悪因悪果
ギルド長のドレッドは城跡にある広場に立ち部下からの報告を受けていた。
「北側、生存者三名。いずれも近隣の村からさらわれた娘達だと思います。」
「西側、生存者無し。」
「東側、生存者十名うち七人は盗賊。」
「城跡内に生存者がいないことを確認しました。
ギルド長、盗賊は合計七名です。」
「よし、盗賊たちは全て捕縛したな。いったん野営地へ戻るぞ。」
ドレッドはカイ達の方へ向くと
「すまないが、野営地まで同行願う。
出来れば、保護した人たちをそちらのFカートに載せることは出来るか?」
「合計六名ですね。私とルリエルは御者台に乗りますので問題ありません。
早速、乗ってもらいましよう。」
「ありがとう。感謝する。」
ドレッドたちは盗賊たちを数珠つなぎにして野営地まで引っ張っていった。
「?!」
「どうした?ヴァンガード?」
「いや、こっちを見ている奴がいたのですが、どうも手負いの獣みたいなので・・・。」
「こちらに来そうか?」
「それは大丈夫でしょう。かなりの深手を負っている様です。
あれはもうじき死にますね。」
「なら障害にはならないな。」
「はい。」
ヴァンガードが見つけた手負いの獣、アウスゼンは森の影からカイ達を見ていた。
(!!あいつは・・・くそっ!あいつめ!あいつが全てを企んだのかっ!!)
(ちくしょう!あと少しの所で!)
(貧弱な魔法使いふぜいがっ!)
アウスゼンはカイ達から逃げる様に森の中をさまよう。
(あいつは偉大な俺サマの才能にしっとしているんだ!!)
(そうだ、そうに違いない!!)
(ちくしょう!)
(あの横にいるエルフもだまして利用する気だ!)
(あいつはそういう奴だ、魔法使いはそういう奴らだ!)
「ぐはっ!」
胃から血が這い上がって来たのかアウスゼンは吐血する。
腹を刺されて三日は経っているが、ここまで生き延びたのは流石にタフな戦士であると言わざるを得ない。
そんなアウスゼンの命も今尽きようとしていた。
そんな彼の前を誘うかのようにぽっかりと黒い穴が出現した。
黒い穴の奥にぼんやりと明滅する宝石のような物が見える。
アウスゼンは誘われるかのようにその宝石に近づいてゆくのであった。




