結婚式
エリザベスは結局ミーシャのいつか分からぬ来訪のことを言い出せぬまま、結婚式当日になってしまった。
「ゔお、おぎれいでづ、エリザベス様ぁ~」
「ふふ、ありがとう。でも泣きすぎよ。せっかくの可愛いルーニャの顔がわからなくなってしまうわ」
「うぅ、ふ……なんだか嬉しくて」
結婚式当日、裾がふんわりと広がる純白のドレスに身を包んだエリザベスは、泣きじゃくるルーニャの顔を優しくハンカチで拭ってあげていた。
桃色の髪は綺麗に結い上げられ、瞳の色と同じのサファイアがあしらわれたネックレスや髪飾りがエリザベスの美しさを引き立たせていた。
エリザベスは男女問わず見惚れる美しさがあるのだが、普段、本人は目立つことはしない。
しかし、今日は主役というのもあってルーニャたちメイドが精を出し、エリザベスの魅力を引き出すことに成功し、歓喜で涙まで流している。
コンコンと扉が叩かれ「陛下がいらっしゃいました」というジーニャの声が聞こえた。
間もなくルクスが入ってくると、その美しさに周りのメイドたちが思わずうっとりとしたため息がでる。
ルクスは人間に近い姿になっており、深い青の衣装に身を包んでいる。
(陛下はやっぱり魅力的なのよね……みんなが惚けてしまうのもわかるわ) と、エリザベスが考えながらルクスのもとへ歩み寄るが、ルクスはどうしてか固まって動かない。
「陛下……どうかなさいましたか?」
「いや、なんでも………ある……綺麗だ、エリザベス」
「ふ!? え、あ、ありがとうございます……陛下も本日はいっそう見目麗しゅうございます」
エリザベスは不意に褒められて、耳まで真っ赤にしながら下を向いてしまった。
ルクスまでなんだか恥ずかしくなって、俯く。
ルーニャを含む周りのメイドたちがきゃあきゃあとはしゃいで、収拾がつかなくなりそうになってきた。
ジーニャが咳ばらいをして、メイドたちを窘めると盆にのせていたヴェールをルクスに差し出す。
「陛下お時間ですので、行きましょう」
「そうだな。では、ヴェールを……」
ルクスはジーニャに持たせていたヴェールをエリザベスの頭に被せて、腕を差し出した。
エリザベスはにこりと微笑んで、ルクスの腕に手を添える。
「よろしく頼む、エリザベス」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
エリザベスとルクスは婚礼の儀が行われる玉座の間に向かった。
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玉座の間の扉が開かれると、各所から集まってきた多くの貴族たちの姿が見えた。
貴族たちから注目が集まり、拍手で迎えられる。
ただ、その視線は興味や祝福、そして値踏みするなど様々だ。
そして、こんなにもたくさんの人であふれているというのに、何故か人ごみの中にいる神官のサエウム・ピスティと目があった。
ピスティは笑顔で拍手しているが、やはりその心の奥に冷たい何かを感じて身震いした。
(ピスティ卿……参加なさるのは知っていたけれど、どうしてあの人を冷たく感じるのかしら……)
エリザベスは、身体が強張ってしまいそうだったが、ルクスが小声で「エリザベス、背筋を伸ばして堂々としているだけでいい」と励ましてくれたおかげで、背筋がすっと伸びた。
二人で共に、赤く長い絨毯をしっかりと踏み締めていく。
その先には誓いの言葉を述べる神官が待っている。
神官の前まで行くと誓いの言葉が始まり、お互いに「はい」と答える。
指輪をお互いにつけ合い、ルクスがエリザベスのヴェールを上げる。
エリザベスの視線とルクスの視線が重なり合う。
(口づけをするのは、これが初めてだわ……必要がないなら、もしかしたら唇を重ね合うことなんてこれが最初で最後になるかもしれないのね)
(これも……大事な思い出にしよう)
エリザベスが瞳を閉じるとルクスの顔が近づき、そっと唇が重なった。




