森の異変
カイがFカート用の鋼材を作っているその時、輝く星の森の南側、
丁度、隣町であるミストとの中間で異変が起こりつつあった。
最初にその異変に出くわしたのはダンジョンの探索に来ていたミストの町の冒険者であった。
彼らは四人一組で探索に当たっていた。
「急遽、うちらのギルドに探索が回ってきて運が良かったな。」
このパーティのリーダーらしい男が廻りを警戒しながら言った。
槍騎兵のオースティンだ。
短く持った十文字槍で道を確保しながら進んでゆく。
「この森のダンジョンの探索は簡単なのに実入りが大きいですからね。
でも、リモーデのギルドは何故譲ってくれたのです?」
隊列の中ほどを行く魔術師のティレスが尋ねた。
魔術師として、実入りが大きい物を譲る理由を知りたかったのだ。
「何でも魔導士をギルド全員で手伝うそうだ。」
「噂の魔導士さんの手伝いか・・・なるほど。
確か魔力焜炉の開発に関わっているとかなんとか・・・」
ティレスは魔導士が絡んでいると聞き納得したようだった。
「お、そうだ。
錬金術ギルドからダンジョンコアの欠片を優先的に回してくれと言われていたな。
ミストでも魔力焜炉を作るそうだぞ。」
「それは良いね!ぜひともうちらも・・・」
女遊撃士のリラが魔力焜炉と聞き、話に加わった。
彼女はこのパーティの料理番でもあるのだ。
「!!!待て、静かに・・・。」
オースティンが全員に制止を命令する。
「見ろ。ゴブリンだ。
それに、あれを見ろ。」
オースティンが指し示す先を見たティレスが言った。
「おい大変だ。バグベアとゴブリンシャーマンがいるぞ。」
少し深くなったダンジョンはゴブリンの様な低級の魔物を外へ出す。
バグベアがいる場合、更に深くなり、ゴブリンシャーマンの場合は更に深くなる。
「ちっ。ゴブリンシャーマンがいるのじゃ俺達だけじゃダンジョンの攻略は出来ない。
あいつらを倒してギルド長に報告だな。」
彼らにとって、バグベアやゴブリンシャーマンは難敵ではない。
むしろ簡単に倒せてしまう部類だ。
彼らはゴブリンシャーマンからダンジョンを推し量ったのだ。
六日後、ダンジョン攻略に編成された“デッドリーロール”の面々が集まった。
その彼らが見たのは、変わりゆく森とダンジョンの近くに出来た瘴気漂う沼であった。
「僅か一週間でここまで成長する物なのか?」
「判りません。ダンジョンコアにそれだけ欲望を持った者が触れればあるいは・・・。」
ダンジョンはダンジョンマスターの業や欲の深さによって拡大する。
更にそれが歪であるほどダンジョンが複雑化すると言われている。
そのダンジョンが彼らの前にポッカリと大きな口を開けて冒険者たちを誘っているのだ。
 




