表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

帰路



あれから、どのくらいの時間が過ぎたのだろう。

机の上にはカードの山がある。


「ーーーはい、終了」



いや、実際には、ほんの20分ぐらいだったのだが。



「じゃあお疲れ様。頼んだよ、レイ」



負けたのはーーー俺、だった。



こうなるという予感がしていた。確実に。

程よく、押しつけられた気がしてならない。



「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「どうすればいいんですか!?こんな状況で俺一人で警護しろって!」


「平気だよ。レイの住んでいる所、(いち)の近くだし…あそこには最強の味方たちが大勢いる」


「最強って…街のおばちゃん達じゃないですか…」


「最強だよ。味方になれば絶対勝てる!別の意味でだけど」


「それにしたって…」


ああ。このままいけば丸め込まれる。口でルカさんに勝てる筈ない。




チラッと伏せ眼がちになっているロゼを一瞥する。

初めて会った時から、少し思っていたことがある。


まるで、人形のようだーーーと。


自分を探しだした者に、恐怖から縋ることも無く、怯えも見えなかった。

笑いもせず、泣きもしない。

ただ、言われるがまま此処に来た、そんな感覚。


どんな所で、生きていたのか、ロゼは。




(レイ)



「大丈夫。ーーー自分がされてきた事を、すれば良いだけだよ。

今度は、彼女に」



その言葉に、思わずルカさんの顔を見た。


そして、頑張れという呟きを置いて、

部屋から出て行ってしまった。








“今日はこのまま休みで良いから”


外に出ると、夜の雨は嘘のように止んでいた。


午前中、人通りがとても多い。皆、それぞれ買い物や仕事をしている。


その人混みを避けるように、自宅に向かって歩く。すぐ後ろを雛鳥のようにロゼがついて来るのを確認しながら。



こんな状態の子をどうしろっていうんだ。

されてきた事って言ったって、“あの時”は朧げな記憶しか残ってないっていうのにーーー。


「おやぁ!レイじゃないかい!お帰り。今日は休み?」


突然響いた、大きな声。

びくりと顔を上げて、立ち止まると後ろを歩いてたロゼが背中にぶつかった。


「…ただいま、マーサさん。あー…まぁ、そんなとこかな」


声の主は、この(いち)で主に食料品を販売しているマーサだった。この辺りでは、ちょっとした有名人だ。

大きな袋を肩に乗せ、恰幅のいい体を揺らしながら近づいて来る。


「イヤだ!レイ!!また、痩せたんじゃないのかい!?駄目だよー。一人暮らしだからって、ちゃあんと、食事は摂らないと!

だから、私の家で食べなって前から言っているのに!!」


「ありがとう。マーサさん。大丈夫だよ、ちゃんと自分で作って食べているから、いつもマーサさんの店で買ってるだろ?」


「ああ!そうだったねー!」


けらけらと笑っていた、マーサがふと隠れていた存在に気付いた。


「あらまぁ!レイ!その後ろにいる子は誰だい?とうとう彼女が出来たのかい!?」


「あ、いや、違…」

「まぁぁ!大変!!やっと春が来たんだねぇ!だからって、すぐに変なことするんじゃないよ〜!おっと、こうしちゃいられない!!皆に教えてこないと!

じゃあね、彼女もご贔屓にしておくれよ〜!」


「………」

「………」


颯爽と、マーサは去っていった。

レイは、これからのことを考えて項垂れた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ