表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/186

リモーデの危機 その6

「リモーデの工房の新鋭船を狙う。

でもそれだけでなく・・・・・。」

カイはスコルナが次にリモーデの工房を狙う事を予想した。

それと同時にもう一つの可能性に気付く。


カイの兄、ハロルドの事だ。

必要ならば人質に取ることも考えられた。

そうなる前に安全を確保しなければならない。


「兄上、ここは、サーバルは危険だ。

私と一緒に来てくれませんか?」


「・・・カイよ。それは出来ぬ。」


「私はこのサーバル領を収める領主なのだ。

領主たるこの私が領民を置いて逃げるなど出来ようか?

そして、我が家が陛下よりこの地を賜って百年以上の長きにわたる。

この領地から逃げ出すことは陛下に対する裏切りでもあるのだよ。

その様な不名誉なことはサーバル家の領主として、いや男子として許されることではない。」


「兄上、・・・お心は変わりませんか?」


「変わらぬ。」


その言葉を聞いたカイは苦悩するように目をつぶった。




どれだけ時間がたったのか判らない。

カイは目を開くと飛行船レヴィキアに乗り込む。


“メルカバ”は何時でも出発できるようにカイ以外の者がすでに乗り込み準備を終えていた。


「グメル、”メルカバ”は急加速可能か?」


「急加速は翼が持つかわからん。

少しずつ速度を上げるべきだ。」

”メルカバ”の改造に加わっていたグメルが忠告する。

加速用の魔方陣が取付けられた部分は”インパルス”を改造したものなので構造上不安があるのだ。


「徐々に加速してリモーデに向かうか。

ここサーバルからだと走空車グエルで五日だが飛行船レヴィキアなら二日。

”メルカバⅡ”なら今日中に着けるか?

どうだスタン?」


「そうだな。

途中休憩をはさんでギリギリ今日の夜中と言ったところだ。」


スタンはそう言うと加速用のスロットルをゆっくりと押し上げていった。



リモーデにあるカイの工房は町の西側に突き出た形で建てられている。

その工房では飛行船レヴィキア”メルカバ”が出発した後、新たな飛行船レヴィキアを建造に着手していた。

”メルカバ”とは違い構造が簡略化されたその船は飛行用の装置の取り付けが終わり何時でも飛べる状態である。

ただ、幸いなことに武装などはまだ取り付けていない状態だった。


リモーデの西の空に走空車グエルの一団が現れたのは夕方を過ぎ、辺りも暗くなり日も落ちた時だった。


総勢20台。


中には飛行船レヴィキアと呼ばれる大きさの物も混じっていた。


リモーデ側も手をこまねいていたわけではない。


既に王都からの急使により準備は整えられていた。


「国賊のスコルナ軍はやはりここを狙ったか!

だが、我々も手をこまねいたわけではない。

全走空車グエル発進!!」


スコルナ軍の接近を受けて何台もの走空車グエルが防衛の為リモーデから飛び立つ。



狩猟の月、第二の黒の日


リモーデの上空で世界初の空中戦が展開された。



無骨なスコルナの走空車グエルに対し、リモーデから飛び立った走空車グエルはスマートに見えた。

リモーデ防衛の走空車グエルのほとんどは冒険者達からの徴用であり、運動性能の良い物だった。


対してスコルナ軍の走空車グエルは貴族用の走空車グエルをベースにしている為、運動性能は今一つであるが、貴族用の走空車グエル特有の装飾を取外し、装甲強化している。


全走空車グエル紡錘陣!魔法戦用意!」


旗艦となっている走空車グエルから呪文で拡声された声が響く。


防衛側の走空車グエルが紡錘陣形をとり走空車グエルの天窓から上半身を出した魔術師が呪文を唱える。


「いまだ!撃て!!」


火炎槍フレームスピアー」「氷冷槍アイスランス」「雷光槍ライトニングジャベリン

岩石弾ストーンバレット」「魔法槍マジックボルト


ありとあらゆる呪文がスコルナ軍に向かい襲い掛かる。

スコルナ軍も何もしないわけではない。

防衛側と同じように魔術師が呪文を唱える。

ただ、防衛側と違って上半身を出す必要はなかった。


火炎槍フレームスピアー」「氷冷槍アイスランス」「雷光槍ライトニングジャベリン

岩石弾ストーンバレット」「魔法槍マジックボルト


スコルナ軍も防衛側と同じように呪文を撃ち出す。


リモーデの上空は様々な属性の呪文により花火が打ちあがったような状態になっていた。


防衛側もスコルナ軍も魔術師の呪文を受けるが、致命傷になっていない。


攻撃呪文に対し、対呪文のシールドが張られた為だ。


リモーデも夜空を彩る魔法戦は、何人かの運の悪い魔術師に呪文が命中しただけである。


防衛側、スコルナ軍側双方等も決め手に欠け、膠着状態に陥るかのように見えた。


そんな中、スコルナ側の大型の走空車グエルが静かに前に出て来る。


長い箱型の走空車グエルは両側に丸い舵輪のようなものが付いており、それが高速で回転しているのが見えた。


その舵輪が唸り声をあげ何かを吐き出す。


吐き出されたそれは猛烈な勢いを持って防衛側のシールドを破壊する。


「シールドが破壊された!!何・・・」


そう言い終わらぬ内に第二射目が走空車グエルに突き刺さる。


走空車グエルのフロント部分のガラスが割れ大きく窪み操縦を困難にする。


流石に破壊されないのはミスリルとアダマスの合金で作っているおかげだ。


「石だと!物理攻撃か!!」


間髪を入れず第三射、四射と砲撃が行われる。

あっという間に防衛側の走空車グエルは徐々に押し込まれていった。


中には操縦不能で戦線を離脱した走空車グエルもある。


防衛側がカイの工房上空から押し出されるのを見計らった様に工房から飛行船レヴィキアが上昇る。


別働の部隊が工場から飛行船レヴィキアを奪取したのだ。


奪われた飛行船レヴィキアはゆっくりと戦線から離脱し始める。


それに呼応して大型の走空車グエルからの攻撃がさらに激しくなった。


今までは、飛行船レヴィキアに被害を与えない様に加減した攻撃をしていた様だ。


飛行船レヴィキアを奪取した今、その制約はない。


今までと違い猛烈な勢いで投石を開始した。


投石はリモーデ西側だけでなく、東側の家々にも落ち始め少なからずの被害が出始める。



そんな状況をひっくり返したのは大型の走空車グエルに突き刺さった一条の光だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ