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魔導士は盗賊退治の援護をする

 盗賊を撃退するにあたってディンカは詳しい情報をカイに求めた。


「カイさん。盗賊の情報を。それとこちらには気付いていますか?」


「盗賊たちは全部で十人います。馬車を囲む様に・・・丁度このように。」


 カイは地面に馬車と盗賊たちを描く。


「馬車は森で見通しが効きにくい所で狙われたようですね。おかげで、こちらには気づいていないようです。見張りも立てていません。」


「馬車を襲うのに夢中なのか、付近に魔獣は?」


「見当たりません。見えるのは野ウサギぐらいです。」


「後はどこまで気づかれずに接近できるか、一網打尽に出来ればいいのだが・・・」


「見通しが悪いのでかなり近くまで気付かれずに接近できます。ですが、用心の為に私が付与エンチャントを行いましょう。」


付与エンチャント?」


増強ストレングス伝達ヴィスパー遮音サイレンスです。」


「ほう!それは助かる。流石は魔導士さんだ。」


「あと、私が攻撃に合わせて援護しましょうか?」


「出来るのか?」


「低レベルの呪文ならば。致命傷にはなりませんが陽動としては十分かと。」


「では、併せてお願いしたい。」


 カイは頷くとディンカ達や馬に呪文をかけた。


 増強ストレングスはディンカ達や馬の力や体力を底上げし、伝達ヴィスパーで遠距離での伝達を可能にする。

 そして、遮音サイレンスを馬の足元にかけることでその足音を消す。


「よし。準備は良いな!フローム、スタン行くぞ!!」


「「了解!」」


 ディンカの号令の元、三人は馬を駆けさせた。



「くそ!人数が多すぎる!」


 思わず声を発した貿易商は盗賊に囲まれ窮地に陥っていた。

 馬車を盾に盗賊の攻撃を何とか防いでいるが、それも時間の問題だろう。先ほどまで何とか粘ってくれていた護衛の冒険者、三人の内二人は倒れてしまった。娘のミアだけでもなんとか逃がしたいが盗賊共に隙は見当たらない。

 このままだと捕まってロクでもない目にあわされることは目に見えている。冒険者二人が存命だった時、馬車ごと突撃して活路を開くべきだったか?


 そう考えていた時だった。


ヒュン


 空気を切り裂く音が聞こえたと同時に盗賊の一人が倒れる。倒れた盗賊は頭を矢で射抜かれていた。


ヒュン、ヒュン、ヒュン


 続いて上空から数発の矢が盗賊たちに打ち込まれる。


「ウギャ」

「ひぃ!なんだ!なんだ!?」

「なにっ!新手か、どこから来やがった!!」

「後ろだ!後ろから三人近づいて来る!」

「畜生!見張りはどうした見張りは!!」

「どうする?どうする?どうする?」


 不意を撃たれた盗賊たちは右往左往、混乱しかかっていた。


「馬鹿野郎!うろたえるな!!」


 巨大な肉切り包丁を振り上げながら首領らしい大柄な男が一喝する。

 その一喝のおかげか、一瞬混乱しかけた盗賊たちは首領の一言で正気を取り戻した。


「たかが三人だ。問題あるめぇ!」


「野郎ども、あの三人も畳んじまいな!あの後ろには別の獲物がいるはずだぜ!」


「あの三人を倒した奴には娘っ子に一番乗りをくれてやる!」


「「「「おおお!」」」」


 首領の一言で活気づく盗賊たち。

 我先に三人に向かって襲い掛かろうとした、その時!カイは使い魔を通し呪文を唱えた。


「我願う、茨の蔦よ、あまねく広がり絡み取れ!」


絡む茨インボルブ・スローン!!」


 地面から伸びた無数の蔦が盗賊たちに絡みつく。蔦にある無数の棘は盗賊たちの動きを封じ込めた。


「げぇっ!なんじゃぁこりゃぁ!!」

「痛ェ痛ェ」

「棘が絡みついて動けねぇ!」


トス!トス!トス!


 茨が絡みついて動けない盗賊は単なる射的の的でしかない。盗賊たちはディンカ達により一掃されてゆく。


「畜生!魔法使いも居やがるのか!」


 盗賊の首領だけあって、茨の蔦程度では足止めにはならない。


「野郎どもずらかるぞ!」

「でもボス。もう少しで獲物が・・・」

「馬鹿野郎!魔法使いなんか相手にできるか!」


 呪文の使い手相手に逃げるならば絡む茨インボルブ・スローンを使われる前に逃げるべきだった。

 その絡む茨インボルブ・スローンによってできたわずかな時間がディンカ達の接近を許すことになる。


「チッ!もう来やがった!!」


 舌打ちし腰だめに巨大な肉切り包丁を構える。大きな体格を生かしたどっしりとした構えだ。

 だが、盗賊程度では、呪文で強化された戦士に勝つことは出来ない。


ザン!!


 ゆらりとディンカが動いたかと思うと、一合もしない内に手首から切り落とされた。


「グギャハッ!俺の手がっ!!だれか俺を助けろ!」


 首領は必死で切り落とされた腕を抑える。その額には脂汗が浮かんでいた。

 周りを見ると生き残った手下のほとんどは絡む茨によって捕縛されるか、ディンカ達に倒されるかしていた。



「ありがとうたすかりました。」


 助けられた貿易商はゆっくりと、しかし警戒しながら近づいて来る。九死に一生を得たとはいえ、まだ安心できる状況かどうかわからない。

 彼の警戒はもっともなことだと言える。その後ろには貿易商の服の裾を掴む少女がいた。

 貿易商の娘だろうか?


「我々が来たからにはご安心ください。追って仲間がやって来ると思います。」


 ディンカは警戒を解かない貿易商に声をかける。


「仲間の魔導士がこの辺りを見張っています。盗賊共は一切近づかせません。」


「魔導士がいるのですか!」


 魔導士と聞いて貿易商は声を上げた。

 王都と違いこの辺りで魔導士は珍しい存在なのだ。


「失礼しました。私は貿易商人のサウル、そしてこちらは娘のミアです。」


 サウルがお辞儀をするとミアと呼ばれた娘もお辞儀をする。年の頃は14歳ぐらいだろうか?ローズブロンドの長い髪が印象的なかわいらしいお嬢さんと言ったところである。

 だが、すぐにサウルの影に隠れてしまった。先ほどまでの恐怖がまだ残っている為かもしれない。

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