魔導士の方法、その1
カイはテントにあるテーブルに広げられた地図を前に説明を始めた。
「まず、このダンジョンの通路ですが、走空車が走る為の幅が十分にあります。」
「そうだな、俺達もボス部屋までは走空車を使っている。」
「という事はボス部屋までのルートと時間は?」
「ルートは少し複雑だが時間は・・・10分ぐらいか。」
「10分か・・・部屋の大きさが50m四方、ただ部屋の入り口が少し狭い。
少し広げることは出来ますか?」
「広げる?どのくらい?」
「一回り大きく。」
「だが、あまり大きくできんぞ、広げすぎると奴が出てくる。」
「それだけあれば十分です、その次に・・・」
二時間後、カイ達は走空車でボス部屋の前まで来ていた。
ボス部屋の入り口は一回り大きく開けられ走空車が通ることが出来る。
「大きさはきっちりした物ですね。」
「とうぜんよ。内の魔術師の腕がいいのよ。」
とビートルスキンのマスター、ラズが答える。
黒いローブの間から見える真っ赤な服は体にぴったりとフィットする物で
そのわがままボディとも言える肢体を覗かせている。
(チラチラ見える分、実にけしからん。女マスターはスタイルのいい人が多いな。)
「カイ。よそ見しすぎ。」
「イエイエ、ルリエルサン、ソンナコトハアリマセンヨ。」
ルリエルはカイやフロームと同じ班分けで特殊作戦を遂行する。
他の人員はボスを引き付ける役だ。
「よし、準備は良いか。」
「「「「応!」」」」
「全員突撃!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおお!」」」」
金属鎧と大盾と言う、重装備に身を固めたドレッドたちがボスに突撃する。
その後ろから、同じ様に金属鎧に盾の重装備の僧侶が補助をする。
防御を重視している為の重装備だ。
これは死なない為の編成であり装備だ。
「グファグファ。オデさまはサイキョウデムテキダ。ナンニンキテモムダゥアダ!!」
巨人、グレンデルが棍棒を振るう度に前衛の一人がノックバックされる。
だがその隙間は後ろに待機している予備員がすかさず埋める。
「よし。頃合いだ。フローム、煙幕だ!」
合図と共に煙幕が撒かれる。
「ルリエル!」
「精霊よ!我らの姿を隠したまえ。広域透明化」
ルリエルの呪文と共にカイ達の姿が消え見えなくなる。
グレンデルとの戦闘を続けるドレッド達の横を静かに通り抜け奥の部屋を目指す。
「予想通り、ダンジョンコアだ。」
「おい、ダンジョンコアに触れるとダンジョンに取り込まれて・・・」
フロームが疑問に思ったのか問いかけてくる。
「それはダンジョンマスターがいない場合ですね。」
「いない場合?」
「ええ、ダンジョンコアは生物が触れるとその者をダンジョンマスターに変異させます。」
「そうだな。だからコアに触れるのはダンジョン探索においてタブーとされている。」
「でもそれは、ダンジョンマスターが現れる前までです。」
「?」
「ダンジョンマスターはダンジョン一つにつき一人しか存在しないし、出来ない。」
そう言うとカイはダンジョンコアに手を当てた。
「お、おい!!」
「大丈夫です。この様に取り込まれることなく触れることが出来ます。」
そう言うとカイは鞄から大きなくるみ割り機こと“ダンジョンコア割機”を取り出した。
カイ達はダンジョンコアを割り機にセットし固定する。
割り機は走空車製作の過程に出来た浮き板に載せ浮かせている。
「地上に運び出します。ここでは使えませんがゆっくり運び出します。」
「前方、煙幕が薄れつつあり」
フロームは斥候らしく前方の状況を説明する。
「精霊よ!我らの姿を隠したまえ。広域透明化」
再び、カイ達は透明化する。
(よし、ゆっくり歩くぞ。)
だが、コアが奥の部屋を出た瞬間、
「!!!ダデガイル?」
グレンデルはコアが奥の部屋から出ると気付いた様だ。




