白亜の試練 その7
カイは考えていた。
現在帝国軍は森の奥深くの微妙な位置にいる。
その場所は魔獣が多く出る為、帝国と王国双方の緩衝地帯となっている場所である。
オークの村まで目につかない様に移動したとして2日と言ったところか。
ただ単に帝国軍の阻止するのであるならば、ネストに連絡をすればよい。
そうすればネストを守備している王国軍がやって来て帝国軍を追い払うだろう。
その方法だと帝国軍と王国軍双方に甚大な被害が出る。
そして、さらなる争いの元になる可能性が高い。
と言うより、
それを理由にして帝国は更なる侵攻を狙っている可能性もある。
オークの村を殲滅できた時は“不浄な者を浄化するため仕方なく”という事で通す。
そしてそこを拠点に王国に手を伸ばす。
だが、王国は何故、帝国に近い場所にオークの村を置いているのか?
まるで“狙ってください”とばかりの位置に存在する。
(・・・王国も帝国と戦争をしたがっている?)
考えられない事ではない。
戦争が起これば武器や防具の他、水や食料が大量に消費される。
それにより莫大な金額を儲ける事が可能だ。
(王国軍を呼ぶことも出来ない・・・)
「アイナリンドさん。
クレタって人は、出来ない試練を課すような人なのか?」
「いや。そのようなことは無い。
一見難しそうに見えても必ず解決する方法がある。
クレタ様が出す試練はその様なものなのだ。」
アイナリンドの言葉から判断すると、“現状の状態でこの試練を解決する方法がある。”と考えられる。
カイは別の視点から考えてみることにした。
王国軍はどう考えているかだ。
ネストの町で入る時、簡単に入ることが出来た。
これはこの時期、戦争を行うことは考えていない事を示している。
となると、帝国軍に何らかの方法で帰ってもらうしかない。
「そう言えば帝国軍は水や食料をどうしているのだろう?
人数から考えるとかなりの量が必要になると思うのだが?」
「食料は持ってきた分と森の動物や魔獣を倒した分で賄っているのかもしれません。」
「この森、動物、少ない、狩りすぎ。」
アイナリンドやルリエルの言う通り帝国軍の連中は森で食料を仕入れている様だ。
「森の魔獣は油の多い物が多く食べるのに難儀するのだがなぁ。
魔獣なんて帝国では食べなれていないだろう。
背に腹は変えられないという所か。
では水は?」
「森を抜ける川が一つあります。
この川の水を利用しているのではないでしょうか?」
フィリアがギルドの地図を書き写していた様だ。
「川か・・・こちら側が上流か・・・」
カイはしばらくその地図を見て考え込む。
「・・・試すだけ試してみるか。」




