魔導士はサーバル領へ買出しに行く
カイやサウルを乗せた飛行船メルカバⅢは一路サーバル領を目指していた。
もちろんカシオを仕入れる為である。
メルカバⅢは以前より船体が大きくなった分、格納庫が大きくなった。
そこへ収納用の管理コンテナを置きカシオを運ぶ計画だ。
船体が大きくなった分、運ぶ量は輸送用の走空車より多い。
「50km以内に走空車、飛行船存在ありません。」
探査機を見ていたフィリアがそう報告する。
「ふー。スコルナ辺りが出てくると思ったが、全く出てこないんじゃ張り合いが無いな。」
とディンカが呟くがバハルに注意される。
「出てこないのがいいに決まっているでしょ!」
「まぁ、そうだな。
でも、ここまで来ないのは何故だ?」
ディンカのいう事も一理ある。
食料を押さえて国全体に兵糧攻めを行っているならば何かを仕掛けるはずである。
その為、攻撃を受けても逃げきることの出来る飛行船を使用しているのだ。
「そうだな。
サーバル領は元々貧しく主食である麦はあまりとれない土地だ。
これは気温が暑すぎることが理由らしい。
実際、麦のほとんどは他所からの輸入だ。」
「ええ!それじゃあ麦を止められたら何も食べられないんじゃ?
いったい何を食べてるの?」
フィリアが驚きの声を上げる。
「カシオだ。」
「カシオ?あの甘い食べ物?」
「いや、フィリア。甘くないカシオもある。
それが主食になっている。」
「甘くないカシオですか?想像できません。
どうやって食べる物ですか?」
「主に焼いて食べたり蒸して食べたりするな。
他は要研究だな。」
「スコルナはカイさんとサーバルのつながりは知っているのでしょう?
カシオを運ぶことは予想できるのでは?」
フィリアが心配そうにたずねた。
「その心配は無い。カシオは獣人の主食だ。
スコルナは獣人を劣等種と見ている。
その様な者が食べる物を口にするだけでもおぞましいという事だ。
だから、それを我々が食べることは考えもつかない。
そしてリュファスも同じだ。」
「何故そう思ったのでしょうか?」
「スコルナ領で出された食事で確信した。
通常捕虜に出す食事は最低の物だ。
その中にカシオは入っていなかった。
これはカシオを食料と見ていないという事を意味する。
あと、この輸送計画でスコルナの妨害が入らないなら、これは確定事項となる。」
その後、サーバル領までの道中、スコルナに妨害されることは無かった。
「さて、カシオの積み込みが終わるまで一日はかかる。
カイさん達はその間休んでいてくれ。」
サウルはカイ達にそう言った。
「そうだな。
今日一日はどうやって暇をつぶすか・・・カイさんはどうする?」
ディンカがカイに尋ねるとカイは
「一日か・・・出かけるか。
少し考えがある。
無駄になると良いのだが・・・。」
そう言うと走空車インパルスⅡを乗って一人出かけていった。




