帝国紀行 その1
新元号に変わったのに合わせて再開しました。
”帝国紀行”は名も無い斥候が帝国内を旅する見聞録の予定です。
リュファス達、
スコルナ反乱軍はベレス大陸の南側に潜伏、
その場所で”ケフェウス”の修理を行っていた。
潜伏場所は近くの村から遠く離れており
狭い湾が複雑に入り込んでいる。
湾の両側には切り立った崖があり、
それが他からの視界を塞いでいる格好の場所である。
“ケフェウス“は二門の主砲のあった艦首部は大きく破損し、
修理には時間を要する。
リュファスは修理を待つ間、
この近辺で最大の国家、
“イグナーツ”帝国に斥候を放っていた。
イグナーツ帝国
世界最大の大陸、ベレス大陸に存在し、
ベレス大陸の半分を治める国である。
ベレス大陸は世界最大の大陸である、
と言っても、
南側、中央部には極寒の雪山が存在し、
大陸半分近くに凍原が広がる。
収穫が乏しく、目立った産業は無い。
その為、豊かな北方の土地を得る為、
拡大路線を余儀なくされている。
町から離れた村“ノバフロン”
ここにも斥候の男が一人、
旅人に成りすまし情報収集を行っていた。
男は農道を歩く村人に宿が無いか当たってみる。
村人は訝しげな表情をしながら
「何だあんた?何処に行きなさる?」
「いえ、町に行って一旗揚げようと・・・」
その言葉を聞いた村人は呆れたような表情で
「はぁー。
この間から、皇太子さまが人を集めているらしい。
一旗揚げようとする若い連中が町に向かっている。
俺の村でも何人か町へ向かった。
あんたもその口か・・・」
「ま、そんな所です。
村にいても食えなくなりそうなもので、
俺は四男なので・・・。」
「四男!
それじゃ仕方ないわな。
残念だが、村に宿と言う上等なものは無いよ。
この道の先一日ぐらいしたら“シタージ”に着く。
そこなら確か一、二軒あったはずだ。」
斥候は礼もそこそこに道を急ぐ。
先ほどの村人の家に一泊の交渉をしても良かったが、
訝しげな表情をしている分、
その交渉が成功する可能性は低いだろう。
逆に怪しまれればもっと厄介な事になる。
それよりも、
情報を元に聞き込みを行う方が効率的だ。
そう考え、町への歩みを早めた。




