懲罰
盗賊たちは、街道から少し離れた森の中で待ち伏せしていた。
森の中の道は長い。
その途中で必ず野営をしなければならない。
王都から現金を輸送する馬車が野営中に襲いかかる手はずになっている。
当然、護衛の冒険者は皆殺しの予定だ。
そして今、冒険者の護衛を先頭に馬車がやって来た。
頑丈そうな馬車は鉄板で補強されているらしく黒くどっしりとしている。
そんな馬車が合計三台。
先頭には馬に乗り白銀の鎧に身を包む冒険者三名。
かれらは馬車の先頭に馬を走らせ前方を警戒する。
それぞれの馬車の両脇にも白銀の鎧を着た冒険者が自ら乗る馬を馬車と並走させている。
(あ、あのおとこは!!!)
冒険者たちの先頭に立つ男を見たアウスゼンは目を見開いた。
数か月前、アウスゼンの新生フェールズ入りを拒んだ上、自分に恥をかかせた男、
元王国騎士団長のドレッドその人だった。
(まずい。あの男が相手では俺達に勝ち目はない!!)
元騎士団長だけあって戦歴は驚嘆する物があった。
“曰く一人で千人に相当する”
“曰く防御を貫けた者は無い”
“曰く王国に二人といない人物である”
Etc.etc
挙げれば切りが無いほどの人物である。
アウスゼンは自ら体験したことで、防御力の高さをよく知っていた。
だから、咄嗟にその言葉が出たのは無理もない事だった。
「ダメだ!ボス!あいつには勝てない!!」
「なんだと?!もう一度言ってみろ!」
アウスゼンの言葉にカールは機嫌が悪くなる。
「何度でも言ってやる!
あの先頭にいる男は元王国騎士団長だ!
俺達では勝てる相手ではない!!
俺は降ろさせてもらう!!」
その言葉を聞いたカールの表情の怒りが消え無機質なものになる。
「・・・そうか。判った。ならサッサっと行きな。」
「ああ、そうさせてもらう。」
アウスゼンはその場から立ち去ろうとした。
そのアウスゼンをカールが呼び止める。
「そうだ、アウスゼン、忘れ物だ。」
ドス!
「ぐはっ!な、なにをする!」
グリュッ
アウスゼンの脇腹にダガーを突き立て捩じる。
カールがダガーを引き抜くとアウスゼンの脇腹から血が噴き出した。
「ぐはぁぁぁぁ!!」
「くくく。どこへ行ってもいいぜ。その傷で町にたどり着けるのならな!」
「よく聞け野郎ども。
俺達に獲物を前にして怖気づく軟弱者はいらねぇ。
たとえ、それが目にかけていた奴でも俺は容赦しねえ。
判ったな。」
無言でうなずく盗賊たち。
そんな盗賊を尻目に、アウスゼンは抉られたわき腹を押さえながら森の奥へ消えていった。




