魔導士は現場検証に立ち会う
ダンジョンコアを破壊した現場にはギルド長以下職員数名が来ていた。
コアが完全に破壊されたことの確認と回収が目的だ。現場には砕けたダンジョンコアや鉄片が散乱している。
「うにゃ。完膚なきまでに破壊されているにゃ。」
ギルド長のヴァニアが言う通り、底が破壊されており大鍋は使い物にならない。コアを砕いた代償として大きな穴が開いてしまっている。
「これだけ大きな鍋だと修理も無理だにゃ。他の物はなかったのかにゃ?」
「重く硬いものはこれしかなくて・・・」
「その代わりコアは砕けて、完全に死んでいるにゃ。」
どうやらダンジョンコアは完全に死んでいるようだ。
だが、その代償はとても大きい。カイにとって錬金術用の大鍋は特別に注文した一品だ。カイの希望通り、材料を攪拌しながら魔力を流すことができる様に作られている。ドワーフの匠の手によるもので王都でも入手困難な物なのだ。
「でもまあ、カイ殿は運がいいほうにゃ。」
「???・・・いやいや鍋が壊れるのは運がいいとは・・・」
「錬金術の鍋はドワーフの鉱山で作られているにゃ。」
カイはハッとした顔をした。ドワーフの鉱山はここから馬車で五日の距離にある。そこで錬金術の鍋が作られているのであれば、王都で入手困難になるのも頷ける事なのだ。
「じゃあ、ドワーフの職人に手紙を送って・・・」
「それはだめにゃ。カイ殿は手紙だけでポーションを作って送るかにゃ?手紙を送ってもせいぜい焚き付けにされるぐらいだにゃ。」
確かにヴァニアの言う通りである。錬金術用の鍋、ましてや特注の大鍋。
「直接注文するしかないのか・・・」
「王都では知らにゃいが、辺境では当然にゃ。」
カイは王都と同じ様に注文しようとした。
だが、ここは王都ではない。辺境には辺境のやり方を行わなくてはならないのだ。
「ドワーフの町か・・・。」
「町から五日あれば着くにゃ。ギルドに戻ったら紹介状を書いてやるにゃ。」
「その為にも現場検証とコア回収をしっかり手伝うにゃ。」
やはりタダで紹介状は貰えない様だ。ダンジョンコアは死んだとは言えマナの塊でもあり、精霊石としても加工できる。
「ひと欠片も残さないにゃ!」
カイはため息を一つつくと現場検証と言う名のコア回収に戻った。
ギルドに戻った時にはすっかり日が暮れて夜になっていた。
夜になったリモーデの町はひどく薄暗い。明るい王都に慣れているカイは少し不安になる。リモーデでは“魔道照明”ではなく昔ながらのオイルランタンが使われている。
魔道照明に比べ光量が少ない為、カイの目には薄暗く感じるのだ。
所々明るい店は酒場であろうか?酒をあまり飲むことの無いカイは酒場を通り過ぎて帰路につく。
だが、その酒場。
ギルドに併設されている酒場で、魔導士の同行者を決める大会があることをカイは知る由もなかった。




