盗賊達の皮算用
「くひっ。よぉ、兄弟。ボスが呼んでるぜ。中央広場だ。」
薄汚い男、セプトラスはアウスゼンを起した。
部屋は薄暗く獣臭が漂っている。
「ふぁーあ、なんだ?ようやく獲物が来たのか?」
大あくびをしながら寝床から出るアウスゼン。
「くへへ。昨日はずいぶん楽しんだみたいじゃないか兄弟。くひひひひ。」
アウスゼンが出てきた後の寝床には死んだようにぐったりした女が倒れている。
「途中で反応が無くなった。次からもう少しましなのを用意しろ。」
「おいおい、これでも最近さらってきた中でも新品同然だったんだぜ。
もう壊しちまったのか?」
「ふん。」
アウスゼンはセプトラスの言葉を気にも留めていなかった。
盗賊たちのアジトは森林から遠くない位置にある古代遺跡の跡を改造して作られている。
古代遺跡は岩山の上にあり、ここへ向かいう道は細長い一本道。
四方の壁の上には尖塔まで存在する。
そのアジトの真ん中には広場があり、盗賊たちは中央広場と呼んでいた。
その中央広場には三十人ほどの人相の悪い連中が集まっている。
どいつもこいつも数えきれない悪事に手を染めてきたという顔をしている。
「野郎ども!いよいよ獲物がやって来た!」
「「「「「オオオオオオオ!!!!!!」」」」」
「予てからの手はず通り、例の場所で襲撃する!」
「到着は明後日の昼。
警備には王都のギルドふぁ何とかてのが就いているが俺達の人数だ、敵じゃねぇ。
準備を抜かるんじゃねえぞ!!!」
「「「「「ウォォォォォ!!!!!!」」」」」
広場に集まった盗賊たちは思い思いの武器を手に我先に出発してゆく。
少しでもいい場所を取り、少しでも多く獲物をかっさらう為である。
(護衛の数は十人に満たない数と聞く。
それに対してこっちは三十人の大所帯負けるはずがねぇ。
手に入れた大金で王都に返り咲いてやるぜっ!)
アウスゼンは出発してゆく盗賊たちを眺めて悦に入っていた。
「くくくく、ご機嫌じゃねえか。」
アウスゼンに話しかけてきたのは、盗賊たちの首領カールである。
「アウスゼン。お前には期待してるんだぜ。」
カールの言葉通り、アウスゼンはこのアジトに来てから優先的に色々なものが与えられてきた。
食い物でも女でも、である。
「さて、俺達も行こうか。」
「ああ。」
アウスゼンの頭の中には大金をせしめて王都に返り咲く自分の姿しか見えていなかった。
だが、そんな彼の邪な野望はすぐに打ち砕かれるのだ。




