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野花  作者: グレオちゃん
3/4

雨は良くも悪くもあるそうです

「ザーザーザー…」

「………」

雨。昔は好きだった。けど今は嫌い。すっごく寒いし、びしょ濡れだし。屋根って本当は凄かったのかも。

「ゴロゴロ……」

「ぴゃあ!」

雷だ!怖いよ…。もう…。体育座りをしながら、頭を抱えて縮こまる。一番落ち着く姿勢。少しは寒くなくなる。このまんま止むまでこうしていようかな?

「おうちがあればなあ…」

プルプル震える手足を抑えながら、そんな事を思ってみる。それに、忘れてたけどもう四日間何にも食べてない。お腹も空いてるの。だめだ。ここに居ても死んじゃうだけだ…。ゆっくり立ち上がって、歩き始めた。ダメ元だと困ちゃうけど、草か何かあれば大丈夫。

「あった。」

こんくりーとの割れ目から生えてる麦みたいな草。これで大丈夫。

「ぶちぶちぶち。」

やっぱり道の草の中だとこれが一番食べられる。結構しめってるけど、喉も潤せて良い。

「…っと。」

雨でつるりと足を滑らせちゃったけど、周りに誰も居ないから恥ずかしくなかった。それより、裸足だから切れちゃって無いかちょっとだけ不安だった。大丈夫みたい。

「クチュン!」

やっぱり寒いかな。人もぜーんぜんいないし。

「……?」

あんな建物、あったかな?すっごくぼろぼろ。立て札に、かいたいよていって書いてる。今夜くらいなら雨宿りしても良いよね?良いかな?

「おじゃまします……」

薄暗いし、ぽつんぽつんって雨が入ってきちゃってるけど、お外よりは大丈夫そう。明日なくなっちゃうなんて、もうちょっと早く見つけてたら良かったな。そろそろ眠くなってきちゃった。

「ふわぁ〜…おやすみ…」

なんだろう…壁に囲まれるって、なんだか安心するね…。

「おい!そこで何をしている!」

「……?」

まだ夜中なのに、何だろう…?おばけさんかな…?

「ここは立ち入り禁止の筈だ!さては工作員だな!?」

「こーさくいん?」

うう、懐中電灯が眩しいよ。

「ごめんなさい…。ただ、ちょっとここでねんねしてただけなの…。迷惑なら、すぐにどっか行くから。」

「……」

あーあ、結局今日もお外お外か。真っ暗だから、街灯の近くが…

「待て。」

「?」

よく見たら、普通の軍人さんだ。どっちでも良いけど。

「ビリ!」

「!」

ワンピースの布をちょっとちぎられちゃった。大事なのに…

「長い間かけて土埃が染み込んでいる…よく出来た細工か、本物だろうな。」

「うう…」

少し涙が滲んじゃう。家だったところから必死にはってでてきた時から、ずっと着てる。最初はパジャマだったんだけどね、今はずっと着てる。大事な物だったんだけどね。

「うええええん!!」

「あーもー!悪かった悪かった。たく…巡回初日でこれだよ…ホームレスのガキが住み着いてる事くらい報告しろよ…。」

「うわああああん!!」

「たく、頼むから静かにしてくれよ!俺が悪かったから!」

「うう…くすん…」

軍人さん…。若い人みたいだけど、お顔におっきな傷が付いている。

「はあ、んとな、ここは元々ホテルだったんだけどな、空爆で廃墟になって、ちょうど明日ここをブチ壊して、弾薬工場にするのさ。」

「うう…うん。」

どっちみち、今日だけだったし。でも…

「……」

ワンピース……。

「たく…それかよ。仕方ねえなぁ…。」

軍人さんはポケットから飴ちゃんを出して、リリに渡してくれた。

「!」

急いで包みを開けて、口の中に放り込む。

「ガリガリバリバリ…」

「美味いか?本当に腹減ってたんだな。」

「うん…おいし…」

すると、向こうから足音が聞こえてくる。

「早く行け。引き止めて悪かった。急いで。」

「うん。」

急ぎ足、雨はいつのまにかあがっていた。

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