魔道士は疲れて帰る
ダンジョンの攻略から3ヵ月過ぎた。
その間に有ったことを挙げると時間がいくらあっても足りない。
カイはたった今、王都から帰ってきたばかりだった。
「王都の式典って、なぜこんなに疲れるんだ?」
「パレードから始まって、勲章及び賞与の授与、王侯貴族の言葉、パーティ・・・」
「でも、パレードには出なかったのでは?」
フィリアが紅茶を入れながら尋ねた。
「そこはそれ、全部ギルド長に任せたからね。」
「ギルド長ですか・・・」
「ま、地味な魔道士より可愛らしい猫魔術師の方が見栄えが良いからね。」
「確かに。ギルド長は可愛らしいですからね。」
「その後の勲章の授与は予想通りだったんだけど、パーティがね・・・。」
「貴族のパーティなら美味しい物もたくさん出たのでは?」
「出ていたけど、食べる暇がなかった。
走空車を買いたいとか譲ってくれとか、中には献上しろと言うのもあったな。」
「献上って、何処の誰ですか?そんな無道なことを言う人は!」
「確か、スコルナ伯爵だったな。いつまでも貴族特権が使えると勘違いしている人だよ。」
「スコルナ伯爵ですか。」
「その時はドレッドさんに助けられて何とかなったけどね。」
「気になるのなら、ギルドで何か調べましょうか?」
「あ、いや、それには及ばないよ。スコルナ伯爵は知っているし。」
「伯爵をですか?」
「ああ、実家がスコルナ伯爵の寄子なんだ。」
「ええええええええ!カイさんは貴族さま?」
「貴族と言っても男爵の五男だし、野に下ったらから平民と同じだけどね。」
「でも、・・・そうですよね。よく考えたら、カイさんは魔道士なんだし、・・・。」
フィリアの言う通り、魔道士になるにはそれなりの教育を必要とする。
そんな教育を受けさせることが出来るのは、貴族か商人しかいない。
「と言うことは、カイさんが宮仕えを嫌がる理由は、それを見ていたからなんですね。」
「ま、確かに貴族間を東奔西走する父親を見ていたこともあるかもね。」
「それを踏まえても、スコルナ伯爵の様な面倒ごとに関わる貴族って奴は御免被りたいね。」
それを聞いたフィリアは少しホッとした表情を浮かべた。
一方、スコルナ伯爵領
「全く、あ奴は!貴族を何だと思っている!」
スコルナ伯爵は王都から帰還し辺りに怒鳴り散らしていた。
「聞けば奴の実家はワシの寄子じゃないか!」
「確かサーバル男爵でしたか。」
スコルナの近くに控える中年の男がそう答えた。
「そうだ、寄子ならワシに真っ先に持って来るべきだろう!」
「走空車とはそれ程までの物ですか?」
「あの様に早く動け高く飛べる物は貴族だけが持つべき物なのだ!」
「・・・それは素晴らしい物の様ですね。」
中年の男には思う所があるようだがそれを顔に出さない。
「そうだ、そのサーバル男爵を呼べ!
其奴から走空車を献上させるのだ!」




