魔導士は漁村に着く
北の辺境であるリモーデ。
リモーデの西側は荒野が広がっており、土壌が極端に痩せている為、雑草、たまに灌木がある程度だ。
その荒野を西へ、徒歩で一週間の場所にその漁師町“ウェスリック”がある。
海の傍にある小さな村で50人ほどの人々が住んでいる集落である。
「やれやれ、やっと村が見えてきた。あと少しで到着だぞ。」
馬車の御者台にいたディンカは少し疲れた顔で後ろの人に声を掛けた。
バハルとニライは幌屋根の付いた後席から顔を覗かせ、
「へぇ。小さな村だね、それに潮の香りもする。」
「村に着いたらたっぷりと労わってあげるよ。」
と、頬にキスをする。
「こらこら、イチャイチャするのは村に着いてからにゃ。」
とギルド長のヴァニアが注意する。
「「はーい。」」
「そういうギルド長も、何で乗っているんだ?」
ディンカがヴァニアに問いかける。
「ギルドに人がいない場合、ギルド長が代わりに依頼を受けることがあるにゃ。
丁度、休みが多かったからうちが代わりに依頼を受けることになったにゃ。」
「ついでに、目的地が同じだから便乗しているだけにゃ。」
とヴァニアは依頼の紙をちらりと見せた。
「すみませんね。ギルド長。」
といって、ディンカ達はまたイチャイチャしだす。
「・・・。三人は元気だにゃ。でもフィリアの方は・・・」
「キボチガワヅイ・・・」
「酷い馬車酔いにゃ。カイ、この場合どうすれば?」
「馬車酔いか・・・酔いを直すのは横になって頭を冷やすといいのですが・・・。」
「「じゃあ、あたしら御者席に行くわよ。そうしたら場所が開くから横になれるわよ。」」
「ズミバゼン」
カイはフィリアを横に寝かせると頭に固く絞った手ぬぐいを掛けてやり、
その横でルリエルが涼風の呪文を使い涼しい風を送る。
「気分はどうですか?」
「・・・すこし、ましになったみたい・・・」
「馬車は揺れるから慣れていないと大変ですね。」
「はい。すみません。」
それを見ていたガミラとグメルは
「しかしあれだのう。道が整地されていれば酔わなかったんじゃないのか?」「じゃないのか?」
「そうですね。馬車酔いの原因が揺れですから整地されていればその可能性はありますね。」
「だったら、魔法でドバーンと出来んのか?石の道を作るとか?」「作るとか?」
「それは無理ですね。
魔術で石の道を作るにしても、必ず材料が必要です。
例えば道を作る魔術の場合、術者の近くの地面に穴が開くことになります。
召喚する場合では時間が切れると元の場所に戻ります。」
「そう都合のいい物は無いという事じゃな。」
「はい。」
一行が村に着くと、向こうから少し背の低い小太りの男が駆け寄ってきた。
身長はやや低め、少し頭の毛が薄くなってきている50才ぐらいの男である。
服装は村人にしては良い物を着ている。
「おお!おいでくださいましたか!冒険者殿!・・・違いましたか?」
「ん?冒険者?まぁ、間違いはないが。」
とディンカが返事をすると。
「そうですか!これで村のみんなも一安心です。さ、さ、こちらへ。
詳しい話をいたします。
私はこの村で村長をしています“メイヤー”と言います。」
と小太りの男は名のった
「ギルド長これは?」
ディンカが小声で訊ねる。
「うちが受けた依頼にゃ。このまま案内してもらうにゃ。」
一行は村長のメイヤーが案内する中、村に入っていった。
一つ前の投稿を一日間違えてしまった・・・。
 




