バンザの街とギルド
山を下りるのに一時間。
そこから途中所でギルドの仮馬を借りた。
昔、飼ってた馬がいたので馬の扱いには少し自信があったが、他の馬に如何せん乗ったことが無く、慣れるまで少し時間が掛かった。
そこから二時間ほど馬で移動し、やっと着いた。《自然の街、バンザ》
アンは街に着くや否や、ギルドに向かって歩き出した。
アンはこの街に実に四回ほど来ており、二回目と三回目の時にギルドの場所は確認したので迷子になる心配はない。
ギルドの中に入ると、外のスッキリとした空気とは違い、酒と汗と魔力に帯びた空気が入ってきた。
と言っても、外の空気があまりにも綺麗すぎるため、ここと比べて不快感を覚えるのは仕方ない。
すると、視線、あまり歓迎されていない雰囲気に思わずたじろぐ、が、ここで戻ると負けた気がしたので、勇気を出して前に進んだ。
おかしいな、ここに来るまで三時間くらい掛かったけど、疲労感はここにいるほうが多い。
「すみません、ギルド登録をしたいです。お願いできますか」
「ギルド登録ですね、了解しました。少々お待ちくださいませ」
受付お兄さんが奥に行き、資料を数枚持ってきた。
登録と同時に説明をしてくれるそうだ、ありがたい。
ギルドに来る依頼は主に二つがあるらしい。
一つが《木》、もう一つが《武》。
《木》は主に採取や調査が目的。
例として、《薬草採取》《傘木採取》《森調査》《洞窟調査》などが挙げられる。
たまに、人探しやペット探しなどもあるらしい。
《武》は主にモンスターの討伐が目的。
例として、《ゴブリン討伐》《シルバーアント討伐》ここ周辺だと《トレント討伐》が挙げられる。
商人やお偉いさんの護衛などもあるらしい。また、ありえないくらいの大群のモンスターや、強力なモンスターが現れた時に緊急依頼というものがあるらしいが、それらも《武》に当たるらしい。
さらに、これらにも難易度と言うものがあるらしい。
《木》は《種》《蕾》《花》の三段階、《武》は《鼠》《犬》《熊》《蛇》《龍》の五段階だ。
《木》の方は《花》に行くほど希少だったり遠かったり、調査する場所が危険だったりする。
《武》の方は《龍》に行くほど危険で、そのレベルだと災害レベルとも言われている。
まぁ、《龍》や《花》は滅多に出ないのでそこまで身を構える必要はない、一番多いのは《種》と《犬》または《熊》らしい。
お父さんが言うには私の力なら《犬》が丁度いいらしいので、依頼を受ける時はそれを目安にしようかな。
「それじゃあ、ここに名前を書いてくだされば...はい、これで完了です。それではアンさん、このギルドカードを受け取ってください」
受付お兄さんが白いカードを渡してくれた、ここで「いやです」って言ったらどうなるんだろ、なんて考えてしまうのはアンの悪い癖だ。
渡されたカードには。ギルドランク白、依頼受注回数、依頼成功、なんか色々書いてあった。
「それは貴方のギルドカードです、上の方に書いてあるギルドランクというのは貴方の成長過程、下から《白》《黄》《青》《赤》《黒》の順番で組まれております。依頼の受注回数が多かったり、高難易度の依頼をクリアしたりするとランクが上がっていきます。今はまだ《白ランク》ですが《黒ランク》目指して頑張ってくださいね」
「あー...はい、頑張ります」
あまりにも説明が長く、アンは終始睡魔と戦っていたため適当に返事を返した。
とりあえず、いますぐ寝たい。
「ついでなんですが、宿はありますか?こことは少し遠い来たので少し疲れがありまして」
「宿ですか、ギルドには宿というものがまぁまぁ安いお値段でありますが、うちはかなり古くても脆く、ちょっと騒音も聞こえるんですよね。街に【レブルの宿】という宿屋があります、お疲れでしたらそちらの宿に泊まった方がいいかもしれません」
「あーもう、何から何までありがたいです。これ、少ないけどチップです」
「アンさんありがとうございます。これで今日も頑張れそうです」
アンは五百蓮を渡した、金は渡せるときに渡せとお父さんが言っていた。
多分、こういう時に使えば色々と得なんだろうな。
アンはそのままギルドを後にした。
そのまま宿に向かおうとしたが、馬を返しにギルドの裏に行ったり、売店のおばさんに話しかけられたりと、宿に向かう時間が少し遅くなった。
宿について、部屋に入り、やっと一休み。
いままで、人と魔の血が通った私は決して受け入れられないと思っていたが、そんなことはないらしい。
ギルドのお兄さんは優しく、売店のおばさんも気軽に話しかけてくれて、他の人もそんな感じだった。
「一人旅、やってよかったぁ」
アンはそう言って瞼を閉じた。
これからの旅もきっと暖かいと信じながら。




