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魔導士は食料を増やす

カイは食糧の増産を王命で命じられなければ、今も工房で飛行船レヴィキアに関わっていただろう。

リモーデは人口が大幅に増加し人の出入りが多くなった。

重要機密を知るカイを護衛するには様々なことを考える必要がある。

それに対してウェスリックだと人口が極めて少なく、よそから来た者にだけ注意するだけですむ。


辺境伯の命でギルドと辺境伯お抱えの騎士団がウェスリックにやって来たのだが、その事をカイは知る由も無かった。


ヴァニアと話をしながらカイは移動する。

案内されたのは城の南に設けられた耕地だった。

広さは城より一回り広い。

耕地に四角く長いガラス張りの箱のような建物がいくつか並べられている。

その周りでは何人か、ギルドの連中が装置の準備をしていた。


棒状の物を持ったスタンがディンカに尋ねる。

「おい、ディンカ。この棒の様な物は何処へ運ぶんだ?」


「それは・・・等間隔に建てると言っていたな。

フロームそのガラス板はカートに乗せて運べ。数があるからな。」


「了解。」


フィリアとルリエルはガラス張りの箱の中で作業をしていた。

耕地のうねの穴に種をニ、三粒ずつ、何かの粉の様な物を少量加えて入れている。


別の場所ではバハルとニライが耕地に何やらすき込み畝を作っていた。

元々、農村出身だったらしく手慣れた様子である。


ヴァニアはギルドの連中も手伝って各員が忙しそうに働く様子を見ていた。

「みんな忙しそうだにゃ。」


「これから本格的な冬になる。

その前に種をまき終わらないと、初夏の収穫は難しい。

更に十分な数を用意しなければならない。」


「という事は、食料を増やす道具が出来たのかにゃ?」


「うーん。微妙に違う。

そもそも、呪文で食料の出現や増加させる事は出来ないのは知っていると思うが?」


「じゃが、お主は何か解決方法を思いついたのにゃ?」

ヴァニアが真剣な顔でカイに尋ねた。


「ああ。そうだな、実際で見てもらう方が早いか。」



カイは準備が終わった一つの棟に立つ。

棟の入り口には“第一棟”書かれており、扉の横には四角い箱の様な物が取付けられていた。

カイはその内部を確認する。


「内部確認!よし!

内部に人は見当たらず。

これより第一棟の起動を開始する。」


カイはそう言うと四角い箱に魔力を流し込む。

流し込んだ魔力に反応しガラス張りの建物の内部が暗くなったり明るくなったりを繰り返す。


その明滅を繰り返す建物の内部を見ると地面から何やら緑色のものが伸び始めた。

緑色の物は明滅の度に成長し延びている様である。


「にゃ、にゃにゃにゃ?

これは・・・麦か!!」

ヴァニアが驚嘆の声を上げる。


「正解。

この建物の内部では時間が速く過ぎるようになっている。」


「にゃるほど。

そうやって食料を早く生産するのだにゃ。

でもカイよ。それで十分な量は得られるかにゃ?」


「無理ですね。

そもそも動かすための精霊石が全く足りません。

中型の走空車グエルに使われている精霊石が半日でなくなります。」


「ふにゃにゃ???

ではこの建物で何を作っているにゃ?」


カイの言う通り、時間を早める方法で必要量を収穫出来ないのであれば、この建物を使う意味は無いだろう。

ヴァニアは時間を早めてまで何を作っているのか疑問に思うのだった。


「所謂、種麦だな。」


「種麦?そんなもの辺境伯に言えば山ほど集まるにゃ。」


ヴァニアの言葉を聞いてカイは「チッチッチ」と人差し指を立ながら指を振る。


「それだと収穫は今までと変わらない。

この数ヶ月、工房で種を選別していた。」


「???」


「工房内に此処を小規模にしたハウスを作り、同じように時間を早めて収穫する。

それを繰り返し、より多く、より大きな種をつける麦を選別した。」


「お!?」


「その結果、従来より実りが多く種も大きい麦を見つけ出した。

それを耕作地に撒くための種麦を増やしている。

この麦が収穫されれば、麦の生産が今の倍近くになる。

当然麦だけでなく、他の物、たとえば砂糖大根も選別をした。」


「と言う事は、食糧の増産は?」


「見込みが立ったと言ったところですね。」

カイがそう答えるとヴァニアはホッと一息ついた。





ヴァニア 「ところでカイよ。」


カイ   「?」


ヴァニア 「あれは”魔術師の赤”か”さすらいのヒーロー”がするポーズにゃ。

      カイには絶望的に似合ってないにゃ。」


カイ   「うっ・・・。」


ヴァニア 「実際、あれは結構失礼な行動だにゃ。

      でも私は人格者だから、問題ないにゃ。」


カイ   「・・・」

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