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魔導士は公開実験に行く

カイはまじろぎもせず実験器具を見つめていた。

そのカイの様子を見て“チャールズ・ゴン”は見逃さない。

ディンカやバハルの威圧を気にせず、にこやかに近づいて来る。


“チャールズ・ゴン”

少し禿げ上がった黒髪に太い眉、口元にちょび髭を生やし、でっぷりとした人物である。

継ぎ一つない仕立ての良い服に貴金属をゴテゴテと飾り趣味はあまり良くない。

チャールズは何か商売になりそうだと感じたのかカイに話しかける。


「今日はよくいらっしゃいました。何か気になる物でもありましたかな?」


実に胡散臭い人物である。

そのおかげでカイも少し冷静になった様だ。


「ふむ、あの円盤はなんだ?」

カイは実験器具を指さした。


「ほぉ、流石は貴族様。お目が高い。あのコマに気が付くとは。」

さも感心したように言うし表情に現れている。

だがチャールズの目は肉食獣のそれであり、金づるを見つけた目つきをしていた。


「コマか・・・うむ。あれはどの様な仕組みなのか?」

カイも白々しく返答する。


「それは・・・貴族様、ええーっとお名前は?」


「ふむ?君は仕組みが判らないのか?では彼らに説明してもらおうか・・・。」

貴族を詐称すると犯罪であるためカイは注意深く答えた。

それに商人相手に偽名を名乗ると後々面倒なことになる。

カイは円盤の仕組みを知りたがっていることを強調して名前の件を無視し立ち上がった。


「は、はい。おい、この人たちに説明をして差し上げろ!」

慌てたチャールズが実験を行っている二人に命令する。

カイはその様子を見てその二人の立場を理解した。



「コマには回転している限り回転する軸を保つ性質があります。」

開発者の一人“ジョン・ボンバック”が説明をしてくれる。

銀髪の男で背丈は少し小さく、160cmぐらい。

もう一人の“ワルター・R・ヨーン”は実験器具の調整をしていた。

赤茶色の髪で口ひげを生やした男、背丈は少し大きく、180cmぐらい。

どちらも生活が苦しいのかやせ細っており、よく見ると服装も継ぎの多い物だった。


「それを利用してこの様な形にすることで時間と共に傾きが変わりこの大地が回転している事を証明できるのです。」

カイはその説明を聞き時々頷く。

後ろにいるディンカ達にはさっぱり判らない内容の様だ。


「いかがでしょう。ご理解できましたでしょうか?」

説明が一段落したところでチャールズが声を掛けてくる。


「ああ、実に面白い物だな。

これを作ったのは彼ら二人か?」

カイは説明をしていた男、ジョンと実験器具を調整していたワルターを指さした。


「はい。彼らはうちの専属の魔導士で非常に優秀な者達です。」


「専属か。それは丁度良い。」

チャールズの答えを受けてカイが答えた。


「はい?」


「見た所、このコマを調整する人間は必要だろう。

私の領地はここから遠い、わざわざ王都に来ることは出来ない。」


「はぁ・・・」


「よって、このコマを含めて、この二人や開発にかかわった人達も雇いたい。」

カイは実験器具だけではなく開発者も手に入れたいとチャールズに言った。


「ちょ、ちょっと待ってください。」

予想外の話にチャールズはすこし慌てた。

だが、そこは商人即座に答えを返した。


「いえ、とは言っても、彼らの支援にはお金がかかっていまして、

簡単に渡すわけには・・・。」


「ダメか・・・」


「はい。

それこそ今王都でも噂の走空車グエルを持ってこない限りは無理な話ですね。」


チャールズにそう言われてカイの目が光る。

「・・・走空車グエルがあればよいのか?

だが、あれは冒険者用だと聞いたが?」


「いえいえ、噂によりますと一般用の走空車グエルが作られたとか。

飛んでいるのを見た者もいます。」


「ふむ、そうか。

その走空車グエルがあれば、か・・・。」


「はい、噂の一般用の走空車グエルを代償とするなら問題は無いのですけどね。」

チャールズは手のひらを上に向け首をすくめるような格好で答えた。


「・・・十日ほど時間をくれたまえ。

その間に考えてみよう。」

カイは考えるようなしぐさで答える。

その後、チャールズから商会の場所を聞き十日後再び会う約束を取り付けた。




十日後、チャールズの商会前に一台、一般用の走空車グエルが止まっていた。


「な、なんでここに走空車グエルが・・・。」


驚きのあまり口が開いたままのチャールズにカイは指輪を取りながら声を掛ける。


「申し遅れました。

私は魔導士、カイ・サーバルと申します。」


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