魔導士は反省会を開く
猛烈な速度で飛行船は飛竜の巣を抜けた。
その瞬間、船内に歓声が上がる。
「おお!!」
「やった!抜けたぞ!!」
「いてててて、やはり反動がすごいなぁ。
でも無事に抜けられてよかったよ。」
そんな中カイは派手に転び肩を打ったらしい。
「こいつを使う時はみんな座席についている必要があるな。」
カイは肩をなでながらそう言った。
「ともかく、食事だな!ディンカはどうする?」
そう言ってカイはディンカに尋ねる。
「俺は交代要員だから先に食べた。問題ないぞ。」
「判った。じゃあ後を頼む。」
カイはそう言うと操縦をディンカに任せ食堂に上がっていった。
食堂に上がったカイ達が見たのはサラダを頭から被り掃除をするフィリア達の姿だった。
「あっ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・カイさん。お話があります。」
フィリアは言うとにっこり笑った。
三十分後、カイ達は飛竜の巣を抜けた後、食堂で反省会を開いていた。
「さて、今回の問題点についてだが・・・」
「まどーほー?でしたか、使ったときに問題があります。」
そう言うのはフィリアだ。
魔道砲を使った時の反動で船が後ろに大きく動いた。
その為、操縦席の周りでも座席に座っていなかったカイは派手に転んだが他の二人、
同じように座席に座っていなかったルリエルやフロームは持ち前の敏捷性で何とか耐えていた。
だが、同じことは食堂でも起きたのだ。
魔道砲の反動で派手にひっくり返り飛び散る食事。
フィリアはそれをもろに被ってしまったのだ。
スープや牛乳といった水物がなかったからましだったが、置いていたら大惨事である。
「せめて事前に連絡があれば・・・」
「それだ!」
フィリアの言葉にカイは咄嗟に声を上げた。
この飛行船には操縦席から各部屋に話をするための装置はない。
通常、船には通信の為の装置、伝声管がある。
カイは飛行船を馬車の延長で考えていた為、伝声管を取付けていなかった。
「使ってみて初めて不便さがわかるなぁ。」
と、カイは頷きながらしみじみと言う。
「ふむ。アレを完成させる前でよかったといえるか。」
グメルが言うアレとは超大型の事である。
彼らは魔道砲の反動は何ともなかったと言っていた。
ドワーフは重心が下の方にある為だろう。
「船の中は伝声管を引くとしても、“インパルス”はどうしよう。」
カイは考え込む。
「前に使った“伝達”は?」
とフロームが発言する。
「伝達か、特定の物を常に対象にすればあるいは・・・
少し考えなくてはいけないな。
船の中も伝達の方が良いか・・・。」
カイは新しい装置を色々考察する。
「だが、解呪を受けた時は伝送管の方が良いし・・・うむー・・・」
「おい、カイさん、カイさん。」
スタンは考察に夢中になっているカイを突き、指をさす。
カイはスタンに突かれ指さす方を見た。
「え???・・・あ!」
カイの姿をフィリアは微笑んで見ていた。
「え、えっと。色々対処を考えるので今は少し待ってください。
それと、すまない。色々迷惑をかけた。」
「仕方がない人ですね。次はちゃんと警告が出る様にしてくださいね。」
「面目ない。」
カイはフィリアに平謝りするのだった。
スタン 「ところでカイ先生。光雷弾30充填はどの位の威力なのですか?」
カイ 「聞くところによると、某TRPG 迷宮とドラゴン達 三版の基準で」
スタン 「基準で?」
カイ 「太古の赤竜のブレスと同じぐらいだな。」
スタン 「え?」
カイ 「我ながら恐るべきものを作った様だ。」
スタン 「じゃあ、120充填だったら・・・」
カイ 「伝説級だろうな。」




