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魔導士は叙爵して陞爵する。その3

宮廷魔導士であるディルマは王に助言をすることはあっても、嘆願する事は今までなかった。

それが今回、王に嘆願しているのだ。


ディルマの言葉をその場に居合わせた者はかたずをのんで見守った。


「私は先の戦いで、この通り左腕を失いました。」

と言ってディルマはローブ―に囲まれていた体の左側を見せる。

そこには本来あるべき左腕は無かった。

スコルナとの激戦が想像され、その姿に息をのむ一堂。


「片腕では研究もままならず、これでは日常生活にさえ問題が出る始末です。

引退も考えましたが、後継者もいない現状では引退するわけにもいきません。

ついては補佐する者の人選をお願いしたいのです。

将来の後継者候補ととらえ、出来れば様々な事柄、

特に私の魔術系とは異なる錬金術系・・・・の魔導士にお願いしたい。」


と言うとディルマはカイの方をちらりと見た。


それを聞いた国王はディルマに尋ねる。

「宮廷魔導士筆頭であるディルマ殿の話も尤もである。

だが、その左腕、再生リジェネレイトの呪文で再生できないのか?」


「はい、それは可能であります。

が、私は年齢がかなり高い為、再生の為の魔力が体に悪影響を及ぼすとのこと。

また、再生時には体力を消耗します。

年齢や万が一を考えると再生リジェネレイトの呪文は使えないのです。」


再生リジェネレイトの呪文は体を活性化させ、細胞を分裂させることで元通りにする。

その為、再生する時に体力が無いと衰弱死する危険があるのだ。


「なるほど、余はそちの希望を理解した。

しかしそなたの補佐をするとなるとそれなりの地位と実績が必要となるな。

魔導士で錬金術にも詳しい者か・・・。」

国王はそうつぶやくとカイの方をちらりと見た。


(ディルマ様の補佐か・・・。)

(後継者候補ということは将来、筆頭魔導士。)

(そうなると人選が問題となるな。)

(魔導士で・・・)

(錬金術にも詳しい・・・)

(地位も高く)

(実績も大きい)

(・・・)

(・・・・)

(・・・・・)


(((((((((( チラッ ))))))))))


その場に居合わせたすべての人々がカイの方を見た。



「誰か、ディルマ殿の補佐が出来る錬金術が得意な魔導士はおらぬものか・・・。

おおそう言えば、カイ殿は錬金術が得意でしたな。」

宰相のルツはカイに話を振る。


「え、ええ。まぁ、それなりに・・・。」


「ハハハハハ

何を謙遜しておられる。

飛行船レヴィキアを作る魔導士がそれなりでは無いでしょう。

どうですかな?

ディルマ殿の補佐は?」


「いえ、私に務まるかどうかは・・・。」


「ああ、左腕が痛い。

年を取って来ると怪我の治りも遅くなる。」

白々しくディルマが弱音を吐く。


「私から見てカイ殿は地位もあるので最適かと思いますよ。」

更にルツが追い打ちをかける。

「・・・・・・・。

領地!!

そうだ、領地を経営しなくては!

王都から遠いし、時間が取れるかどうか・・・。」


その言葉を聞いたディルマはニャリと笑う。

「大丈夫じゃよ。

月の半分を王都で手伝ってくれれば問題ないよ。

それに、ほら、飛行船レヴィキアがあるじゃないか。

あれなら領地まで一日で帰れる。

月の半分を王都でもう半分を領地で過ごせば何も問題はなるまい。」


「おお、ディルマよ。

それは良い考えだな。

カイ魔道伯・・・も領地まで飛行船レヴィキアを使えば時間の短縮になる上、試験飛行も出来る。

正に一石二鳥だ。

そうだ、どうせなら王宮にも工房の設置を許可しよう、どうだね?」

国王がさらに追い打ちをかける。


「・・・承知いたしました。」


カイはそう答えるしかなかった。

その返答に対してその場に居合わせた者の拍手と賛辞が起こる。

「おお!新たな宮廷魔導伯の誕生だ!」

「これで王国は安泰だ!」

「国王陛下万歳!宮廷魔導伯万歳!」

「静粛に!静粛に!

まだ論功行賞の授与は終わってませぬぞ!皆様方!」

宰相が周りに注意を促す。


注意の声に少し静かになった所で

「では次の論功は・・・」

粛々と論功行賞の授与式が行われていった。

論功行賞の授与式の後、王の私室にて

そこには国王の他、宮廷魔導士のディルマ、宰相のルツ、そして辺境伯のファウンテンがいた。


ディルマ 「国王!大変うまい具合に行きましたな。」

国王   「うむ。わしは断られるかと思ってひやひやしたぞ。」

ルツ   「叙爵と陞爵で田舎にこもられれば王国にとっての損失になります。

      王宮に工房を設置できたのは大きいでしょう。」

辺境伯  「私の領地だけでは持て余しますからなぁ。

      本人がその事を判っていないので余計に・・・」

国王   「持て余すか・・・うむ、ならいっそのこと姫の誰かと婚姻を結ばるか」

ルツ   「それは良い考えです。今回の事で伯爵になったので家としても問題は無いでしょう。

      ゆくゆくは侯爵ですな。」

ディルマ 「おお、王国始まって初の魔導侯爵か。

      わが後継者に相応しい肩書じゃな。

      侯爵に陞爵となるにはそれなりの功績が必要か。」

ルツ   「ところで、ディルマ殿。左腕はどうなさる御つもりで?」

ディルマ 「頃合いを見計らって再生するかの・・・そうじゃ!

      再生の薬をカイに作らせよう。

      それと作るであろう王専用飛行船レヴィキアの功績ならば十分だろう。」

辺境伯  「宮廷魔導士筆頭の後継者も決まり、王国は安泰ですな。」

国王   「まったくだ」

一同   「「「「ははははは」」」」

  


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