高高度からの砲撃
”ケフェウス”を襲った黒い塊。
それは鉄球だった。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ
無秩序に鉄球が降り注ぎ、”ケフェウス”を壊して行く。
「敵襲!!」
「どこからの攻撃だ!?」
「障壁!障壁を展開しろ!!」
「1番から3番の副砲被弾!機能停止しました。」
”ケフェウス”の艦橋で乗組員の怒号が飛び交い騒然となる。
「障壁展開します!!」
数秒間、鉄球の雨が降り注いだ後、再度障壁が展開しなおされる。
”ケフェウス”は僅か十秒ほど障壁を解除しただけで副砲のほとんどが使用不能になっていた。
そして鉄球は今も降り注ぎ障壁を叩いている。
「被害状況はどうなっている!」
艦長のジーンは部下に尋ねた。
「はっ!1番から4番、全面の副砲はすべて使用不能。
主砲二門はその前の爆発で大破しました。」
武装を担当している乗組員が答える。
「なんだと!この攻撃にそれほどの威力があるのか!?
いったいどこからの攻撃だ・・・。」
その被害の大きさに驚く。
何故なら、飛行艦である”ケフェウス”はミスリル合金やアダマンタイト合金をふんだんに使った”王専用艦”である。
並みの攻撃では傷つくことはないからだ。
「索敵範囲内に飛行車は何台ある?」
ジーンは索敵球を操作している部下に尋ねた。
「範囲内に飛行車は20台。
ほぼ目の前に固まっています。」
「他は?他はいないのか?どんなに遠くてもいい。」
「そ、それならば、前方3km、高度3,000mの位置に大きさの物が2台。
補給のための船だと思われます。それ以外は見当たりません。」
「高度3,000mに2台か・・・どちらも雲の上か、それに5kmだと離れすぎだな。」
ジーンはあくまで今までの常識とされる範囲で判断した。
「高い位置に2台、もしや・・・」
リュファスはその報告を聞きと少し考えた後、命令を下す。
「”ケフェウス”を高度2,000、いや1,500mまで上昇させろ!」
”ケフェウス”は鉄球の雨が降る中、急速に高度を上げる。
高度をとると障壁を叩く鉄球は次第に少なくなりついには無くなった。
「砲撃が届かない!?」
「やはりな、遠く離れた2台からの攻撃であったか・・・。」
リュファスの予想通り鉄球による攻撃は3km先、3,000mという高高度からの攻撃であった。
その3km先、高度3,000mと言う高高度の船の操縦席にはスタン、鉄球を撃ちだす装置にはグメルとガミラのドワーフ兄弟がその任に付いていた。
「うぉーい。スタン。あんなに高く上がられては鉄球が当たらんぞ。」
「当たらんぞ。」
伝声管を通じてグメルとガミラの兄弟の声が聞こえた。
「グメル、この飛行船はあと何処まで上がれる。」
「そうだな。あと1,000mと言ったところじゃな。
それ以上はどうなるか判らん。」
「どうなるか判らん。」
「そうか・・・だが、“メルカバ”の方は何故上がらないんだ?
そこから見えるか?」
「うむ?どうやらスコルナの走空車が邪魔をしている様じゃな。
・・・障壁の上から抑え込んでおるのか?
時間稼ぎか?」
「時間稼ぎだな。」
事実“メルカバⅢ“はグメルとガミラが見た通りスコルナの走空車によって押さえつけられていた。
「リュファス様!お逃げください!」
「ここは我々が!!」
「皆の者!敵の飛行艦“ルフトシフ”をリュファスさまの元に近づけるな!!」
「「「「「おお!」」」」」」
“メルカバⅢ”に集まったスコルナの走空車は王国側から見ると良い的である。
王国の攻撃により、スコルナの走空車は一台、又一台と数を減らしてゆく。
しかし、何度被弾しようと、友軍が撃墜されようと“メルカバⅢ“を抑え込む。
“メルカバⅢ“からその枷が外れる頃、リュファスの乗った”ケフェウス“ははるか先へ逃げ延びていた。




