リモーデの危機 その3
小さな島の真ん中に空いた穴
それはダンジョンと言われる物だった。
スコルナ軍はダンジョンコアとダンジョンマスターである水牛の様な生物を倒さず、穀倉地帯に持ち込んだのだ。
ダンジョンコアは沼地に置かれたことで、周りの環境を変化させダンジョンを再生したのである。
そして、水牛の様な生物
それはカトブレパスと言う石化の邪眼を持つ魔獣である。
王国の対処を遅らせる為に邪眼を持つ魔獣をダンジョンマスターとして設定したのだ。
王国が穀倉地帯の異変に気付いた時にはすでに手遅れだった。
汚染は瞬く間に広がり穀倉地帯の三分の一の部分を不毛の土地へ変えてしまった。
王宮では国王や宰相、宮廷魔導士を含め、各部署からの代表が対策を話し合っていた。
少し白髪の混じった武官が立腹しながら会議の机をたたく。
「スコルナ軍め!
穀倉地帯を汚染させるとは!」
「やはり数年前にあった事件で穀倉地帯が弱点である事を知られてしまったのが大きいか・・・。」
「しかしどうする?
このまま放置すると汚染は全土に広がりかねない。
そうなると大量の餓死者が出る。」
文官らしい二人はこの後起こるだろう食糧危機に頭を痛めていた。
「偵察によるとダンジョンはまだ浅いそうだが、ダンジョンマスターは邪眼持ちだそうだ。」
「魔獣なら冒険者に任せればよかろう。」
「いやいや、走空車の強制徴収を行った手前、王宮からの依頼でも受けるかどうか・・・。
王国騎士団では対処できないのが悩ましい。」
別の武官はダンジョン自体の対策を考えているが、良い案が浮かばない様だ。
長時間の会議で喧々囂々と議論が紛糾し収拾がつかなくなっていた。
「ルツ宰相。
この場合、どの様に対処する?」
紛糾する会議を尻目に国王は宰相のルツに意見を求めた。
「まずはダンジョンの対応でしょう。
この対応が遅れれば、わが国の食糧事情に深刻な問題が出ます。
次に侵入したスコルナ軍の行方です。
彼らはまず間違いなくリモーデへ進行するはずですが、その前に何処かで補給をするはずです。
そこを押さえるべきでしょう。」
「なるほど、では魔導士ディルマ。
そなたの意見はどうか?」
「はい。ルツ宰相の意見で問題は無いかと。
ただ、ダンジョンの対応は冒険者にやってもらうのがよろしいかと愚考します。」
「ふむ、だが、強制徴収の手前、冒険者は頼れるものなのか?」
「あまり何度も使えぬ方法ですが、ダンジョンに対処した冒険者に走空車を返すのです。
さすれば、冒険者の協力は得られましょう。
ただ、再び強制徴収することはなりませんが・・・。」
リヒトファラス王はしばらく考えると
「判った、ルツ宰相の言う通りにしよう。
細部は魔導士ディルマの案を実行する様に。」
そう言うとリヒトファラス王は深いため息をついた。
「走空車を発明した魔導士がいればもう少しましな対応が出来ていただろうか?」
「はい。
走空車関連の強制徴収は必要なかったかもしれません。
ただ、彼は今何処にいるのか・・・」
ルツ宰相がそう呟いた時、走空車の生みの親である魔導士カイは故郷のサーバル領上空で、スコルナ軍と戦闘態勢に入っていた。




