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剣から見た魔導士

 その日、リヒトファラス王国第三王女、通称“剣の姫”もしくは“三の姫”と呼ばれるマルティナ・ディ・リヒトファラスは朝の稽古を終えテラスで簡単な朝食を取っていた。

 その傍らにはピンと背を伸ばした初老の侍女が手紙と少し大きめの厚紙を持ち控えていた。


「姫様には王様より手紙を承っています。」


 そう言うと侍女は持っていた手紙をマルティナに差し出す。


 受け取った手紙の内容を見た瞬間、マルティナはついに来るべき話が来たと思った。

 継承権の低い第三王女に生まれ、今日まで上二人の姫とは違い比較的自由に生きてきた。

 マルティナも王家の末席に生を受けた者として覚悟はしている。

 ただこの歳(十八)になるまで少し剣術に打ち込み過ぎたのか婚期を逃しつつあるのは事実である。


「カイ・オールウェイ魔道伯……確かこの頃よく聞く名前だな。たしかスコルナの反乱軍を倒した人物だったな。で、どの様な人物なのだ?」


 マルティナの傍にいた侍女長は王国の姫君らしからぬ言葉に苦言を呈する。


「姫様。日ごろから私が申しあげている通りあまりその様な言葉遣いをするものではありません。ただでさえ剣を振るって男勝りであると言われているのです。もう少し女性らしい言葉遣いをなさいませ。」


「相変わらずイーリスは手厳しいなぁ。私付きの侍女長になって何年になる?」


「もうかれこれ十年になります。それでこの方が今回のお相手となります。」


 イーリスがマルティナに厚紙を差し出した。

 厚紙は二つ折りになっていて開いた中には人物が描かれたものが一枚、その人物に対しての情報が書かれた報告書が挟みこまれていた。


「カイ・オールウェイ魔導伯は反乱を収めるだけでなく飛行船レヴィキアの開発者です。それに加えて“王室魔導工房”の責任者となっています。」


 イーリスの言葉を聞いてマルティナは納得した顔をした。


「なるほど、だから父上はこのような指示を出したのか。」


 王からマルティナに宛てた手紙には“カイ”から魔術や魔道具についての講義を受ける事と講義を利用して“カイ”との縁を結ぶこととあった。


「ふむ。魔術や魔道具の講義か。正直、魔術には興味がないが魔道具には惹かれる者はあるな。兎も角、講義を行うのはやはりこのテラスがよいか?イーリス。準備を頼めますか?」



 カイ魔導伯の講義は月に数回、カイ魔道伯が王都にいる間行われる。何でも月の半分は領地経営の為に戻る必要があるそうだ。

 講義の内容も魔術よりも魔道具中心の講義だった。

 なんでも、カイ伯爵は魔術よりも錬金術の方が得意としている魔導士だと言っていた。筆頭宮廷魔導士のディルマとは逆の様だ。


 一通りの講義が終わるとカイ魔道伯との軽食を取りながらの談話となる。

 驚いたことにカイ魔道伯は私の剣の修行についてたずねてきた。

 しかも、剣の修行自体をとがめることなく興味深そうに聞いていた。


 私が剣の修行について言うと今までの者達は批判めいた目で私を見ていた。

 おそらく“女のくせに”とか“王国の姫らしくない”とか思っているのだろう。


 しかし、魔導伯との話では魔道伯私を批判めいた目で見ることはなかった。魔導伯は時々質問を交えながら楽しそうに話しを聞き時間が過ぎていった。


 いつしか私は次に魔導伯が講義に来るのはいつの日かと考えるようになっていた。

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