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出逢い


あの日は雨だった。


それはとても強い雨で、ハリケーンでも来てるのかというくらいの風も吹いている。そんな日。

いくら雨合羽レインコートを着ていても正直、意味がない。中の服までびしょ濡れになっている。視界ですら、不明瞭だ。耳にもほぼ雨と風の音が反芻している。


「レーイ!平気か?」


ザーザー、ビュービュー、と鳴り響く音の合間に微かに届いた声。


「ジャック」


その声に応える。


と、突然眼前に姿を現した。

どうやら、乗っていたコンテナから飛び降りたらしい。


「見つかった?早くしないとマズイかも。国家警察も彷徨(うろつ)いてるみたいだ」

「解ってる。警察以外にも居る様な気がするけど…取り敢えず、この雨風じゃ手間がかかる」


今居るのは、港だ。


多数のコンテナと船が混在する中、探しているのは1つの荷物だけ。

こっちは2人。あちらさんは、多数。しかもいくつかの別の団体が動いてるときた。

分が悪過ぎる。


「一体、国も末端の組織も動かすモノなんて、何なんだろ?」

ジャックは、にやりと笑う。

「さぁ、ね」


そう応えた。

すると、コンテナの端に光が見えた。マズイと思うと同時、身体が上に引っ張り上げられる。

こつん、という微かな音だけで地面からコンテナの上に身体が移動していた。

ジャックの方を見ると、口の前に人差し指をたてていた。


コンテナの端から現れたのは、国家警察だった。

「あれ、おかしいな。声が聞こえたんだけど」

「気のせいだろー。早く見つけないと先越される。署長直々の命令なんだ。昇進だってあるかもしれないんだからさ」


どうでもいい会話を大声で話しながら通り過ぎていく。気のせいにする辺り、恐らく彼らの昇進は無いなと思った。


「んじゃあ、もう一走りしてくる。見落としがあるかも知れない」

身体を伸ばしながらジャックは言った。


「頼む。俺も反対側を探す」

さっき脱げた雨合羽レインコートのフードを被る。



「“()()”を探す、其れが俺達の任務だ」




ジャックが行ってから、ゆっくり走り始めた。周囲に気をつけながらふと思う。


“ロゼ”


国家警察までに追われるモノ。

自分たちが探しているモノ。

一体どんなモノなのか。


コンテナを抜け、船のすぐ近くにまで来た。真夜中なので船員らしい者はいない。いるとしたらさっきのような者達だけだ。



その時



視界の端で茶色い何かが動いた。


コンテナの先に置いてある樽と木箱の少しの隙間。

そこに何かがある。


ボロ布のような、よくよく見るとコートのような…


ゆっくり、近づく。其れは、動かない。逃げようとは思わないらしい。






恐る恐る布をめくる。







伏せていた顔をゆっくりとこっちに向ける。





そこに居たのは、茶髪、茶眼の人間だった。



「ーーーーお前が、“ロゼ”…か?」




一瞬、瞳が揺らぐ。

少しの間があり、こくりと頷いた。




探していたモノは、物ではなく、まさかの“者”ーー。




人間、だった。



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