魔導士はダンジョンボスと戦う
バハルの号令の下、ボス部屋の扉を開ける。
部屋の中には予想通りゴブリンの集団が待ち構えていた。
前衛に錆びた槍を持つゴブリン三匹。そのすぐ後ろに立つバグベア二匹は棍棒に釘が付いた得物を持つ。他には投石紐を振り回しているゴブリンが三匹。
最後尾に幅広の剣を持つ大柄なモノが二匹。
大柄な二匹は薄汚れた青鈍色の肌で皮鎧を着ている。
「最後尾にホブゴブリンが二匹いるわ!」
バハルはそう叫ぶと持っている盾を構えた。
「不味いな。これでは誰かがダンジョンコアと同調したのか判らないな。」
通常のボス部屋では最後尾にはボスが一匹陣取っている。
今回、最後尾はホブゴブリンが二匹。階層が深くなったダンジョンではボスが二匹組の場合もある。
しかし、その場合のダンジョンは出現して長い年月が経ったものである。今いるこのダンジョンは出現してからそこまでの時間は経っていない。
ボスは別に存在するはずなのだ。
「やれやれ、隠れているのか。」
カイは少し考える。
生命探査や敵意探知は対象が隠れていた場合、何処かにいることがおおよそ判るだけで対象が潜む場所がわかるわけではない。
例えるなら、”たくさんの人が描かれている一枚の紙中から居ると判っている特定の人物を探す。”と言う事に近いだろうか?
「バハル、ニライ、広域呪文を使う。」
「前に出なければいいんだね。ニライ。カバーするわよ。」
「了解。ねえさん!」
そう言うとバハルとニライの二人は持っていた盾を構えゴブリンが打ち出した石を防ぐ。二人が構えた盾の隙間からルリエルが矢を放つ。
「透明看破!」
呪文を唱えたカイの目に透明化の呪文で隠れているモンスターが見えるようになる。
その目には髪を振り乱し襤褸を纏った老婆の姿が写った。
「ハグか!!」
ハグとは人型のモンスターで特定の属性魔法を得意とする。外見は枯れ枝のような老婆の姿をしており、絵本に出てくる魔女の様に見える。
様々な種類が存在し、自らが使う属性魔法を無効にする能力を持つ。
(装備は杖か・・・肌の色が判らないのは残念だな。)
透明看破では透明化している者の姿が見ることができる。それは白黒写真のようなもので色まで見るわけではない。
(ゴブリンに火傷の痕は無い。ということは火属性の可能性は低いな。よし!)
カイは杖を掲げ、呪文を詠唱する。
「荒れ狂う炎よ!纏わりつけ!」
「火炎括」
カイの呪文で部屋に炎を纏った茨が出現する。炎の茨はハグやゴブリン、ホブゴブリンに巻き付き行動を阻害した。
“火炎括“の呪文は行動を阻害する上、一定時間ごとにダメージを与えるのだ。
「うぎャうギゃうギャギャ」
「がフガふォガふお」
「ぎょへーっつ!」
体に炎の茨が巻き付いたゴブリンが絶命する。ホブゴブリンも虫の息だ。
ボスであるハグも炎によるダメージを受け、姿を現した。
青白い姿の老婆。
フロスト・ハグだ。氷系統の魔法を無効化するが火系統に弱い。これはカイにとってうれしい誤算と言えた。
ハグの方も隙を見て呪文を唱えようとするが、火炎による継続ダメージで詠唱自体を阻害する。
絶命したゴブリンは消し炭に、継続ダメージでボブゴブリン倒れ炭になりかかっていた。
スタッン!!
炎の茨を押しのけて呪文を唱えようとしたハグの頭にルリエルが放った矢が突き刺さる。
その一撃で絶命したハグは杖を落としその場に倒れた。
魔法の属性は火、水、土、風、光、闇、氷、雷の八系統。
絡む茨と火炎括は実は同じ呪文で、属性を変えただけの呪文です。




