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魔導士はギルドを訪問する。

 カイが領主の館を後にしたのは日も傾きかけていた頃だった。


 夕日指す十字路から東に進むと道の両側に商店が立ち並ぶ、西に進むとギルドやアベルティの支部がある。

 工房はギルドと同じ西の更に奥にあるらしい。


 カイは王都のアベルティで、ギルドの場所などの基本的な情報は得ていた。

 この町の冒険者ギルドは、Bランク1つ、Cランク2つ、Dランク5つとなっている。


 その中でもルリエルの所属するギルド“リムスキレット”は悪い評価の無い中堅ギルド。アルベティで見た資料によると、ギルドの所属メンバーには森人エルフ鋼人ドワーフも多いそうだ。


 リモーデの東側には森人エルフの住む“輝く星の森”があり、北には鋼人ドワーフの住む鉱山、通称“鋼の山”カザドバレルがある。

 その為、リモーデは王都よりエルフやドワーフが多く住む。所属メンバーに多いのはそれが理由だろう。


 カイはギルドに向かう途中、不特定多数の視線があることに気付いた。


(何か注目されている・・・)


 カイを遠巻きに見ている人々が数多くいる。

 彼らは何かの期待と若干の不安がこもった眼をしていた。到着時の歓迎を考えれば当然のことだろう。

 カイは不特定多数の視線の中、ギルドの扉をくぐった。ギルド“リムスキレット”は夕方になっても話し声が絶えない。活気がある証拠だ。


 だが、カイがギルドの中へ入ると空気が変わった。先ほどまでの喧騒は何処へ行ったのか、シーンと音もなく静まり返っていた。その場にいる人々の目がカイの一挙一動を見ているようだ。

 じろじろ見られてカイは少し居心地悪い気がしたが気にせずギルドの受付嬢に声をかけた。


「私は魔導士のカイと言う者です。ギルドへの登録、それと工房の場所を聞きたいのだが・・・」


「ひ、ひやい!!」


 受付嬢は見るからに緊張した面持ちで答えた。


「し、し、しつりゃいしました。あわわわわ。」


(・・・ギルドへの登録や工房の場所を聞くだけでなぜこうなるのだ?)


「・・・工房の住所は?」


「はははい、こ、このな所にあります。」


 そう言って受付嬢はカイに地図を差し出した。


「ふむふむ。この先の角を右に曲がって……ありがとう、今から行ってみるよ。登録は次の機会にしますので、よろしくお願いします。」


「はいぃぃ。わわきゅわりますいた。」


 カイは地図を受け取るとギルドを後にする。登録もしたかったが、受付の緊張している様子を考えると明日にした方が良いと考えた結果だ。


「ふぇ。緊張したぁ。」


 ギルドの受付嬢のフィリアは緊張から解放されて一安心といった表情をしていた。


「お疲れ様。でも緊張していたのかすごく噛んでいたわよ。」


 先輩受付嬢のリップがフィリアにハーブティを出す。この町はエルフの森が近いため、ハーブティの様な嗜好品は安く流通している。


「緊張するわよぉ。だって王都のSランクギルドの魔導士様でしょ?」


「たしかに、何か独特の雰囲気を持っているわねぇ。」


「それに聞いた?魔導士様と一緒にこの町に来た貿易商人の話!道中、盗賊以外のトラブルが無かったって!!その盗賊もだいぶ手前から捕捉していたみたいだし。」


「ルリエルが襲われたやつね、あの子も無事でよかったわ。」


「それに領主様から招待されるし、工房ももらうし……きっとすごい人物なのよ!!」


「そう考えると、緊張するのも無理もないわね。」


「でしょ?でしょ?だからぁ・・・」


「いやよ。」


「ええええ、かわいい後輩を助けると思ってさぁ。」


「私、明日は非番なの。久しぶりの休みなのよ。」


「ちぇ。」


「あの様子じゃ・・・明日は朝から来るかもしれないわね。がんばって。」


「ひとごとみたいにぃ。」



 カイは受付嬢の間でそんな会話がなされていることを知る由もなかった。

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