情報収集
幼い頃に本で読んだ素敵な恋の物語。
主人公とパートナーがお互いを大切に思って、愛し合っているのが文字からひしひしと伝わった。
ただ、それは自分には一生おとずれることがないものだとわかって、気持ちは心の奥底で蓋をした。
自分は誰かを愛し、愛されることはないのだろう。
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エリザベスは寝台で目を覚まし、身体いっぱいにのびをした。
起き上がり、窓から外を見ると雲一つない快晴だった。
「今日もいい天気……」
(リズおはよー!)
(いまは いーよね?)
(だれもいなーい! かくにんだいじょぶ!)
「ふふっ、みんなおはよう」
妖精たちが集まってきて、エリザベスの頭や肩にとまる。
その感触はもこもこで少しくすぐったくて、温かい。
人目が多い城であまり話ができていなかったが、それを妖精たちは理解してくれて人が多い時には話しかけるのを控えてくれる。
その代わり、人がいないと分かれば妖精たちが集まってきて、エリザベスは妖精まみれにされてしまう。
しばらく妖精たちのもこもこを楽しんで、のほほんとして眠りこけそうになったが、ききたいことがあることを思い出して目が覚めた。
「ねぇ、みんなどうして皇帝陛下の周りでいつも遊んでいるの?」
(こーてー?)
「えーと、ルクス、様」
(ルクスすきー)
(すきだから ふわっしてる)
「そうなの……」
気ままな答えが返ってきて、まぁ深い意味があるというよりか、ルクスが一緒にいて心地の良い相手なのだろうと思うことにした。
「ルクス様が好きなものってみんな知ってる?」
(あったかいとこ!)
(おはな!)
(こーちゃ!)
「温かいところに、お花、それに紅茶……紅茶かぁ。甘いものは好き?」
(だいすきっ でもがまんしてるよねー こっそりたべてる)
(よねー)
「そっか、よかったぁ……ありがとう、とっても助かったわ」
(やくにたったー!)
エリザベスが笑顔でお礼を言うと、妖精が嬉しそうに飛び、薄い羽が陽の光が透けて綺麗だった。
(あぁ……この子たちに囲まれているとあったかい気持ちになる。ふわふわして……眠気が……)
コンコンコン、と扉が叩かれたおかげで再び訪れていた眠気がどこかに行ってくれた。
元気なノックをするのはルーニャだとすぐにわかる。
「じゃあ、みんなまたね」
(さみしー……)
妖精たちには離れてもらって、ルーニャを笑顔で迎え入れた。
「エリザベス様、おはようございます! あっ、なんだか嬉しそうです。いいことがございましたか?」
「えぇ、今日もまたお手伝いしてくれる?」
「もっちろんですっ!」
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(上手くできた。喜んでもらえるといいなぁ)
今日も料理長にキッチンを貸してもらって、お目当てのものを作った。
エリザベスは、上手くできて気分がよく、鼻歌を歌いたくなったが、聞かれては恥ずかしいかな、と我慢した。
(陛下は喜んでくださるかしら……)
お菓子を包んだ袋を見つめると笑顔が漏れ出てしまって、それをまた嬉しそうにルーニャがにっこにこの笑顔で見ていた。
しかし、今日こそ渡そうと息まいていたエリザベスだったが、ルクスは執務室にはいなかった。
「陛下はいらっしゃらないの?」
「はい、今は休息されています。植物園に行かれました」
(植物園……なるほど、温かくて、お花もあって安らげる場所なのね……)
「わかったわ。ありがとう、ジーニャ」
ジーニャに笑顔でお礼を言い、エリザベスとルーニャは植物園に向かった。
ルーニャが別れる時ジーニャに手を振っていて、ジーニャも小さく手を振り返していたのが微笑ましかった。
「ルーニャとジーニャはとても仲がいいのね」
「そうですね! ちょーっと一言多いけど、優しいです。それに家族はジーニャだけですし、大事です!」
家族がジーニャだけ、と聞いて両親も身内もいないのかもしれない、と思うと悲しく思えてエリザベスの表情が暗くなったが、その話を語る本人が明るく振舞っているので、首をゆるゆるとふって悲しい気持ちはしまい込んだ。
「そうね……家族は大事よね」
「エリザベス様のご家族はお元気ですか?」
「元気、だといいけれど……うーん、今大変な状況だから疲れがたまっていると思う」
「えぇ!? ご家族に何かあったんですか……?」
ルーニャが自分のことのようにしゅんとして心配するので、エリザベスは困ったように微笑んだ。
「わたしには双子の妹がいるのだけれど……気持ちわ……んんっ、少し情熱的すぎる男性にからまれていて……妹は嫌がっているのだけれどね……」
「な、な、なんですかっそいつは!? くぅー……そんな男がいたら今すぐとっちめてやるのに!!」
「そ、それはさすがにルーニャにはさせられないかな」
(相手は王国の王子なのよね……)
これまた自分のことのようにぷんすかと怒って拳を掲げて興奮するルーニャをどうどうとエリザベスが落ち着かせる。
(昨日、殿下からの届いた手紙にミィのことが書いてあった。とりあえず元気、なのかな?)
(殿下と決闘なんてして……でも勝ったのよね、さすがミィ、わたしの自慢の妹だわ)
(でも、何を賭けたのかしら? 手紙には、婚約破棄のちょっとした謝罪とミィに対する気分の悪くなる描写しか書いてなかったから、分からないけれど)
(はぁ……まだ誓約を解く方法もわかっていないし、無茶をしなければいいけれど………)
エリザベスが手首のミーシャに貰ったブレスレットを握りつつ、うーんと考えの渦に飲み込まれたまま歩く。
ぷんすかルーニャは次第に落ち着いてきてエリザベスの肩越しにエリザベスの様子をうかがった。
「エリザベス様……?」
「………」
「エリザベス様っ、植物園はあっちですよ!」
「ひゃっ!? あ、ごめんなさい。考え事を始めるといつもこうなってしまって……」
「いえいえ、それよりも考えすぎて壁にぶつかってエリザベス様のお綺麗な顔に怪我でもしたら大変です! もちろん、お守りはしますがっ」
「ふふ、気を付けるわ」
冗談でも自分を気遣ってくれるルーニャの心遣いが嬉しかった。




