勇者
眩しい。
山暮らしのアンでは想像もつかないほど豪華な装飾をしたベッドでアンは目覚めた。
ここはどこだろう。
まぁ、いっか。眠いし。
アンは再び寝ようとした。
「『まぁいっか』じゃねーよ、起きろ白女」
背後から男の声...男!?
眠気は鳥肌と共に覚めた。私は距離を取るように振り返り、男の顔を見る。
一瞬での印象は、なんか強そうな人、だ。尖がった金色の髪の毛に射るように見る目、万物を通すことを許さなそうな鎧。
アンは思った。
ヤバい!犯される!と。
男に背を向け、逃げる、と思考して振り返ると、少し長い椅子に座っている女の人がいた。
美人、服が可愛い、なんか飲んでる。
アンはその見た目だけで包むような優しさに、数秒見惚れた。
「お、やっと起きたか。体調はどうだ?」
「ふん、勇者になったんだ、このくらい余裕だろ」
「トーテム、この子は勇者の力が授かったばかりだぞ。流石にその言葉はないんじゃないか?」
さらに、鎧を着た女性、ひらひらとした物を着ている男性、この中では一番軽そうな鎧を着た男性が、私を囲んだ。
...いったい、この人達は誰なんだろう。
いやそもそも、ここはいったいどこなんだろう。
「新たな勇者、アン」
「は、はい!」
一番鎧が軽そうな人が話しかけてきた。
...ん?今この人なんて言った?
「勇者の精霊と契約したお前は、今日から勇者だ。これからは魔物を殲滅する旅に出てもらう」
「あ、あの...勇者とは」
「貴方が起きると、そこは王城。そこから皇帝様の長い話の後に、西に行って洞窟のゴーレムを討伐されるように命令されるわ」
「あ、あの貴方たちは...」
「そろそろ時間だ。貴様はまだ勇者の力の十分の一も使いこなせていないが、いずれはこの世界の魔物全てを倒してもらう」
「この程度でくたばるんじゃねーぞ?」
「...」
もはや何を言っても聞いてくれやしないだろうと悟る。
すると、鎧の女性が前に出て、アンの手に物を渡す。
「それは私のお守りだ、大切にするとよい。勇者アン」
「あっ、これはどう」
ありがとうございます、そう言い切る前に、視界は段々と白く染まり、気づいた時には先ほどとは違う質素なベッドでアンは横たわっていた。
復帰しました。




