かが入っているな」
エリザベス宛だとはわかっているが、ろくなものではないことはわかっているので、封筒を開く。
中には一通の便箋と見覚えのあるブレスレットが入っていた。
「それは、エリザベス様の!?」
「いや、彼女のものではない……まさかっ!」
ルクスが眉間に皺を寄せ、手紙にも目を通す。
手紙には「エリザベス様、大事なものをお預かりしておりますので、旅行もかねてぜひロギア教国にお越しください。 サエウム・ピスティ」という一文だけ書かれていた。
この一文が脅迫であり、罠であることは明白だ。
「エリザベスの、妹のものだろう……仲の良い彼女たちが同じものを持っていても不思議ではない」
「罠ですね……エリザベス様を呼び出すための」
「胸糞の悪い奴らめっ……」
ルクスは、手紙をくしゃりと握り潰してやりたかったが、何とか堪える。
「このことはお話しするのですか?」
「いや、こんな手紙を見たら、彼女は必ず妹を助けに行くだろう。それは危険すぎる」
「俺一人で向かい、交渉しよう……準備を」
「………かしこまりました」




