雨は良くも悪くもあるそうです
「ザーザーザー…」
「………」
雨。昔は好きだった。けど今は嫌い。すっごく寒いし、びしょ濡れだし。屋根って本当は凄かったのかも。
「ゴロゴロ……」
「ぴゃあ!」
雷だ!怖いよ…。もう…。体育座りをしながら、頭を抱えて縮こまる。一番落ち着く姿勢。少しは寒くなくなる。このまんま止むまでこうしていようかな?
「おうちがあればなあ…」
プルプル震える手足を抑えながら、そんな事を思ってみる。それに、忘れてたけどもう四日間何にも食べてない。お腹も空いてるの。だめだ。ここに居ても死んじゃうだけだ…。ゆっくり立ち上がって、歩き始めた。ダメ元だと困ちゃうけど、草か何かあれば大丈夫。
「あった。」
こんくりーとの割れ目から生えてる麦みたいな草。これで大丈夫。
「ぶちぶちぶち。」
やっぱり道の草の中だとこれが一番食べられる。結構しめってるけど、喉も潤せて良い。
「…っと。」
雨でつるりと足を滑らせちゃったけど、周りに誰も居ないから恥ずかしくなかった。それより、裸足だから切れちゃって無いかちょっとだけ不安だった。大丈夫みたい。
「クチュン!」
やっぱり寒いかな。人もぜーんぜんいないし。
「……?」
あんな建物、あったかな?すっごくぼろぼろ。立て札に、かいたいよていって書いてる。今夜くらいなら雨宿りしても良いよね?良いかな?
「おじゃまします……」
薄暗いし、ぽつんぽつんって雨が入ってきちゃってるけど、お外よりは大丈夫そう。明日なくなっちゃうなんて、もうちょっと早く見つけてたら良かったな。そろそろ眠くなってきちゃった。
「ふわぁ〜…おやすみ…」
なんだろう…壁に囲まれるって、なんだか安心するね…。
「おい!そこで何をしている!」
「……?」
まだ夜中なのに、何だろう…?おばけさんかな…?
「ここは立ち入り禁止の筈だ!さては工作員だな!?」
「こーさくいん?」
うう、懐中電灯が眩しいよ。
「ごめんなさい…。ただ、ちょっとここでねんねしてただけなの…。迷惑なら、すぐにどっか行くから。」
「……」
あーあ、結局今日もお外お外か。真っ暗だから、街灯の近くが…
「待て。」
「?」
よく見たら、普通の軍人さんだ。どっちでも良いけど。
「ビリ!」
「!」
ワンピースの布をちょっとちぎられちゃった。大事なのに…
「長い間かけて土埃が染み込んでいる…よく出来た細工か、本物だろうな。」
「うう…」
少し涙が滲んじゃう。家だったところから必死にはってでてきた時から、ずっと着てる。最初はパジャマだったんだけどね、今はずっと着てる。大事な物だったんだけどね。
「うええええん!!」
「あーもー!悪かった悪かった。たく…巡回初日でこれだよ…ホームレスのガキが住み着いてる事くらい報告しろよ…。」
「うわああああん!!」
「たく、頼むから静かにしてくれよ!俺が悪かったから!」
「うう…くすん…」
軍人さん…。若い人みたいだけど、お顔におっきな傷が付いている。
「はあ、んとな、ここは元々ホテルだったんだけどな、空爆で廃墟になって、ちょうど明日ここをブチ壊して、弾薬工場にするのさ。」
「うう…うん。」
どっちみち、今日だけだったし。でも…
「……」
ワンピース……。
「たく…それかよ。仕方ねえなぁ…。」
軍人さんはポケットから飴ちゃんを出して、リリに渡してくれた。
「!」
急いで包みを開けて、口の中に放り込む。
「ガリガリバリバリ…」
「美味いか?本当に腹減ってたんだな。」
「うん…おいし…」
すると、向こうから足音が聞こえてくる。
「早く行け。引き止めて悪かった。急いで。」
「うん。」
急ぎ足、雨はいつのまにかあがっていた。