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白亜の試練 その9

カイは上流の川の水を凍らせた。

凍らせた事により、川の水は普段より温度がかなり低くなった。


ギンギンに冷えた水は日差しの強い中、待機している帝国軍の兵士たちにはとても気持ちの良い物だったのだ。

油のたっぷり乗った魔獣や動物を食べ、冷えた水を飲む。


そして、帝国軍の半数が食あたり、いわゆる消化不良を起こしたのだ。


当初、帝国の魔術師は毒物を疑った。

これはどの様に警備を凝らしてもスパイが入り込む可能性は否定できないからだ。


しかし、毒物感知の呪文には何の反応も無かった。

その次に疑ったのが風土病、この土地独特の病気である。

魔術師は病原探知ディテクトデシーズを唱えるが効果は無かった。


当然である。

この食あたりは毒や病気によるものでは無く、食べ合わせによる消化不良だからだ。


軍隊において、三分の一の人間に傷病者が出た場合、全滅である。

これは一人の傷病者に対し後送に二人必要だからだ。

今回、帝国軍の半数が食あたりによる下痢となった。


この場合、食あたりが直ったとしても下痢による体力の低下は治らない。

帝国軍がいる場所は敵地近くであり、病人が安静に過ごせる環境では無いのだ。


結果、帝国軍はこれ以上の行動は不可能と判断し撤退した。



「と、言うのが帝国に起こった出来事、と言うわけだな。」


カイはフィリアやルリエル、アイナリンドに今回の事を説明した。


「そう言えば私は御祖母様から聞いたことがありますわ。

他にもイールとソルトブルーンはだめとかもあったような・・・?」

「フィリアさん、それは迷信ですよ。

その組み合わせはとても良い組み合わせなのですよ。」

「え?!そうなのですか、アイナリンドさん。

でも魔獣か・・・おいしいのかしら?

ルリエルはどう思う?」

「エルフ、魔獣食べない。関係ない。」


「兎も角、何とか帝国軍に帰ってもらったわけだが、これで試練が終わりなら何らかの反応が・・・。」

言い終わらないかの内に扉が出現した。

扉はカイの前で虹色に明滅している。


「今回は前回の白い扉とは違って虹色なのか。

扉が出たという事はこれで終わりという事かな?」

「判らない。カイ、扉くぐる。」

「そうだな、ルリエルも言っている事だし、さっさと扉をくぐるか。」


カイはそう言うと扉のノブに手をかけた。






気が付くと一行は大きな部屋の中にいた。

部屋の中央には半透明な繭の様な物があり、そこから四方に糸が張り巡らされている。

その糸にはマナが流れているらしく、時々明滅しながらマナを循環させている様だ。


半透明な繭の中には真っ白い竜が眠る様に閉じ込められていた。

その繭の前に“クレタ”が立っていた。


「よく試練を成し遂げた。」


カイ達に対して話しかける。

よく見るとその姿は薄くぼんやりしており、後ろの繭が透けて見えるほどだった。


「ふむ、この姿について疑問に思うのも無理もない。

これは仮の姿、本体は後ろのそれが真の姿なのだ。

我は“白亜の竜 クレタ”である。」

クレタはカイ達に対してそう告げた。


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