魔導士は大人買いをする
ドレッド達は野営地を出た後、大修道院へ行き、その後王都に帰ると言って出発した。
行程としては一ヵ月の道程である。
王都からリモーデまでは一ヵ月。
王国に収集されるのが嫌なら二ヵ月の間に完成させ、大体的に広める必要がある。
カイはFカートを走らせながら今後の計画を考えていた。
カイはリモーデへ帰るなり、ギルドに駆け込みギルド長の部屋に訪れた。
「ギルド長、話が・・・いや、依頼がある。」
「依頼?」
「ギルドメンバーでは依頼できないのか?」
「いや、そんなことないにゃ。で、なにかにゃ?」
「ギルドのメンバーを十人ばかり貸してほしい。
目的地はアインヴィルだ。
そこへ行って必要な材料を取って来てほしい。」
「?材料を取って来るなら十人もいらないにゃ?」
「いや、取って来てもらうのはミスリル鉱石とオリハルコン原石だ。」
「それでも十人は多すぎ無いかにゃ?」
「ああ、ミスリルとオリハルコンは合計で1tほど必要だから。」
「い、1t!!」
ヴァニアが驚きの声を上げる。
ミスリルの場合、10kgもあれば全身鎧を作ることが出来る。
その場合の価格で1万GPは必要になる。
オリハルコンの値段もミスリルと似たようなものだ。
それが今回、1tつまり100万GP必要となる。
「希少金属だけど、アインヴィルなら集まるにゃ。
でもそんな大金・・・・あるにゃ。」
「ええ、あります。護衛も含めて運搬にギルド員が必要なのです。」
「ふむ、アインヴィルだと往復で十日。一人一日10GPだから1000GPにゃ。」
「後、ガミラとグメルの二人には炉を作ってもらいます。」
「炉?」
「ミスリルとオリハルコンを溶かすための錬金炉です。」
「ふむむむ、本格的にゃ。でも何を作るにゃ?」
「Fカートを大量に」
「あれをか?でもなぜにゃ?」
「軍事目的で徴発され一般には広まらない可能性があるのです。」
「ふむふむ、言われれば確かにそうにゃ。
兵員を素早く大量に輸送するのにも使えるにゃ。」
「ですので、徴発される前に広めてしまおうと。」
「にゃ?」
「個人が所有する2、3台なら徴発は簡単ですが、
多くの人が所有する多数の物ならば徴発は出来ないのではないかと。」
「ふむ、つまり、みんなが知っている状態にするのかにゃ・・・・・・判ったにゃ。
今月はダンジョン探索担当だったけどミストのギルドに頼むにゃ。」
そう言うとヴァニアはミストのAランクギルド“デッドリーロール”へ依頼状をしたためた。
「でも今からじゃ十日はかかるのでは?」
「大丈夫にゃ。この時の為にギルドには鳩が居るにゃ。
おーいいにゃ。」
と言って呼び出しのベルを鳴らす。
慌ててやって来たギルド職員に指示を出すとカイに向き直り
「ギルドとして全面的に協力するにゃ。」
ヴァニアそうカイに告げた。
だがこの判断がギルドの崩壊を救ったとは今はまだわからなかった。




