婚約破棄され、悪役令嬢と言われた双子の姉が家に火をつけた…と聞いた、館に取り残されたのは私と姉が二人、生き残ったのは一人、記憶を失くしたわたしはだあれ?
「わたしはだれ?」
私が目を覚ますとそこには見慣れない男女と、一人の青年がいた。良かった目を覚ましたと喜ぶ皆をみて、わたしはだれ?と問いかけると皆の顔が曇る。
先生がきて、問いかけをされた。名前もなにもかも思い出せないというと、火事のショックで記憶を失っていると言われました。
男女は私の両親、青年は私の婚約者。だそうです。
私の体には火傷の痕、包帯で隠れていまは見えないと言われましたが痛みはあります。
顔は火傷はないですが、見ていて変な感じです。
3ヶ月前、館が火事になり、取り残され、火傷で病院に担ぎ込まれ、意識がいままで戻らなかったそうです。
私の双子の姉が一緒だったそうで、私は妹のサラ・ルーンと言うそうです。家は男爵で貴族。
双子ですが、身に付けていた首飾りが私のイニシャル入りでいつも大切にしていたので、サラとわかったそうです。
私はサラ、姉はミリア、でも全く覚えていません。
描かれた絵画には二人同じ顔が並んでいました。長い金色の髪をした女性、二人とも青い目をしています。
よく似ていて、こちらが私と指を指されて言われました、実感がありません。
私の婚約者は名前はカインといいます。伯爵だそうです。私は彼の従姉妹で、いまは20才、彼は21。
血族婚姻をしてきた家系で、両親もまたいとこだったそうです。
なぜ姉が婚約者にならなかったのかと聞くと、母という人が言いにくそうに、もともと祖父から姉が婚約者に決められていたそうですが、カインが年頃になりサラを選んだと聞きました。
私は新しい家とやらに帰りました。カインはサラが無事でよかったといってくれますが、私は彼を愛しているか?と聞かれるとわからないとしか答えようがなく。
そして家に帰り、私は与えられた部屋で無為に過ごしていました。記憶はいつか戻るかもといわれ、色々、サラの話をしてくれますが実感がありません。
サラはおとなしく本好きだったそうですが、私は差し入れの本などはあまり読みたいとは思いませんでした。
サラはおしゃれには興味がないようでしたが、私は新しい服やアクセサリーを貰うと喜びを感じました。
ええ、姉のミリアはそういうものが好きだったわと母という人がポツリと言ったとき、私にはある疑念が沸いたのです。
火事になり焼け死んだのは本当に姉のミリアだったのか?と。
私は姉の親友だったというエリというひとに無理を言って会わせてもらうことにしました。
彼女に頼み込んで聞き出したところによると、かなりミリアは気が強く、言いたいことははっきり主張するひとで、派手好きだったそうです。人の好き嫌いが激しく、うじうじとした人を嫌い、そういう人をいじめ、悪役令嬢と言われていたそうです。
言いにくそうにしていましたが、どうしてもと聞き出しました。
今のあなたはだから間違いなくサラよ、だってミリアだったらわかるものと言われました。私には覇気がないそうです。
サラそのものだと言われました。
しかし、実感がありません。
私はなんとか思い出そうとしました。
しかしカインは無理をして思い出さない方がいいというのです。
私はだあれ?
ふわふわとした日々です。私は私という実感が欲しい、記憶を取り戻したい。婚約者であるカインが結婚
の話を持ち出したとき強くそう思ったのです。
私は前の火事になった館に行くことにしました。誰にも内緒で出かけて、翌日にはつきました。
なにもかも灰、黒く焼け焦げたものが残るだけ、私はなにかないかと探して、そして、何か焼け焦げた首飾りのようなものを見つけ拾い上げました。
Sというイニシャルに見えて……私がいましているものにそれはよくにていました。
『あんたみたいなうじうじした女がカインの愛を手に入れるなんて許せない、婚約を破棄してよ! 私が真の婚約者なのよ! サラ』
私と同じ声の人が叫んでいます。頭がひどく痛みました。
『カインが愛してくれたのは私ですお姉さま』
全く同じ声の持ち主が反論します。
あんたなんて死んでよ!という声が頭に響き……。
「ここにいたのか、サラ、探したよ」
「カイン様」
「様はいいよ、カインでいい、さぁ、帰ろうみんな心配している」
黒髪に緑の瞳の綺麗な顔立ち、優しい笑み、しかしやはり愛しているかといわれたらわからないのです。
「カイン、私は本当はお姉さまなのでは? サラではないのでは?」
「君はサラ、僕にはわかる」
「でも!」
「間違いない、君はサラだ」
ええ、そう言ってもらえると思ってましたわ。でも私は使用人の噂話を聞いてしまったのです。
姉の、残された遺体には刃物で刺されたあとがあった。姉が妹を殺そうとして誤って妹がもしかして姉をと。
「私はだあれ?」
「君はサラだ、僕の愛するサラだ」
ぎゅっとカインが私を抱き締めてくれました。でも、私は明確な殺意を持って誰かを殺そうとしていたことを思い出したのです。
私は誰を殺そうとしていたの? 残された首飾りは二つ、それを見た記憶もあるのです。
首飾りはカインの贈り物と聞きましたが、どうして二つも?
私の首にひとつ、懐に焼け焦げたものがひとつ。
確かに首飾りを見た記憶が……。
きらりと光るナイフ、溢れだした血、倒れた時に火がついた燭台が……。
頭がひどく痛みます。特徴的な黒子や傷も二人にはなかったと聞きましたが。
黒子が一つどこかに……私には左の足の太ももに一つあります。
でも両親もだれも知らないといいました。成長するうちにできたものなのでしょうと。
私はだあれ?
「私には黒子がありますが、どこにあるかカイン、知っていますか?」
「たしか、足の太ももに……」
「どちらの?」
「たしか、右、いや左か、そこまではおぼえてないな」
「右と言ったら?」
「別にどちらでもいいだろう」
「左か右かどちらですの?」
私は思い出しました、そしてカインに問いかけます。私はだあれ?と。
お読み頂き有難うございました。
よろしければ☆に色を塗る、ブクマなどで応援していただけたら今後の励みになります!