魔導士は大型の呼び名を付ける
エルフの国へ向かう為の大型走空車。
白銀に輝く巨大な姿は見る者を圧倒した。
全長20m近くのその姿は大きな家そのものである。
「しかし、大きい。これは車と言うより船だな。」
大型走空車を見たディンカが感想を話す。
「確かに。走空車と言う名前では相応しくないかもしれませんね。」
カイはディンカの言葉に同意する。
「ルリエル。何か良い名前は無いか?」
とカイはルリエルに尋ねた。
ルリエルはしばらく考えると、
「レヴィキア」
と言った。
カイはしばらく考え頷くと
「レヴィキア、飛ぶ船、飛行船・・・うん、良い名だ。」
「飛行船か、ふむ。
じゃあ、あっちはどうする?」
飛行船の製作にかかわったドワーフの一人、グメルがもう一つの工房の方を指さす。
グメルが指さす工房は飛行船が作られた工房よりはるかに大きく全長が数百メートルある。
その上、地面を深く掘り下げられていた。
大型の走空車である飛行船を越える超大型を作る為の工房である。
そこではアインヴィルから集められたドワーフ達が大勢働いていた。
飛行船の一号船の製造と並行して工房の建設がすすめられ、
一月前に完成したばかりである。
そして現在、その工房では動力機関を除いた外形部分が急ピッチでの製作が行われていた。
「あれは船と言うより艦だからなぁ。」
“王専用の船が簡単に沈む様な船であってはならない。”
これは辺境伯の言葉でもあった。
確かに辺境伯が言う通り、ちょっとした呪文程度で沈む船は王専用にするべきでは無いだろう。
そう考えたカイは、装甲、武装、居住性などを考えた結果、船と言うよりも艦と言うべきものが計画された。
飛行船でも武装が付いているが、超大型はその武装をはるかに上回る物を取りつける予定なのだ。
「流石に完成してからでないと命名はできないな。」
カイは超大型の命名は保留とした。
「では、各自荷物の積み込みを。」
余裕を考えて半年分を積み込む。
ルリエル以外、誰も行ったことの無いエルフの都である。
そこに行くまでの道程に何があるか判らない。
カイはエルフの国に行くための積荷を入念に調べた。
だが、カイ達がエルフの国へ行くのに疑問に思う者がいた。
辺境伯である。




