道中の人々
カイ達の乗った走空車捜索の為、ディンカ達三人とロインは走空車に乗り込んだ。
操縦席に座るスタンが走空車の点検をしながら訊ねた。
「ロインさん。スコルナ領はどの方角にありますか?」
彼は真直ぐスコルナ領へ進むつもりの様だ。
「ちょっと待って、スタン。」
ここへ来てあまり意見の無かったバハルがスタンを引き留める。
「まっすぐ向かうのは得策とは思えないわ。
途中の村や町で走空車について尋ねてみれば?」
バハルの提案にディンカが同意する。
「そうだな。ロインさんがいると言っても、“知らぬ存ぜぬ”で通されないとも限らない。
やはり、カイさんの乗る走空車の足取りを押さえる必要があるな。」
ディンカ達の話を聞いたロインが
「ですが、ハロルド様やカイ様に何かあれば・・・。」
「現状カイさんやハロルド様がどうなっているかは判らない。
でも、だからこそ、彼らの足取りを掴むことが先決なのです。」
と、ディンカは言い切った。
サーバル領からスコルナ領までの道中にはいくつかの町や村が点在している。
町や村の間には麦畑や野菜畑が広がっており、時々そこで作業をしている人々が見える。
穀倉地帯の様によく肥えた土地ではないが、領内の生活に困らないぐらいの生産性は有るとロインは語った。
走空車が上空を通ると彼らは一様にこちらを見上げている。
「俺達が通るとこちらをよく見ているな。
確かに走空車は珍しいがどういうわけだ?」
操縦しながら外を見ていたスタンが疑問を口に出した。
「それは、この地方には時々ドラゴンが空を飛ぶことがあるからですよ。」
「「「ドラゴンだって?!」」」
ロインが言ったことに三人とも驚く。
「たしか、サーバル領の近くのシラアエガスにはドラゴンが住むと言われていた様な・・・。」
バハルがシラアエガスの話を思い出した様だ。
「はい。実際、住んでいるのです。」
ロインの話によると、シラアエガスに関して世間で話されている通り、ドラゴンが住んでいる。
それだけでなく、雪エルフの里もあるし、雪男もいるらしい。
そして、住んでいるドラゴンだが、一匹ではない。
シラアエガス頂上付近ではドラゴン達の住処があると言う。
「そんなわけで、時々ドラゴンが飛ぶこともあるのです。」
「でも何故、ほとんどみんな空を見上げるのだ?」
ディンカの言う通り、ドラゴンが時々飛ぶだけでは説明できない。
「ドラゴンは飛んだ時に背中についた氷や鱗を落とすことがあるのですよ。」
ドラゴンの体は大きいだけあって、その体から落ちる氷や鱗はかなりの大きさになる。
それが当たれば大惨事だし、落ちてくる氷や鱗はひと財産なるのだ。
だがら、空を見上げる様になったのだと、ロインは説明した。
「でも、空を見上げる癖があるなら好都合じゃないか?」
ディンカは皆にそう言った。
「カイさん達の乗った走空車を見ている可能性が高いじゃないか。」




