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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
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第54話 VSテロリスト① 表舞台へ

 大変遅れて申し訳ありません。

 ただでさえ頭痛や目の痛みが酷かったのに、知人から風邪まで貰ったみたいで。

 マジ泣きっ面に蜂ですわ。

 バファ〇ンも効果ねえし。


 テロリスト、というのは当然聞いたことがある。

 俊が知っている範囲で説明するなら、“自分勝手な理由で、いるかも分からない神の言葉を都合よく解釈する狂信者ども”となる。


 普通であれば“居もしない神”という説明になるかもしれないが、エヴァーランドでは神が実在しているので、俊からすると“いない”と断じることはできないのだ。可能性は決してゼロではない。


 これは俊個人の考え方だが、そもそも転生という可能性ゼロを体験している以上、ハッキリとした否定材料が揃ってない限り可能性はゼロではないとしている。

 実際の話として、よくある「空飛ぶ島」にしても「幻の海底遺跡」にしても、“無い”と証明できた者はいないのだから。


 閑話休題


 日本は比較的平和な国だ。

 それは国民性や、武器の有無に関する背景、危険物に対しての厳しい取り締まりなどによって保たれている。

 もちろん犯罪は起こるし、最近は多いからこそ『マギア・クインテット』が登場する切っ掛けにもなったわけだが。

 それでも、世界中の国と比べれば全体の犯罪件数は下から数えた方が早い。


 そんな中、緊急のニュースでテロが起こったことが判明。

 しかも、場所は市こそ違うが、同じ県で起きたのだ。


 最初の速報から1時間経った今でも、放送予定だった番組は流れず、緊迫した雰囲気のスタジオやせわしなく動く人々の映像が映し出される。


 今、俊と一緒にいるのは優香と直樹だけだ。

 始めは陽子もいたが夕飯の買い物に行くこととなり、真一は片っ端から知り合いに連絡を掛けてテロに巻き込まれた人がいないか確認中である。


 いつもであれば優香と直樹が気に入っている幼児向けアニメが放送する時間帯になっても、テロに関するニュースしかやっていない。

 1局だけ平常運転だが、残念ながら2人ともお気に召さなかった。

 俊だけは「この局は昔から嵐が来ようが地震だろうが、映画の中だけど怪獣が出ようが意地でも通常通りの放送すんだな」と感心していたが。


 最初の内は「「テロリスト?」」と可愛らしく首を傾げていた優香と直樹。

 俊は咄嗟に鼻を抑える。「カワイイにも程があるだろ、オレの弟と妹!」としばらくニュースそっちのけで構いまくった。


 だが、時間が経ち、俊も気付かないうちに険しい顔つきになっていたのだろう、不安そうに両隣から小さな手で握ってきた最愛の双子に落ち着きを取り戻す。


「「お兄ちゃん……」」

「……大丈夫だよ。何も、心配いらないから。大丈夫」


 2人の頭を優しく撫でる俊。その間に、突然のテロリスト出現に混乱していた関係各所が落ち着いてきたのだろう。

 ようやく、まともな情報がキャスターにより読み上げられる。


『え~、現在テロリストが人質を取っているのは、神奈川県△△市にあるイベント会場です。突然の事態に情報が錯綜していましたが、テログループからの声明もあり、信憑性のある情報がようやく揃いました。テロリストたちは数年前から世界各国でテロ活動を行っているグループで、ここ最近はこれといったテロ活動をしていませんでしたが……今、こうして日本が狙われました』


 その後出たテログループの名前は、俊も聞き覚えがあった。

 例に漏れず、自分たちの崇める神こそが絶対であり、それ以外は邪教である! と、そんなことを一方的に言っている鬼畜集団だ。

 文化財の破壊や自爆テロなどを行っている時点で、なぜ自分たちこそが邪教だと思えないのか不思議で仕方がないが、別の番組で見たものの中に『洗脳教育』というのがあったのを思い出す。物心ついた頃から道徳心ではなく、上の人間が都合よく設定した神に命を捧げることを唯一絶対の幸福とするというようなことを、毎日のように言われ続ければ……なるほど、狂信者の出来上がりだ。

 ここに1つでも道徳心を刺激するような要素があれば違ってくるのだろうが、そういったものに触れさせないよう監視も厳しいのだろう。


『会場ではアニメやゲーム、その他エンターテインメント関係の企業などが開催したイベントが行われており、会場には老若男女問わずたくさんの人々が来場し、賑わっておりました。しかし現在、そのほとんどが人質となっております』


 次に映ったのはドーム状の会場だ。毎年のようにイベントが行われている所で、今回も最新のゲームの紹介から、アニメに出て来るキャラクターの着ぐるみが舞台で踊ったり、アニメ化が決まった人気作品の最新PV映像を見られたりと、子供から大人まで楽しめるよう工夫された“笑顔を与える”大規模なイベントになる……はずだった。


 それをテロリストは目に付けたのだろう。

 イベントの内容から大人よりも子供の方が多く、警備も薄い会場を。


 ボディーガードなどに囲まれ、セキュリティが万全の場所にいることが多い要人を拉致するよりも、はるかに簡単だろう。

 なにせ、一般客に紛れて会場に入ることができ、1番人が集まるだろうメインホールを制圧すれば、多少人が逃げた所で誤差の範囲なのだから。イベントを楽しみにしていた人たちに銃口を向けて、複数のテロリストで計画的に行動すれば、誰か1人を決死の覚悟で取り押さえようと思っても、別のテロリストが銃口を向ければ意味は無い。むしろ“見せしめ”として殺されるかもしれない。

 人質は、1万を超えるのだから……


『テログループは人質と引き換えに、逃走用のヘリ及び各国に捕らわれている数十人のテロリストの解放を要求してきました』


「――っ! こ、の、クソが……!!」


 双子の隣にいることも忘れ、怒りから一気に雰囲気が変わる俊。

 優香も直樹も両方とも怯えだしているが、そちらを気に掛けることすらできずにいた。なぜなら、俊にはもう、この先の未来が分かったから。


『期限は2日。声明を出したのが午後4時頃なので、月曜の午後4時までがタイムリミットとなります。予定時刻を過ぎた場合、1時間ごとに10人を殺害していくとのことで、各国への迅速な連絡が求められます。先ほど総理は緊急会議を――』


 俊の耳にはそれ以上の言葉が入ってこなかった。


(……つまり、1万の人質と引き換えに、世界中で収容されているテロリストを解き放てって言ってるもんだろうが……! そんなこと飲めるわけねえだろうが!!)


 今の日本のトップである総理は、責任感もあり、ただ事前に決めたことを言うのではなく、きちんと自分の言葉で話す人なので俊も好感を持っている。


 おそらく、現在進行形で情報を集め、何がなんでも1万人の国民を助けるべく、頭をひねり、各国に協力要請を出しているのだろう。

 もしかしたら特殊部隊をすでに用意しているのかもしれない。


 しかし、今回は状況が悪すぎる。


 これが立てこもりのようなものであれば、特殊部隊も練習を重ねているだろうし、人質がいる状況でも使える非致死性の武器・道具も揃っているだろう。

 何なら、米国からその道のプロフェッショナルを呼ぶのもありだ。


 だが、テロリストの大胆な行動でそれは意味を無くす。


 俊でも知っている範囲での立てこもり犯への対処法は、犯人に気付かれないよう接近。非致死性の特殊爆弾による強烈な音と光で犯人を行動不能にする。その後、すぐさま突入。人質を保護し、犯人を確保する。これが基本となる。後は状況に応じて臨機応変に対応を変えるといったところだ。


 会場内にだけ・・・・・・テロリストがいれば、人質にも少なくない犠牲が出る可能性になったとしても、そのような手段に出れた。

 犠牲をゼロにできるかどうかは賭けでもあるが、期限が間近に迫った際の最終手段として作戦を提案しただろう。


 問題は会場の外にも・・・・・・10人以上のテロリストたちが無線らしき物を持って、堂々と見張っている点だ。


 会場を囲うように、場所によっては死角となる場所を無くすために見張りの人数を増やし、警戒させているのだ。

 ご丁寧に交代要員までいるらしい。

 幸いにも武器は持っていないようだが、それが逆に気味が悪い。


 これでは近づいた瞬間にバレてしまう。さらに、わざわざ声明を発表する際に言っていたのだ。特殊な無線機を常にオンにした状態にしており、外のテロリストに何かあればすぐに分かる。明らかに怪しい行動なら、その時点で数十人の人質を殺すとも。


(この状況は詰んでいる。映像から判断するに、会場の周囲は景観のため他の高い建物が近くに無い。スパイ映画みたいな突入作戦も不可能。イチかバチかの賭けをできる盤面が存在しない。となると、テロリストの要求を呑むしか選択肢はないが……どう考えても現実的じゃないな。日本だけならともかく、各国で・・・捕らえられているテロリストの解放だ。国のトップとしては、首を縦に振れるわけない)


 最悪なのは、このテログループが世界各国でテロ活動をしていたことだ。

 最近のテロとしては非常に質が悪く、捕らえられているテロリストのほとんどが、時期が来れば死刑となる者ばかり。


 そんな連中を自分の国にもう一度解き放てるか? 答えは否だ。


 解放されたテロリストたちが一体何をするかなど考えるまでも無い。

 より過激で、より残虐なテロ活動だ。

 自分たちの崇める神とやらのために自爆だって平気でするような輩が、1度捕まるという経験をした後にするテロなど恐ろしいにも程がある。


 上に立つ人間の性格や考え方などは人それぞれだが、基本的には自分の国をより良い方向にしようとしているのだ。国民もそれを望んでいる。

 そんな自分の国をメチャクチャにするテロリストを自由にさせたとなれば、国民から一気に信用を失ってしまう。いや、それだけならまだマシかもしれない。その後、国でテロが起これば命すら危うくなってくる。


 結論として、テロリストは解放できない。要求は果たされず、どんどん見せしめとして殺されていく。そしてイタズラに時間を浪費した最後の最後、人質の人数が約半分となったあたりで逃走用のヘリと人質の交換となる。


(最低でも5千人が死ぬ。あくまでも最低で、だ。逃走するテロリストが腹いせに仕掛けた爆弾を爆発させるなんてこともあり得る……)


 俊はテロが起こった会場の映像を見る。


 きっと会場にはたくさんの親子がいるのだろう。中には優香と直樹ぐらいの年の小さな子供もいるに違いない。ドス黒い悪意の中にいるのだ。


 ――見せしめとして、目の前で親を殺された子供はどうなる?

 ――逆に子供を殺されてしまった親は何を思う?


 それ・・を考えるだけで、俊の胸は張り裂けそうになる。


「…………絶対に、やらせるか……!」


 ちょうどタイミングよく帰って来た陽子に双子を任せ、出かける準備をする俊。そして、仲間である4人に連絡を取った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「はあっ!? じゃあなにか? その、テ、ペ、ネ……ペロリストって奴らを放って置いたら、何千人も死ぬってーのか!?」

「ペロリスト……ある意味、悲惨?」


 俊たち『マギア・クインテット』のメンバーは現在、例の修行場所に緊急集合していた。内容はもちろん昼間のニュースについて。


「テロリストな、テロリスト。それじゃ、人質が舐め殺されるみたいに聞こえるぞ? ……いや、実際にそれをやられたら死ぬか。精神的に」


 外国人のオッサンに舐められまくる人々……軽くトラウマだろう。


「大変だよ~!? 何とかしなきゃ~!?」

「そうねえ。……まあ、俊がアタシたちを呼んだ理由は分かったわ。アタシたちが住んでいる市のことではないとはいえ、さすがに知ってしまった状況で知らんぷりは無理だし。何よりも……俊が珍しく心から怒っているもんね……」

「……そんなに顔に出ていたか?」

「もう4年の付き合いなのよ? 当たり前でしょうが」

「感情、隠しきれていなかった」


 俊としては個人的な憤りなので、説明の時は顔に出さないよう気を付けていたのだが……友情パワーの前では意味を持たなかったらしい。


「とにかく助けなくちゃ~! マギア・テイマーGO~~~!!」

「待ってろ! マギア・ファイターが行くぞおおおおおおおお!!」

「落ち着けこのバカども。『起土きづち』」

「「え?――ブベッ!?」」


 感情任せに掛け出した大悟と菜々美に呆れる俊。

 そのまま突貫してどうするつもりだったのか、小1時間は問い詰めたい。

 とりあえずは、一定範囲内の土を盛り上げる地属性魔術『起土』で、2人の走っていく先の土をスネ辺りまで盛り上げ転ばす。

 大悟と菜々美は、勢いのまま仲良く1回転を決めた。


「あー、音子と椿も助けたいってことでいいか?」

「言ったでしょ? 知らないふりはできないわ」

「政府が何とかできるなら、その方がいい。でも、俊の話からすると絶望的。でも、私たちなら、見つからずに中まで入れる」


 俊を含め、全員がテロを何とかしたいと思っている。そうと分かれば作戦を決めなければならない。


「まず、行動を起こすなら明日の夕方過ぎだ」

「ぺっぺっ、今日じゃねえのかよ?」

「うぇっぷ。理由は~?」


 どうやら転んだ拍子に土やら落ち葉やらを口に含んでしまったらしい大悟と菜々美が、恨めしそうな視線を俊に向けながらたずねる。。


「理由はいくつかあるが……1つは、今からだと具体的な作戦を考えるしても情報が足りないし、見落としが無いようにしないといけない。オレたちが解決に当たるってことは、1万人の命がオレたちの手に掛かっているってことだ」


 “1万人の命が自分たちの手に掛かっている”

 普通なら尻込みしてしまうほど重い言葉だ。だが、ここにいるのは幼い身でありながら覚悟を持ち、『マギア・クインテット』として目的を果たそうと決めたのだ。むしろ「上等だ! やってやんよ!」と気合が上がっている。


「気合十分だな。で、もう1つの理由だが、テロリストたちの精神的なものだな。今日はテロを行った当日で、テロリストたちもピリピリしているはずだ。そんな時に行動を起こしても碌なことにならない。人質たちもまいっているだろうから、救出作戦を実行しても上手くいかない可能性もある。逆に考えれば、テロリストにしても人質にしても精神的な落ち着きが出て来るのが、2日目の昼過ぎから本格的に夜になるまでの間だ。普通の人が寝始める時間帯はむしろ危険だな。常識で考えれば夜の闇が深い時間、疲労の色が出て来て眠気が来た時に行動を起こされる可能性が高いし。3日目に関しては、何が起こるか分からない」


 進展の無いことに苛立ったテロリストが暴挙に出るかもしれず、切羽詰まった政府が犠牲覚悟で特殊部隊を動かすかもしれない。


「今日の内に大まかな作戦はオレが考える。最低限テレビから分かる情報も合わせて、昼すぎにはこっちから連絡する。ヒーロー活動も今日から3日は休みとして、各自身体を休めろ。後、今日は早く寝ろ。作戦行動時に寝ぼけていたらアババの刑だからな」


 アババの刑とは一体……?

 疑問に思いつつ、しっかりと頷く4人。


「今回の件を解決するにあたって、オレたち『マギア・クインテット』はついに表舞台に顔を出すことになるだろう。先週のようなニュースで、話題の1つとして少し取り上げられる程度じゃ済まない。ある意味“第2段階”に入るわけだ」


 第2段階。そう、それは――


「日本に、いや世界に、『マギア・クインテット』の存在を知らせる。そっから先はどう転ぶかオレでも予測不可能だ! 鬼が出るか蛇が出るか! それでもオレたちは止まらない! テロ解決のついでに、総理に莫大な恩も売ろうぜ!」


 小学生に思いっきり恩を売られる総理大臣とは……?


「明日が歴史を揺るがす日になる。……やってやろうぜ!!」

「「「「おうっ!!」」」」



~俊の帰宅後~


俊「優香~♪ 直樹~♪ お兄ちゃん帰って来たぞ~♪」

双子「「お兄ちゃん、怖いぃ」」

俊「ゴブバッ!?」


 身体を休めろと言った本人が、1番ダメージを喰らったとか。


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