もっと自由に
「いらっしゃい、いらっしゃい! お嬢さん、可愛い装飾品があるよ」
「いらっしゃい! 美味しい串焼きはいかが?」
大通りに出ると、たくさんの露店がでていて、多くの人でにぎわっていた。
ルクスが手をしっかり握ってれるので、エリザベスは人に流されずにいられる。
「人がたくさん……お祭りが近いのですか?」
「はは、皆は俺たちの婚礼を祝いに集まっているのだぞ? まぁ、皆にとっては祭りみたいなものなのかもな」
「あ……そうですね。結婚するのですよね、わたしたち……はい」
見当違いの質問をしてしまったことに恥ずかしくなってエリザベスは俯いたのだが、ルクスはエリザベスが婚前不安症になっているのに結婚を意識させてしまったと気づき、しまったと顔をしかめた。
(あぁ……せっかくの気晴らしが彼女に意識させてしまった。何か……何かないか)
くぅ~
「ん?」
ルクスの耳に可愛らしい、本当に小さな音が聞こえ、振り返った。
すると、俯いているエリザベスが耳まで真っ赤にしていた。
「そこの串焼きがいい匂いがするから、おなかがすいたのか? 何本欲しい?」
「ぃ、ぃぇ、大丈夫です……」
エリザベスはか細く返事をして、首を振った。
(そういえばエリザベスは食事の量が極端に少ないと聞いていたな。そして野菜中心だとも)
(思えば、歩く時も俺の前を歩かない……食事の制限までしている。そう、教育されてきたのか……)
ルクスは、エリザベスの手を引いて串焼きを売っている露店の前まで来た。
肉が炭火で焼かれ、じゅうじゅうと音をたてている。
肉汁が滴っているのは、見るだけでよだれがでてしまいそうだ。
エリザベスは串焼きを見て、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「食べたそうな顔をしているぞ。安全かどうかは俺が匂いでかぎ分けるから、遠慮することはない。それと、肉を食べてエリザベスを咎めるものなどこの国にはいないからな」
「万一いたとしたらその者が罰を受けるだけだ」
さらっと言い放つルクスをぎょっとしてエリザベスが振り返った。
「そういっていただけるのは嬉しいのですが、罰までは重いのでは……」
「そなたはそれほどの地位に着くのだから、もう少し我が儘になったってかまわないのだぞ。そなたは自分を卑下しすぎる」
ルクスはぎゅっと眉を寄せて、エリザベスの手を優しく包んだ。
その表情が切なそうに見えて、エリザベスまで心が切なくなってきた。
「そなたはもう少し、自由になってもいいんだ」
「………じゆう、に?」
エリザベスは、不安そうにしながら視線が串焼きに向いた。
しばらく考え込んで、ゆっくりと口を開いた。
「では……一本だけ………」
「あぁ、そうしよう!」
ルクスが嬉しそうに笑って、串焼きを二本頼んで、内の一本をエリザベスに渡した。
エリザベスはまじまじと串焼きを見つめてから、ルクスをちらりと見るとルクスはにこにことしながらこちらを見つめていた。
少し恥ずかしいと感じたエリザベスはルクスに背中をみせて、串焼きの肉を少しだけかじった。
肉は柔らかく、じんわりと肉汁が口に広がって、美味しくて思わず笑顔になるほどだ。
ついつい、一口で足らずに、二口、三口と進んでしまった。
「どうだ?」
「美味しいです! とっても柔らかくて、香料も王国では使われていないようなので初めての味です!」
目を輝かせて感想を述べるエリザベスをルクスが微笑ましく見つめる。
「もう一本食べるか?」
「い、いえ、一本でお腹がいっぱいになりそうです」
「そうか、小食だったからたくさん食べるのに慣れていないのか……少しずつ慣れさせるか……」
ルクスがぼそりと呟いたがエリザベスは何のことかわからず、首を傾げた。




