表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/41

第37話 ストーカー紛いの尾行


「……痩せたな」

「ありがとう」


 部屋から出て来た栞は、そう言ってほほ笑むとソファに座る。


 褒め言葉のつもりじゃない。

 顔がげっそりしているが、まともにご飯を食べていないみたいだ。

 もう昼になるが、ようやく部屋から出て来た。


 大学にも行っていないみたいだ。

 それどころか、部屋から外に出るのも珍しいぐらいだ。


 俺も大学には数回行ったぐらいで、沢山の視線が四方から突き刺さってからあまり行っていない。

 出なきゃいけない講義には出ているが、栞は出ていない。

 そろそろ無断欠席ばかりしていると、単位が取れなくなるから心配だ。


「今日、何も食べてないんじゃないか?」


 あれから二週間経った。

 ネットは静かなものだ。

 予想通り、毎日ネットニュースが流され、俺達底辺ShowTuberのことなんて世間の人達は忘れている。


 炎上した某ShowTuberが休止明けの復活配信で、平然とスパチャを解禁してそれが赦された事件は記憶に新しい。

 普通だったらもっと炎上するはずだったが、お咎めなしだった。


 まあ、そんなもんだ。

 結局、噂なんてすぐに消えるもんだ。

 騒いでいる連中のほとんどは、物珍しいから集まっていただけ。

 あれから毎日DMに殺害予告を残す人はいるけど、まあ、慣れてきた。

 同じ文章だからコピペしているだけで、実行に移すほどの情熱はないだろうな。

 あまりにも続くようだったら、法テラスに相談することも考えている。


「食欲ないから」

「ゼリーなら食べられる? 買って来たけど」

「……ありがとう、後で食べておくね」


 栞はそう言うと、水だけ飲んで玄関へ向かう。

 結局、何も食べないつもりか?


「どこかに行くの? 一緒に行こうか」

「ううん、いい。えー、と近くのコンビニに行くだけだから」

「そうか……」


 適当にコンビニって言っただけだな。

 嘘をついているのか、それとも行く場所を決めていなくて適当に答えただけなのか。

 どちらにしても見過ごせない。


 部屋にいる時は物音一つない。

 スマホでエゴサをずっとしているようだ。

 病んでしまうから辞めるように言ったのだが、ずっとしているらしい。


 ストレスで寝られていないみたいで、眼の下にクマができていた。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 扉が閉まる。

 フト見ると、スマホをソファに置いたままだ。

 肌身離さず持ち歩いていたスマホを手放すなんて、相当重症だ。


 このまま一人で行かせていい訳がない。


「後を尾けるか」


 嫌な予感がする。

 ストーカー紛いのことをするのは気が引けるが、杞憂で終わってくれればそれでいい。


 俺は急いで準備すると、栞にバレないように尾行を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ