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竜との契約

“ケフェウス”を追跡する“メルカバⅢ”の地上から連絡が届けられた。

連絡と言っても、使い魔による手紙である。

(カイが実験している魔力通信はまだ実用化には至っていないのだ。)


“メルカバⅢ”の艦橋では宮廷魔導士のディルマが“ケフェウス”追跡の指揮を執っていた。

船の届けられた手紙を受け取ったディルマは額にしわを寄せる。


「イスガルド峠方面へ逃走だと!

あ奴め、ゲインシュタットで挟撃されるより、イスガルド峠方面から回り込めば勝機があると見たか。

これではゲインシュタットを攻略せねばなるまい。

だが、奴が帰り着くまでに攻略できるだろうか・・・。」


難しい顔をするディルマに対しカイは落ち着いた表情で質問した。


「ディルマ様。イスガルド峠方面という事は、スコルナ軍はサーバル領を通るという事でしょうか?

それとも、そのまま国外へ逃亡すると言う可能性は?」


カイの疑問ももっともな事だ。

空を飛ぶ船が他国で作られたと言う話は聞かない。

他国なら両手をあげて歓迎されるだろう。


だがディルマは


「他国か・・・それはまだ考えられなぬな。

奴は先ほどの戦いに敗れはしたが、領地自体が無くなったわけではない。

領地に帰れば防衛用の戦力は必ずあるはずだ。

その上、スコルナ領と言えば南部でも裕福な領地。

財産もかなりの額に上ろう。

それらが失われぬ限り、国外逃亡は考えられぬな。」


カイはディルマの言葉を聞き少し考えこむ。

その姿を見たディルマは何か気にかかる事があったのだろうか。

「魔導爵カイよ。何か気になる事でも?」


「この戦いが始まる少し前に、“グウィバー”の所へ行ったのです。」


「“グウィバー”?シラアエガスの白竜か!?

何故じゃ?」

訝しげな顔をしてディルマが訊ねた。

わざわざ竜の場所へ行く理由が判らなかったのだ。


「私の故郷サーバルと住居があるウェスリックやリモーデとは飛行船レヴィキアでさえ五日はかかります。

その為、緊急時。

例えばスコルナがサーバルへ攻め込んだ場合、対応が出来ません。

もし仮に兄上や住民が人質に取られた場合、どうなるかと考えたのです。」

カイは神妙な面持ちでそう語った。


「ふむ。確かに人質がいた場合、その対応を考えねばならぬな。

だがそれとシラアエガスの竜とどう関係するのじゃ?

かの竜ははるか昔、太古の時代から生きていると言う竜。」

ディルマはカイが“グウィバー”と面識があることは知っている。

しかし、その内容までは知らなかった。

まして“グウィバー”の様な古竜ともいえる者が人類種と関わりを持つとは考えてもいなかったのだ。


「もしもの事を考え、竜と契約を結んだのです。」


「契約じゃと!古竜である“グウィバー”とか!!」

ディルマは思わず大声で聞き返した。

カイの言葉はディルマの思いもよらぬ物だったからだ。


「いったいどのような内容なのだ?代償は何か?」

カイにディルマは詰め寄った。


「契約はスコルナからサーバルおよびその同盟領を守る事。

対象となるスコルナを倒す必要のない契約です。

要は人質に取られなければ良いので・・・。

代償は何らかの願いをかなえる事でした。」


「なるほど。

つまり、スコルナはサーバル領へ近づくことが出来ないと言う事か。

しかし、竜の願いとは面妖な・・・。

まて!それでは!!」


「はい。

スコルナ軍はサーバル領およびその同盟領には近づけません。

従って、“ケフェウス”は大回りでスコルナ領へ戻ることになります。」



カイの言葉通り、“ケフェウス”はイスガルド峠を越えた先、

スコルナ領の手前で障壁に阻まれそれ以上先に進め無くなっていた。

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