魔導士の冴えた?やり方
輸送用の走空車の中は扉を閉じられると光が入らない為、真っ暗で何も見えない。
「光よ(ライト)」
カイが呪文で辺りを照らすと荷台の中の様子が見て取れた。
荷台の中でハロルドは膝をつきうなだれている。
明かりがついたことでカイの姿を視認できたのか
「カイ、・・・・・すまん。」
と頭を下げて謝罪した。
「スコルナ伯がまさかこんな事をするとは考えもしなかった。」
スコルナ伯の無理難題は今に始まった事ではない。
領主に直接手をあげる事があるとは夢にも思っていなかったようである。
「リュファス殿が何か策を講じてくれる様なのだ、しばらく我慢して様子を見よう。」
「リュファス殿が?」
カイはその話を聞いて少し訝しんだ。
あのリュファスと館に入る前のスコルナ伯は走空車を気に入っていた。
だがその態度が豹変したのはその後、その中で何かがあったに違いない。
カイにとってリュファスの言葉を信じることは出来なかった。
それどころかもっと厄介な事、まとめて始末されることも考えられる。
だが、問題はハロルドだ。
リュファスを信じ切っている節がある。
「兄さん。ここは待つ以外の対策もするべきだと思うよ。」
「対策?何か出来るのか?」
「そうですね。取り敢えず外から干渉されない様にしましょう。」
カイはそう言うと天井の魔法陣に細工を始めた。
「カイよ。いったい何をする気なのだ?」
魔法陣に細工を始めたカイを見て心配になったのか、ハロルドは尋ねた。
「範囲と効果を少し変えます。」
「範囲と効果?」
「ええ、範囲を少しだけ大きく、扉の部分が入るようにし、閉鍵の効果を混ぜます。」
そう言うとカイは鞄から新たな魔法陣の描かれた板を取り出し天井に取り付けた。
「後は限定空間の条件の書き換えだな。」
「????」
ハロルドにとってカイの言っていることは全く理解できない未知の事柄である。
「あ、そうか。兄さん。
この魔法陣は“閉鎖空間の場合”に発揮する様になっている条件を
“扉が閉められている時“に書き換えます。」
「ふむふむ」
ハロルドは興味深そうに聞いている。
「扉を閉めている限り、魔法陣の効果が発揮されます。
一つは追加した閉鍵、それに当初かある静寂と強化版の時間遅延。」
「時間遅延?」
「内部の時間の流れを百分の一にします。」




