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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第1章 異世界の魔術師が現代日本に転生!?
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第6話 あ・な・た・の・う・し・ろ

 俊の怪しい契約(?)によって、ナナミちゃんこと小池こいけ菜々美ななみと友達の関係となってからそれなりの日数が過ぎた。


 俊が話を聞くと菜々美の家はペットショップらしく、様々な種類の動物だけでなくエサや動物関連のグッズも販売しており、それなりに儲かっているそうだ。

 菜々美やその両親も動物が大好きで、店と繋がっている自宅には動物たちがわんさかおり、赤ん坊の頃から菜々美と動物たちは家族同然に過ごしてきた。


 菜々美も俊や大悟と似た理由だったが、家の近所に同年代の子どもがおらず動物とばかり触れ合ってきたので、自分と同年代の子供とどのように話せばいいのか分からなかったとのこと。最初は本気で「わん!」とか「にゃ~」で挨拶しようとしたらしい。


 結局緊張からできなかったそうだが、もしそれを実行していたら子供の方はどんな反応をするのか想像できないし、外でそんな挨拶をした日には同い年ぐらいの子供ではなく、鼻息を荒くした大きなお友達が来てしまうかもしれない。


 いろんな動物を飼っている小池家と言えど、ロリータコンプレックスの者に対して圧倒的強さを持つと言われるバック〇アード様は飼っていないので危なかった。

 もっとも、そんな得体の知れないものを飼っていたら大騒ぎだが。


 ともかく、菜々美と友達になってからは、幼稚園では俊・大悟・菜々美の3人で行動するようになる。俊の予測通り精神的に幼いものの、おとなしい性格で素直に言うことも聞いてくれるので、俊と大悟の2人にとっては付き合いやすい子だった。


 ちなみに菜々美の両親と俊・大悟の母親たちは、3人が仲良くなってから数日で顔を合わせている。俊も挨拶したが、菜々美の母親は「あらあら」「ふふふ」と言った感じのおっとりとした女性だった。父親の方はとても優しげな雰囲気で「菜々美の初めての友達になってくれてありがとう」と言ってきた。


 俊・大悟の母親たちにしても、菜々美の両親にしても、自分の子供にとって初めての異性の友達だということで話が盛り上がっていた。大悟と菜々美は全く気にしていないようだったが、俊としてはすぐ側で「うちの俊の方から、友達にならないかって誘ったんですって。キャーー!」「大悟はそういうの苦手そうだから良かったよ」「あらあら、お婿さん候補かしら?」「いやいや、まだ早いよ。4歳だぞ? どう転ぶかはこれから次第だよ」などと会話されるのが地味に辛い。


 俊が菜々美を友達に誘ったのは、別に異性として興味があったからではない。

 そもそも俊は身体こそ子供だが、中身は大人なのだ。4歳の子供を異性として認識するなど絶対にありえない。異性としての興味で近づいた日には、某凄まじい眼力の妖怪に「このロリコンが!」と叱責されることだろう。


 前世アレンの頃は魔術の修行を優先していたとはいえ、異性には興味あった。成人してからは、美人に会えば目で追うこともあるし、普通の範疇はんちゅうかは知るよしもないが性欲だってあった。アレンが魔術師として実力をつけ、王様からも褒められるようになったのはまだ20代の頃だ。その時には、そろそろ結婚も考えようと思っていた。実際、縁談の話などもチラホラあったのだ。子供が生まれれば、両親が自分にしてくれたように愛して育てようとも決めていた。



 ある事件・・・・が起こるまで。



 その事件から結婚などの話もどうでもよくなり、女性に対しても以前のように興味が湧かなくなってしまった。早い話が枯れたのである。


 閑話休題。


 それなりの日数が過ぎた幼稚園では、子供たちも当初に比べれば落ち着いてきた。上の組の子供が世話焼きをしたのもある。

 そして仲良くなった子同士でグループがいくつかできており、それぞれ違う遊びをするか、別のグループの子供たちを誘って大人数おおにんずうの遊びをする。


 現在、俊たち3人は大量にあるおもちゃのブロックを使って、好きな物を組み立てている。俊もこれには結構ハマっていた。


「うーん……お城ってこんな感じだよな? けど、やっぱりどこかいびつになっちゃっているな。他にいいパーツないか?」

「シュンは十分だろ? オレやっぱこういうのにがてだ」

「ぞ~うさん♪ ぞ~うさん♪ も~うすこし~♪」


 俊が作っているのは前世の生まれ故郷であるレイアラース王国の城だ。なんとなくブロックによさそうなパーツがあったので作ったが、記憶にある城の形には近づけたものの、どこか納得できず試行錯誤を繰り返している。

 大悟はおもちゃのブロックによる組み立てのような細かい作業が苦手らしく、本人も何を作っているのか分からないブロックの塊ができていた。

 菜々美がおもちゃのブロックで組み立てるのは毎回動物なのだが……これが非常にうまい。最初の頃はブロックの使い方に四苦八苦していたが、慣れてくるとどんどん上達していき、今ではどんなポーズでも作り上げることができるまでになった。ただし、動物限定だが。それ以外の無機物になると、途端に下手くそになってしまう。

 今回作っているのは象だが、4歳児が作ったとは思えないくらいダイナミックかつ繊細な仕上がりとなっていた。


「ねえ、これやっぱりうごかないよ?」

「おかしいなー? これでいいはずなんだけど」


 ふと後ろの方で聞こえた声に俊が振り向くと、そこには3人の女の子が何かを囲った状態で10円玉を持ち、うんうんうなっていた。


(あれって、確か……『こっくりさん』だっけ?)


 『こっくりさん』

 それは西洋のテーブル・ターニングに起源を持つ、占いの一種だ。

 俊も詳しく知っているわけではなかったが、以前オカルト系の番組で紹介していたので、どういうものかの説明と簡単なやり方は覚えていた。


 細かいやり方は飛ばすが、紙に鳥居を含む必要な事を書いて、10円玉に指を置いた状態で質問すると、霊的な存在が10円玉を動かしてそれに答えるというものだ。

 ただし、いろいろと問題もあるらしく、軽い気持ちでやっていいものではないらしい。ルールを守らないと、最悪の場合になる可能性もあるという話だ。


 日本のオカルト系の中ではかなり有名なもので、母親たちがいれば注意していただろう。部屋の中には先生がいるものの、どうやらこの先生はオカルトなどを全く信じないタイプだったらしく、女の子たちの方にも目を向けているが、特に注意しようとする気は無いようだった。


 そんな時、いたずら天使のささやきによって突如舞い降りた考えに、しゅんはニヤリと口元をゆがめた。後は行動に移すのみだ。


「菜々美、ちょっとお願いがあるんだけど」

「? おねがいって、な~に~?」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ねえ、もうやめない? べつのことしたいよ」

「わたしもあきたー」

「じゃあ、これがさいごの1かい。ね?」


 『こっくりさん』をしていた3人の内2人は何も反応が無いことから飽きていたが、言い出しっぺの1人はまだ続けたかった。

 成功してくれないと恥ずかしいというのもあったが。

 そして言い出しっぺの女の子は最後の1回の成功を祈りながら、3人の指を置いた10円玉を見つめながら、先ほどから言い続けている言葉を再び言う。


「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」


 これで紙に書かれた「はい」の文字の所へ自動で10円玉が動けば、こっくりさんが降臨したことになり、いくつか質問することができる。

 さっきまでは何度やっても、10円玉は動かなかった。しかし、


――ズ、ズズズ


「「きゃっ!」」

「あ! やっとうごいた!」


 ついに本人たちの意思とは関係なく10円玉が動き、「はい」へと向かった。

 驚いた2人の女の子は、本当に何もしていないのに10円玉が動いて急に怖くなってきたが、もう1人は逆に成功して喜んでいた。


「ね、ねえ、もうやめない?」

「わたしもそうおもう」

「なにいってんの、これからでしょ! さあ、つぎはしつもんタイムね。ほらちゃんと10円玉にゆびおいて! ルールはまもらなくちゃ」


 次は質問だ。しかし、いざその時になると特に何も聞きたいことが無かったので、かなりアバウトな事を聞くことにする。


「なんでもいいから、なにかこたえてください」


 「それが1番困る」と聞こえた気がした。

 そして再び動き出す10円玉。それが文字を行き来する。


「……あ・な・た・の・う・し・ろ?」


 後ろがどうかしたのかと振り返って女の子が見たのは――

 ものすごく怖いクマの絵だった。


「きゃあああああああああああああさあああああああ!!?」




 ここで俊が思いついたイタズラのネタばらしをする。

 まず菜々美に可能な限りリアルで怖い動物の絵を描いてもらうよう頼む。短い時間で出来上がったのは、俊でも突然目の前に出されたら驚いてしまうほど怖いクマの絵だった。頼んだのは俊だが、予想以上の出来栄えにちょっと引いてしまった。


 次に女の子たちが10円玉に指を置いて、決められたセリフを言ってから、少し前に使えるようになった『念動』という物を動かす魔術で10円玉を動かした。

 後はどんな質問をしてきても「あなたのうしろ」という言葉になるよう10円玉を動かして、質問をした子の後ろに菜々美に描いてもらった絵を持って立つ。

 これが今回の『こっくりさん』の真相だった。


 驚いて口から半分魂が出かかっている女の子を心配して集まってくる周りの子供や先生を見ながら、俊は少しやり過ぎたかと反省した。

 思いついちゃったものは仕方ないが、もう少し自重しなければいけないと自分に言い聞かせていた。


「けど、『こっくりさん』か……ちょっと調べるか」


 最後の呟きだけが不穏すぎたが。


 余談であるが、この時の経験から霊的存在を信じるようになったその女の子は、オカルトに本気でのめり込むことになる。高校に入学してからは「オカルト研究会」が無いからと、自分で部員を集めて創設するまでになっていた。本気でオカルトに興味を持ち過ぎていたため、冗談で済まない事件を巻き起こし、その事件に俊たちが関わる羽目になってしまうのはまた別の話。


 新しく友達になった菜々美は動物が大好きです。動物に関連したことであれば、いろいろな事に天才的に。それ以外はいたって普通。

 謎の心霊現象の犯人は俊でした。

 俊はイタズラに反省はしてますが、後悔はしていません。

 だって思いついちゃったもんは仕方ない、と。


 次回、『喜びと不安』


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