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第13話 居酒屋で修羅場(1)

 栞と久羽先輩に、誤解されるようなシーンを目撃されてしまった。

 気絶してしまいたいが、ここは俺が弁解するしかない。


「こ、こっちは――」

「私、ShowTuberやってます!! 水上飾と申します!! カザリって呼んでください!! ファンです!! うわー、生シオさんだあー。綺麗ですねぇ!!」


 空気を一切読まずに、カザリちゃんは栞の両手を掴む。

 今にも怒鳴りそうだった栞は踏鞴を踏む。


「しょ、ShowTuberァ!? なんで、ShowTuberが私の巧とキスしているの?」

「す、すいません。なにか酔っぱらっていたみたいで。――食事で汚れていた頬を綺麗にしただけなんです」

「それで、キス? 酔っていたで済まされる訳ないでしょ」

「すいません、謝罪のキスをさせていただきます」


 そう言うと、カザリちゃんは栞の頬にキスをしようとする。

 慌てて引き剥がすと、ゴロゴロと畳に二回転する。

 この動き方、完全に酔っ払いのそれだ。


「ちょ、ちょっと、何しようとしてるの!!」

「この子、酔うとキス魔になっちゃうんじゃないの?」

「そ、そんなことって」


 久羽先輩が心配そうに、動きを失くしたカザリちゃんを覗き込む。


「わっ」


 ガバッと何事もなかったかのように起き上がったカザリちゃんは、両手で俺達の卓を示す。


「そうだ! ご一緒しませんか!?」

「は、はあ、なんで!?」

「だって、私、シオさんのファンなんです。もっとお話ししたいです」

「お、お話って、あなたねぇ……」


 振り回されている栞の後ろに、店員が駆け寄って来た。

 誰か他の客が呼んだのか、それとも店員自体が騒ぎを収拾するために駆けつけたのだろうか。

 ともかく、俺達は目立っていた。


「お客様、どうされましたか?」

「すいません。何でもないです」


 久羽先輩が即座に返すと、はぁ、と店員さんは力なく返す。

 これ以上騒ぐと他のお客様に迷惑なので、出て行ってもらえませんか、と今にも言いたそうな店員さんだった。


 飲みの席ということで、他の客の騒ぎ声も大きい。

 だが、俺達はさっきから立ったまま大声で話している。

 通路を通りたい客がいる中でのこの騒ぎ、目に余るのだろう。


「いいわ。上等よ。――店員さん、この人達と一緒に飲みたいんですけど、いいですか?」

「は、はい。少々お待ちください」


 店員さんは仕切りであるのれんを上に上げると、2つの机をくっつける準備をしてくれる。


「ちょ、ちょっと、栞ちゃん?」

「いいですよね? 久羽先輩。さっき相談の途中だったんですけど、いいタイミングです。私のストレスの元が誰なのか分かったので、相談はもうしなくて大丈夫です!!」

「私はいいけど」


 チラリ、と久羽先輩がこちらの様子を伺ってくるけど、俺は何と返答していいか分からない。

 下手に口出ししても、火に油を注ぐ結果になりそうだ。


「売られた喧嘩は片っ端から買ってやりますよ。巧が誰の物なのかハッキリさせてやります!!」


 そう宣言した栞によって、俺達4人は飲むことになった。

 地獄だ。



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