白亜の試練 その3
カイ達四人が扉から出ると扉は消えてしまった。
道がまっすぐ延びていて、その先に村がある様だ。
目の前に田畑が広がるのどかな景色、
村の住人だと思われる者が忙しそうに麦の収穫をしていた。
麦を切り取った跡地では小さな子供たちが駆け回り遊んでいる。
カイ達が見たのは何処にでもある田園風景だ。
ただ、違っていたのは忙しそうに作業する者や遊びまわる子供たちが人間やエルフではなく、
ピンク色の豚やプードルのような姿をしていた事である。
「オーク!!それにコボルトも!!」
エルフであるアイナリンドとルリエルはオークの姿を見た瞬間、警戒態勢に移った。
彼女らがオークを警戒するのは種族的な歴史によるものである。
エルフとオークは過去に争いがあった。
始めは農民同士の諍いだったのが何時しか国を挙げての争いになり、その争いが百年以上も続いた。
それ以来、エルフとオークは不仲であり、彼ら民族間の関係は修復されていない。
「まて、ルリエル、アイナリンド。
彼らを見る限り、それほど警戒する必要はないのではないか?
どう見ても単なる村人にしか見えないぞ。」
とカイは二人に忠告する。
「だが、相手はオークとコボルトだ。
警戒しすぎることはあるまい。
村人だと思っていても実は強盗だったという話はよく聞く話だ。」
と、アイナリンドは反論する。
ルリエルも
「オーク、力強い、狂暴。」
とオークを危険な住人としか見ていない様だ。
(どう見ても“二足歩行で歩くピンクのぶたさん“と”かわいいワンちゃん”にしか見えないが・・・)
カイはオークやコボルトとかかわりが無いため彼女らの警戒する理由が今ひとつわからなかった。
出身のサーバル領自体に獣人が多い事も有るのだろう。
「とりあえずは挨拶をしてみよう。
凶悪なものならばそれなりの反応があるはずだ。
その反応を見てから決めればよいのでは?」
とカイは提案してみる。
「この場所がどのような場所なのか情報は必要です。
見たところ平和そうに見えますので、尋ねてみても良いかと思います。」
とフィリアがカイの提案に捕捉する。
アイナリンドとルリエルはしばらく考えた後、
「そうですね。
このままここで留まるにも、進むにも情報は必要です。」
「肯定。」
と同意した。
「こんにちは。すみませんちょっとお尋ねしてもいいでしょうか?」
交渉はギルドの受付で慣れているフィリアが引き受けた。
アイナリンドとルリエルは少し離れて警戒を怠らない。
「ん?なんだべ?冒険者さんか。
辺鄙なところに珍しい。」
収穫をしていたオークの一人が手を止めて答えた。
人間やエルフを見て殺気立つことはない。
ごく普通の村人のようだ。
オークの村人、”ブゥ”の言う事には今いる道をまっすぐ行けば一時間もかからずに村に着き、反対に行けば一日ぐらいで町に着くそうだ。
ブウの弟、”フゥ”が明日、“町へ馬車を出すので同乗すればよい”と言った。
泊るところも村長である末弟の”ウゥ”に頼めば部屋を貸してくれるとのこと。
「あと少しで麦の収穫も終わるから、村を案内するだ。」




