世界樹の町 その2
ルリエルは警備隊長を“アイナリンド”と呼び飛行船から飛び降りた。
多少の高さを物ともしないのは遊撃士ならではだ。
「ルリエル、久しぶりだね。」
そう挨拶をするとアイナリンドは兜脱いだ。
兜の下から耳の長い金色の巻き毛の美女が現れた。
すらりとしたスレンダーな体つきで、ルリエルと比較すると正反対の印象を受ける。
「アイナリンド、久しぶり。」
ルリエルの言葉数は少ないが、久しぶりの再会を喜んでいる。
「ルリエル、この人は?」
地上に降り立つとカイはルリエルに尋ねた。
「アイナリンド、幼馴染。」
ルリエルの幼馴染だそうだ。
「私はアイナリンド。“大地のユグドラシル”で警備隊長をしている。」
エルフの警備隊長は自己紹介をする。
「へぇ。町の警備隊長さんはルリエルの知り合いか。」
「ちょっと姉さん。失礼ですよ。」
「ルリエルの幼馴染ですか。初めまして、よろしくお願いします。」
バハルとニライの姉妹と一緒にフィリアも降りてきた。
「あ、ああよろしく・・・・・・・」
降りてきた三人の姿を見てアイナリンドは口籠る。
その視線が三人の上下に動き、鎧の胸の部分に手を当てている。
「ん?なあ、ルリエル。ひょっとして彼女は・・・」
カイはルリエルにある事を尋ねようとした。
「良くない。アイナ、胸無い、気にしている。」
と直球で返してきた。
「ル、ルリエル。ちが、違うぞ!
私はそんなことは気にしていない。
大体あれは脂肪の塊ではないかっ!」
アイナリンドは声を上げ真っ赤な顔で否定する。
「ふむ。その通りだ。あれは単なる脂肪に過ぎないっ!!
とうっ!!」
掛け声を上げフロームが飛行船から飛びおりた。
キリキリと伸身の前方二回宙返り二回ひねりでアイナリンドの横に降り立つ。
その着地に一切の乱れはない。
フロームはアイナリンドに対し跪くとその手を取った。
「お嬢さん。初めまして、私はフローム・ファルコン。
以後お見知りおきを。」
と言ってとった手の甲にキスをする。
気のせいか歯も光っている様に見えた。
「ええ、あ、はい!!???」
アイナリンドも戸惑っている様だ。
そんな様子を見たカイがバハルに耳打ちする。
(フロームってあんな感じだったか?)
(ああ、カイは知らないのか。
実はフロームは小さいころ・・・。)
(なるほど。)
バハルの話によると近所の人妻に迫られた事で、胸の大きな女性が苦手になったらしい。
カイがフロームと出会って三年になる。
浮いた話一つ聞こえてこなかったのは理想の女性がいなかったからだった。
カイはうんうん頷いて納得しているとアイナリンドは女性陣を見ながら
「こ、好意を向けてくれるのはうれしいのだが・・・
そ、それに、私はそちらの方々の様に・・・む、胸が・・・」
口籠りながら話す。
フロームはアイナリンドの両手を取ると
「胸なんか飾りですよ!エロイひとには判らんのですよっ!」
と力説する。
「い、いやだが。胸は・・・あまり無いと言うか・・・その・・・」
「むしろそれがイイっ!」
「はい?!」
アイナリンドの疑問にフロームは
「胸が無い方が良いのです!!」
と魂を震わせるかのように叫んだ。
だが、当のアイナリンドは
「・・・・す・・・」
「少しはあるんだっ!!」
と叫ぶと脱兎のごとく駆けだした。
((((あ))))
逃げ出したアイナリンドを気の毒に思う一行であった。




