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勇者開花

その子は地面から浮きながら話しかけて来た。

身長は私の頭くらいの大きさで、見た目は絵本で見た白い布を纏った天使のような恰好、声は男だ。


「...誰?」

「さあ?気が付いたらここにいた。ただ、分かるのは、吾輩はお前ってこと、それと、お前に勇者の力があることだ」

「...ゆう、しゃ?...わたし?」


意味が、分からない。


「まぁ、今は何をどう思ってもいいが...お前、ついでにお友達含めてみんな死ぬぞ?」


私はハッとなり、周りを見た。

すると、どういうことだろうか、チャインさんは空中で止まり、その真横には今でも蹴りを繰り出そうとしているラビットユニコーンの姿。

その他にも、背中を向けて逃げようとするゲイルさん、傷を負っていても戦いに行こうとするナナグロさん、蹂躙するラビットユニコーン達、よく見ると木なども。

全く動いていなかった。


「これ...は?」

「さぁ?神様が不正して時間でも止めたんじゃねーの?でもこれ、すぐに動き出すぞ?この状況に唯一気づいているお前でさえ怪我で動けない。何度も言うが皆死ぬぞ」

「ど、どうしたら...」

「まあ慌てるな、方法は一つだけある」

天使のような恰好をした何かは、人差し指をアンに指さしてこう言った。


「力無き勇者、吾輩と契約しろ。さすれば、まだ蕾のお前に祝福の水を与えよう」

「けい、やく...」

「そうだ。望むなら、契りの言葉を共に交わせ」



「...意味が、分からない」


私が勇者?

人魔族の私が?

人の血と魔族の血を持った私が?

神様は何を考えているのだろう。




『俺が、俺が皆を守るんだ!』


『私は私、不の拘りなんて捨ててしましょう』


『細かいことは分からないが、救える命は救いたい』


『力が、力があれば!』


『ここで力を振るえば明日は安明(あんめい)、ここで振るわばいつ振るう?』




「それでも、皆を救いたい!」



血筋?そんなのは後だ。

もう何も考えられない。

決意と共に止まった時が動き出す。

動き出した時と共に秘めたる力が騒ぎ出す。



「よく言った、ならば契約だ。吾輩に続け!」



世界に一筋の光が降り注いだ。

時が動き出した辺りから、チャイン達とラビットユニコーン達は、契約に見惚れて動きを止めた。

まるで、神を見るかのように。



「「世界が闇に葬られようと、己の光は照らされ続ける。

光が影を作ろうが、影は光に勝らない。

光を纏い、勇敢に魔を討つ我は勇者!光の名は『ライト』!

悪は栄ど終幕滅のみ!汝!我に力を!!」」



そこに、先ほどのまでのアンはいなかった。

今まで一回も染めたこともなかった白い髪の毛は神々しい金髪色に、目の色も、白から金に変わった。

その変わった眼で敵を見抜くと、一瞬、風の音と共に、一体のラビットユニコーンが倒れた。

手には弓矢、あまりにも早すぎてチャイン達は何が起きたか分からなかった。

周りのラビットユニコーンは「仲間がやられた」と思い我を戻すと、アンに向かって一斉に襲い掛かる。

それに対してアンは、一度矢を放ち、横にステップ、逃げる先に敵がいても、そいつを射抜き、少しずつ間合いから離れ、一体ずつ処理した。

まさに、芸術。

素早い敵、間合いが近い敵、集団、と言った弓使いからしたら迷惑極まりない敵を捌き続ける。

一斉に襲う、タイミングをずらす、フェイント、持てる全ての行動をしても踊るように射られ続ける。

残り十体、五体、そして最後の一体になった。

もう立ってる仲間はいないと悟ったラビットユニコーンは、敵を前にして一目散に逃げだした。

その姿をみたアンは弓を構え...静かに下した。



すとん、っとアンはその場で倒れた。

「...あ、ああ、アン!大丈夫!?」


我に戻ったチェインは倒れたアンに近寄った。

倒れているアンは先ほどの神々しさは無くなり、髪は白色に戻っている。

ただの少女、しかし、先ほどの力は一体...?

考えれば考えるほど分からない、だが、いつまでここにいても仕方がない。

チェイン達は倒れた馬車を立ちなおし、馬と乗客の安否、それらの治療などが終わった後、また馬車を進めた。

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